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dummy

その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

4 color. aster

著 : 

イラスト : 

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 その身を包む薄汚れた大きなケープは、顔を口元まで隠している。その隙間から覗く、土の付いた白いズボンと、厚手の黒い七分袖の服。
特徴的なのは、褐色の肌と、黒髪をひとつに束ねる可愛らしい赤いリボン。その髪はボサボサで、背中まで届くほど伸びている。

 そんな少年を見つけた。










 ここはティラというスラム街。
 少年はその路地にぼんやりと座り込んでいた。民家の屋根の間から見える、浅葱色の狭い空を何気なく見上げる。
「あーあっ…」
 少年は手を頭の後ろに組み、赤い煉瓦の壁にもたれかかる。流れる雲は穏やかだ。

 なんでだろうな、やっぱりここは落ち着く。…まぁ、居心地は悪いけど。

 陽の当たる表の通りを子供が駆けていく。そことは違い、少年のいる場所に陽は当たらない。
 少年の背中が壁から少しずり落ちる。そのせいで鼻先までケープに隠れた。
「ふぁ〜あ…」
 大きく欠伸をすると、少年は目を閉じた。

 そうだ。あいつに会うまでは、ここが俺の場所だった。
 やっぱり俺にはこっちの方が似合ってるよな。

 少年は眠りに落ちてゆく。



 心配することないからな、フィア。
 俺は元気だから。










「トト、トトー!うう、どこ行っちゃったのぉ…?」
 陽は傾き、空は染まりはじめていた。
 その街は狭い道や路地が複雑にいりくんでいて、自分が今どこにいるのかさえわからない。その上 トトとはぐれてしまい、フィアは半べそ状態だった。
「キーッ!」
 するとどこからかトトの鳴き声が聞こえてきた。
「トトっ!?」
 振り返ると、路地の階段をトトが駆け上がってきていた。
「ああぁっ、よかったあっ!」
 トトはそのフィアの顔を見て、泣き虫なんだから と低く鳴いた。
「あ、ありがとうございます!」
 フィアが顔を上げた先には、一人の青年と神獣。
「いいっていいって!ほんとここって迷路みたいだからな」
 トトを連れてきてくれたのは、ラグラージを連れた青年だった。銀髪に黒いバンダナという容貌のせいで、紅い瞳が目立つ。
「昨日も君くらいの男の子がさ…」
「あたしくらいの!?」
 フィアは身を乗り出した。










 家から伸びる、一本の舗装されていない道。その周りは林。光をいっぱい受けて、しゃらしゃらとやさしい音を奏でる。金色と銀色が、その小屋を躍る。
「っと、ただいまラグー」
 その青年の背中には、一人の少年。
 また拾ってきたのか と言うように、ラグラージの視線は真っ先にその少年へ向けられた。
「いーだろ別にっ」
 つんと口を尖らせた青年に、ラグは いーですよ別に と、少し笑った。
「ん…んぅ?」
 寝心地の悪さに、少年が目を覚ました。
「お、起きたな!」
「………」
 少年は目を細めて青年を見る。
「俺はレイ!腹減ってんだろ。今作るからちょっと待ってろな!」
 青年、レイは一気に捲し立てると、茫然とする少年を尻目に部屋を出ていった。










「す、すみません。ちょっとひとを探してて…」
 レイの話を聞くと、やっぱりスウに似ている気がしたが、名前が違った。
「見た目があたしと同じくらいっていうだけで…あたしったら…」
「ここはスラムだからな。行き倒れとかストリートチルドレンとかも多いんだ。ごめんな、変に期待持たせちまって…」
「いえ、いいんです」
 夕焼け色に染まった一本道を、二人と二匹が歩く。
 小屋に映る夕焼け色が、暗闇を裂く。
「…赤いリボン…」
 フィアは呟いた。










