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ポケモン昔話〜第二章 ケロマツの王子様〜

著編者 : 絢音

[3]王子、ケロマツになる

著 : 絢音

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 そこは上も下も、右も左も分からない真っ暗な所だった。何故か僕は歩みを進めている。ふと誰かの声が聞こえた気がして足を止めた。きょろきょろと辺りを見回すけど誰も見つからないし、相変わらずの闇だ。でも何となくルーディの気配がした。僕は闇に向かって小さく呼びかけてみる。
「ルーディ?」
「そやつならお主と共にある」
 突然聞こえた声に僕は驚いて息を飲んだ。再度辺りを見回すけどもやはり誰も見つからない。しかし不思議な声は面倒そうに喋り続けた。
「人間は目が悪いからのぅ……妾が見えずとも仕方ない、か。だから人間の運命を覆すのは面倒なのじゃ……いいか、よく聞け人間よ。一度しか言わぬぞ。
 かの者の願いを聞き入れ、お主を煩わしい人間社会から解放してやった。彼女に感謝するのだな」
 そこまでしか声は聞こえなかった。突然の眩しい光に目を閉じた間に、僕の意識は別の所へと引きずり込まれたからだ。



 ゆっくりと目を開く。そして次に見えた景色に僕は驚愕のあまり身体が固まってしまっていた。事態を飲み込もうと混乱した頭だけが必死に動く。
 あれ……たしか昨日は母上の部屋であのまま寝てしまったはずだったけど……それなら今眼前に広がるこの緑は何なのだろうか。割と綺麗に切りそろえられた芝生をしみじみと見回す。
 僕はいつの間にか外に出たのか? そういえばなんだか身体が寒い……というか冷たい。特に下半身が。後ろを振り返ると小さいがなかなかに深みのある池に自分の体の下半分が浸かっているのが見えた。今更ながら自分は池の淵に下半身を浸かった状態で寝ていたのだと理解する。なんで僕はこんな所にいるんだ……? もしかして誘拐? ならなんでこんな所に放置されてるんだ……? 今の自分の状況はやっと把握できたものの、未だ起き抜けの寝ぼけた僕の頭は自分の体に起こったもっと大きな変化にまだ気づけていなかった。それに気づいたのは体を起こした僕の顔が水面に映し出された時だ。
「んぁ?」
 随分と間抜けた声だったと思う。でもそんな一瞬で理解できるような変化ではなかった。見て一瞬で分かる大きな変化ではあったけど。凄まじい違和感に首を傾げた僕と同じように目の前の水面に映るケロマツが首を右に傾けた。驚きに目を見開くと池の中のケロマツもその大きな瞳を更に大きく開く。その瞬間、僕は自分の状況の全てを漸く理解した。
「ぇ、えぇーーーーーーー!!!!??」
 しかし納得のいかない理性が叫び声にも似た驚愕の声をあげる。自分の姿を右に左にと振り返るが、それはどう見てもケロマツのそれだ。

 どうやら僕はケロマツになってしまったらしい。

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2015.12.19  20:49:11    公開


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