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dummy

その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

5 color. yellow

著 : 

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 黄色いその身体も
 赤いそのほっぺもない
 ただの少女に秘められた
 そのエネルギー

 金髪を揺らして
 少女は一人


 黄金の草原に
 夕焼けを見上げて
 泣いた

 誰にも届かないその声を
 張り上げた



 誰か、聞いてください。
 私の声を。


 誰か、助けてください。


 私が、何をしましたか。










 淡いピンクのワンピースは、少女の足を膝こぞうまで隠している。
 その胸には、大きな金色のボタンがみっつ。
 上からふたつのボタンは、短いケープに隠れている。
 桃色のそのケープと、後ろで結んだマフラー。
 桜色の髪は、ワンピースの裾に届くほど長く、頭の左側に三つ編みを三回編んでいる。
 横を振り向くと同時に、ぽんっ とはねる小さな三つ編みと、サラリと流れる長い髪。
「…誰…?」
 フィアは駆け出した。その後をトトが追いかける。
 石造りの小さな橋の下の川辺に、少女が倒れていた。
「大丈夫!?」
 フィアは少女に駆け寄るが、視界に何か違和感を感じた。これは、霧…?


ドサッ


 フィアはその場で意識を失った。








「ソウマ!」
 ジュカインのリーフブレードが空を裂き、一陣の風となって舞い上がる。霧が晴れた。
「ゴースとゴーストの仕業ね。質の悪い悪戯…」
 彼女は栗色のポニーテールを靡かせ、土手を降りた。黒縁の眼鏡をかけ直すと、彼女は二人の上にしゃがみこんだ。
「起きなさい、あなた達」








「私はエイルよ」
 フィアは気がつくと、川原の休憩小屋で寝ていた。
「あ、あの、ありがとうございます。えっと…あたし、どうして…?」
 小屋の隅をちらりと見ると、あの金髪の少女が壁に向かって膝を抱えていた。
「あなた達、昔聞かされなかった?ゴーストの手招きには気をつけろって。あの魔獣は命を喰らうのよ」
 フィアはぞくり と肩を震わせた。じゃあ、エイルさんが助けてくれなければ今頃…。
「なら、食べてくれればよかった」
 少女の言葉に、フィアは驚いて振り返った。
「何言ってるのよ」
 エイルが厳しい口調で言う。
 すると、少女は黙って立ち上がり、小屋を出ていってしまった。
「あっ…」
 フィアは追いかけようとするが、エイルがそれを止めた。
「ほっときなさい」
「でも…」










 ひっ。


 声が漏れる。

 あの人にわかるもんか。


 ひっ。










 窓から射し込む光が濃くなって、影が長くなった。
 フィアは椅子に座りながら、さっきからそわそわしている。
 あの子は大丈夫かな…。
 ガタリ と、エイルが立ち上がった。
「どこへ行くんですか?」
「散歩よ」
 小屋を出るエイルの後ろに、ソウマがついていった。
「あ、あたしも行きます」
 フィアも慌てて外へ出た。どこへ向かうかは想像ついた。でも、どうするつもりだろう。










 みんなが私を恐がる。
 触らないで と言う。


 なんで?


 からかわれて、怒ったら、
 触れてもないのに、それが身体から、
 その子に向かって、走っていって、



 無意識のうちに―――。



 誰も私に近寄らなくなって。










 あの子は、さみしい目をしていた。

 ”一緒にいよう”
って、言ってあげられなかった。
 だって、今のあたしにはそれができない。

 なら、どうすればあの子を救ってあげられるんだろう。

 エイルは足を止めた。後ろからフィアが顔を出した。



 感情を出すのが怖くて、だけども無性に哀しくて、さみしくて。


 だから私は
 こうやって

 誰にも届かない声を
 誰かに聞いて欲しくて


 でもでも、やっぱり誰もいなくて…





 それは、いつものように。
 一筋のそれを引き金にして、少女の頬を伝い出した。


 金色の空に、響き渡るほどの感情。

 蒼い草原の、地平線まで届くほどの声。

 身体中に迸る電流。



 さみしいよ、
 さみしいよ、


 わかっています
 私が何をしたのかなんて

 けど
 私も望んでいませんでした

 だから
 毎日願い続けました

 その子が元気になるように

 それもやっぱり
 誰も知らなくて


 さみしいよ、
 さみしいよ、



 天をつんざくその光。

 泣き声が、叫び声が、草花を靡かせて通り抜けていく。


 膨大なエネルギーが、巨大な柱となって黄金の空へと向かう。





 ふと気がつくと、少女にトトが近づいて来ていた。
「…ダメ、来ないで!」
 絶えず放電する中に、トトは身を投じた。
「…え」
 トトが、少女の手を引いた。
「丸聞こえよ。まったく、あなたに羞恥心というものはないのかしら」
「エ、エイルさんっ…」
 そのきつい口調に、フィアが戸惑う。
 少女は はっと顔を上げると、急いで涙を拭った。
「あなたのせいで予定が狂ったわ。もういいの?一緒にグレンピアへ行くわよ」
 エイルの後ろで、ソウマが目を細めて笑いながら低く、長く唸った。
「何よ」
 その顔が気にくわないのか、エイルがソウマを睨む。
「名前、なんていうの?」
 フィアが少女に笑いかけた。