 レイは少年を行き倒れと勘違いしたらしい。それでも空腹ではあったので、少年にとっては都合がよかった。
 それにしても、ここまで親切な人間は滅多にいないよなぁ。
「メシ、ありがとな」
「おう、うまいか?」
「うまいっ!」
「おっそりゃ嬉しいな!」
 その身なりからは想像つかないが、少年は明るくて表情豊かだった。
 ストリートチルドレンでないとすると、旅でもしているのだろうか。
 あまり目にしないその少年のマントが、レイをそう思わせた。
「そうだ、名前聞いてなかったな。なんていうんだ?」
 少年は一瞬口を開いたが、思い留まり、その口を閉じた。
「?」
 少しの沈黙の後、少年は口を開いた。

「俺は―――」










 たまに街に買い出しに出掛けると、色々な店に寄り道してしまう。
 ある店で見つけた、可愛い赤いリボン。スウに似合うかなぁ とか思いながら、お小遣いで買ってみた。
「プレゼント!はいっ!」
 その赤いリボンを見たスウは、ぶっ と吹き出した。
「おまえな、こんなの男がするかよっ」
「えっ?」
 よくよく考えてみると、確かにそうだ。フィアの顔が紅くなる。
「まったくまぬけだなぁ」
 スウが笑う。フィアは、紅らめた頬を ぷくっ と膨らませた。
「ま、まぬけじゃないもんっ」
 フィアはスウの後ろに回り、その髪に赤いリボンを きゅっ と結んだ。
「お、おい、なにす…」
 満面の笑みを浮かべるフィア。
「ほら似合うっ。可愛い!」
「まじかよ!?」

 おい、その笑顔は反則だろ!?反論できねえじゃん!










 夜中を過ぎて、少年はベッドを抜け出した。
「じゃーな、レイ」
 後ろを向いて歩き出そうとした時、ドアの開く音がした。
「おう、またな」
 レイが戸口に立っていた。
「…バレたか」
「よくいるんだよな。そーやって人知れず消えようとする奴」
 口に手を覆い欠伸をするレイの後ろで、ラグも うんうん と頷く。
「気ぃつけろよ」
「わかった」
 少年は微笑み、踵を返した。










 その褐色の肌と、その黒い髪と、その赤いリボンと。

 その純白の肌と、その桜色の髪と、その金色の瞳と。



 もうひとつ、好きな色があった。


 スウの瞳の色。










 ”澄”。
 あいつがくれた名前。
 でも、俺は”澄”じゃない。そんなの似合わない。赤いリボンだって似合わない。
 レイの、その瞳を見る。綺麗な紅い瞳だった。
 その紅が、その赤になんだか似ている気がした。


 そういえば、俺の瞳は何色だっけ。










 その色は、



 紫苑。










「俺はシオンだ」
 スウは笑った。










 両手には、エルエがくれたあの包みを抱えている。傍らにはトト。朝焼け色の紅と、それを受けて透き通る若葉色。
「こっから南に行くとな、王都グレンピアの城下町がある。でっかい街だから、魔獣討伐の報酬とかももらえるところとかあるんじゃねーかな。俺もよく知らないけど」
「わかりました。お世話になりました、レイさん」
 フィアが会釈する。
「はは、いいって。こういう性分なんだよな、俺」
 すると、レイは何かを思いついたような顔をした。
「ちょっと待てフィア。いいもの見せてやるよ!ラグ!」
 ラグが天に向かってシャワーのように大量の水を発射した。
「ふわっ…」
 朝焼け林の小屋の上に架かる、七色の虹。
「すごいきれいっ!」
 レイとラグが パチンッ とハイタッチする。
「気ぃつけるんだぞ!」
「うんっ!」
 フィアは虹を、ラグを、レイを振り返り振り返り、その道を駆けていった。















 罵られた。

 傷ついた。


 石を投げられた。

 流れ出した。


 泥を投げつけられた。


 頭にきた。


 怒った。



 目の前が霞んだ。





 身体中から閃光が走った。








 悲鳴が聞こえた。










 そんなつもりなかった。










     4 color. aster

4 color. aster

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2008.12.11  21:11:08    公開
2009.1.29  22:32:10    修正


■  コメント (5)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

ふお!!!
おはようございます西条流月さん!