 暖かかった。
 今は、さみしくなかった。
 なんだか恥ずかしいけど。
「…サン」
 聞いてくれる人がいた。
 サンも笑った。

 エイルさん、本当は優しいんだ。ちょっと素直じゃないけど。
 かわいいな とフィアが笑っていると、エイルがフィアに向かって言った。

「あなたもそろそろ名前を教えてくれないかしら」

 フィアは一瞬きょとんとした。

「は、ああっ!!あたし言いそびれてて!ごめんなさい!あたし、フィアです!」
 その様子に、サンが声を上げて笑った。エイルも微笑んでいる。ソウマが低く唸った。
 フィアの顔がみるみる赤くなる。トトがまたか と目を細めた。
 その日の陽が落ちる。


「ぁあのあの!ごっごめんなさい!!」









5 color. yellow

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2008.12.15  17:57:23    公開


■  コメント (5)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

おはようございます西条流月さん!
ふぉぉ・・クールといったら「〜だわ」口調か「〜だ」口調か迷ったんですよ・・結局私の直感で書いたのですが間違ってたらごめんなさい!

フィアはよく慌ててよく泣いてよく赤くなりますねー^^
ぶっちゃけ書き始めのころはもっと表情ない感じのつもりでしたw

Σにゃんと!先読みされてしまいました!!
次回もエイルの出番ありますよ!まだ設定が残ってますからねフフフ・・・((誰

ガンバリます!!応援していただけるといにパワーがみなぎってきますよあああああ!!ゴオオオ(Σなんだそりゃ

08.12.18  06:03  -    (1z0i3n1)

おはようございますドルフィノさん!
はわ!来ていただけて嬉しいですよおおっっ!!><
しかももういっこのほうも読んでいただいたのですか!仁が浮かれます!!

しょっそんケイ!?ぎゃわわ!!
嬉しいいいですうぅあけどわわ私なんてスッポンですからっっ!
ほああああファンタスティック!?ってなんだうわぁ!!(知ってますが
すっスバっ・・・そんなもったいないお言葉連呼したら仁が再起不能になりますよ!!ウレシサのあまり!

応援ありがとうございますっ!更新遅くて申し訳ないのですが、精一杯がんばりますからっ!!*>D<)ノ

08.12.18  05:51  -    (1z0i3n1)

こんばんは西条流月です
エイルを登場させていただきありがとうございました
話の流れからするとエイルはまだ出番があるのでしょうか?(なくても構いませんが)
フィアの慌てっぷりは可愛かったです
ここからの展開が楽しみですね
これからも更新頑張ってください

08.12.17  17:48  -  不明(削除済)  (rutuki)

はい、ドルフィノです。
せっかくコメントをして頂いたので、僕にも是非コメントさせてください。
仁さんのもう一つの作品(タイトル忘れてしまいました。すみません。)も拝見させて頂きましたが、すっかり見事な世界観に引き込まれてしまいました。
尊敬する人物に仁さんの名前を上げようかと思ったくらいです。←これ本当
(なので仁さんからコメント頂いた時はマジで驚きました。)
では本作の感想ですが、このどこか優しく、ファンタスティックな感じ…素晴らしい!!素晴らし過ぎる!!
もうなんと言って良いか分からないくらい素晴らしいです。
今後の展開が非常に楽しみです。頑張ってください!では。

08.12.17  02:12  -  不明(削除済)  (Mariner)

Σ黄色みにくーーー!!
こんばんは!
書きたかった半獣差別を書けて満足ないになのです!でも今回はてこずりました・・・

西条流月さん、大変ながらくお待たせしました・・!やっとやっとエイルの登場です!ステキスギルキャラクターありがとうございます!!
私の乏しい表現力でどれだけ素敵さが伝わるでしょうか・・・!
想像と違っていたらごめんなさいっ><

というか
しゅーうちっしんっっ!!しゅーうちっしんっっ!!!((゜∀゜*ノシ
狙ったわけではないのですが

「黄色」
本編ではその色はちょこっとしか出ていないのですが、わかっていただけたら嬉しいです。サンが何の半獣かも。・v・
それはいわずもがな、ぼくらのアイドルぴっぴかちゅう!!(

さてっ次回はいちごみるくさんのアスカとグランが登場ですっ♪
早めに更新できるよう頑張りますっ!!

08.12.15  18:14  -    (1z0i3n1)

 
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