いややいやされますか・・・っ!!(
微笑ましさが伝わっていただけてなによりですにゃああああ!!((
スウの性格間違えないよう頑張ってます><
ふぁ!
レイもよかったと言っていただいて嬉しいです躍りましょうか((ヤメロ

エイルは勝手に大学生くらいかなーと思ってました(大学ないけど
報告ありがとうございます!支障はないので大丈夫ですぜ!!Σd(・ω・´

5話目の更新が遅くてごめんなさい・・
書いては書き直し書いては・・・となんだかしっくりこないでいるいになのです><
申し訳ありません・・orz

そしてテスト期間中もこっそりぱそぱそをぱちぱちしてましたごめんなさい((

応援ありがとうございます!!
朝っぱらからテンション高めというか超高くなってきましたぇああっ!!

08.12.15  06:21  -    (1z0i3n1)

こんばんは死にかけた人間こと西条流月です
死にかけた理由はテストなので悪しからず
そんなこんなで久しぶりにきました
そういえば、エイルの年齢を言ってなかったのですが今から言うと仁さんが困ってしまいそうですね(それ以前に仁さんなら想像通りのキャラが出来そうです)ただ言っておくと20代ぐらいですね
ただ特に拘らなくていいです
スウとフィアのやりとりには癒されます
微笑ましいですね
レイのキャラも良かったです
これからも更新頑張ってください

08.12.13  22:03  -  不明(削除済)  (rutuki)

続けてすみません仁です^^
解説的なもの(?)をいれたくてたまらないいになのですw

4話目は煉杜さまが提供してくださったオリキャラ、レイとラグラージのラグを登場させていただきました!
本当にありがとうございます!!崇め奉ります(

そしていにはヘンな表現だいすき←
理解していただけるだけであなたはもう神の領域です(
”澄”を”ちょう”と読まないでくださいっ><

それにへんなとこ凝ってたりします^^
ずっとセリフ以外は”少年”だったのが最後に一回だけ”スウ”になったりだとかw
それがわかった方はきっと
 ネ申 の 領 域 を 超 え て い る ! !

ところで「トトー!」を縦書き表示にすると見にくいですねw

では!
お待たせしました5話目には!西条流月さまのエイルとソウマが登場します!!

08.12.12  06:16  -    (1z0i3n1)

ぷにゃーーー!!((
おはようございます煉杜さんっっ!
「どうでしょうか?」と聞く前に感想がっ!!((超嬉ーーーッo((゜∀゜o=o゜∀゜))o


ほあ!!
し、知りませんでした!すみませんっ・・・
もう私なりにレイを作っちゃって・・ほんとにあってますか!?ほ、ほんとですかっ!
よかったです・・!!((><))

喜んでいただけて朝っぱらからハイテンションのいにですがッ!!!(

Σひょっ表現力なんてっ・・ヘンな表現大好きなんで!わかりにくい表現大好きなんで!
きっとそれは煉杜さんの理解力が ネ申 だからですね!
逆に私が来世までついていきます!!((ヤメロ

応援ありがとうございます!(*>Д<)ノふぉぉ
煉杜さんに応援してもらえてフィアもるんたったスキップですよ!!(

ではっ5話の執筆作業頑張ります!

08.12.12  05:51  -    (1z0i3n1)

うわぁああぁああ今晩はー煉杜ですぅうぅうぅ(やかましい

レイがいる!レイがいるよっ^^*(うるさい
素敵な文章にしていただいてありがとうございますっ^^

・・・実は彼・・・「十人十色のトレーナー」という小説の中で僕が書いている話に出ているキャラでしたが・・・(先に言えよ!←
・・・そのままですね!!
仁さんの表現力にはホントに感動します!

あの二人の仲の良さが、離れ離れでも伝わってきます^^
・・・いいですね〜^^
こんな文章書けるなんて羨ましいです^^
もうファンですよ!一生ついていきまs(迷惑だろ

あわわ、意味の分からない文ですみません;;
あまりの嬉しさにちょっと・・・!

それでは乱文失礼しましたノシ
フィアが再びスウに出会えることを祈っております。

08.12.11  21:43  -  れんと  (nasumiso)

 
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