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その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

3 color. cherry blossom -last melody-

著 : 

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 独りじゃないよ。
 そう、誰だって。
 あたしには、わかった。
 わかっているけど、やっぱりまだのみこめない。

 危険な森も、空気は綺麗。陽射しも綺麗。
 昨日のようなその橙。なぜか、それだけで哀しくなる。

 少女は魔獣に近づいた。迷うことなく。
 一歩進むたびに、何かが胸を満たしてゆく。










「下がれ、ロコ!」
 エルエとロコがハブネークから離れた。
 フィアが牙蛇へ足を踏み出す。
「ちょっと、あんたも離れな!毒を浴びたいの!?」
 迷うことなく。
 牙蛇は、態勢を起こしているのがやっとの状態だった。
 フィアは見上げる。
「―――独りは恐いよ…?」
 橙が重なって。
「…恐かったんだよね?」
 牙蛇に、触れた。
 ハブネークの目に、桜色が映る。










 魔獣の目が、桜色を映す。
 揺れるその色は、柔らかい。優しい。
 それは、溢れ出すものを拭うことなく、魔獣を包み込んだ。
 橙が桜を照らし出している。










「あたしも恐いよ。だから、あなたも恐いよね」
 フィアは、牙蛇に身体を預けた。
 頬が、それを伝う一筋が、触れ合う。
「でも―――あたしは、あなたを恐がったりしないから―――」
 触れた部分が、温かい。その感覚は、優しい。桜が柔らかい。戸惑うけれど、心地いい。
「独りじゃないから…ね?」



 巨体が、少女の上に崩れ落ちる。





 最後の力で、少女をよけて。













 桜色。













「おい!」
 フィアの上にハブネークが倒れた。
 フィアの声が聞こえない。
「くそ!守るって言ったのに…!」
 エルエが救出に向かおうとした時、横をトトが駆けていった。
 ハブネークの身体を身軽によじ登り、その奥へ姿を消す。
 エルエがそのあとに続いた。


 桜色がその目に映った。


 座り込み、動かない巨体に触れて、雫を流す。
 エルエは一瞬、言葉を失くした。
 トトが、フィアに静かに寄り添う。
「…たいしたもんだよ」
 フィアは、最後の涙を拭う。
「でも…、ほんとに恐がってないっていったら、嘘になります…」
 月を見上げたフィアの顔が、純白にかすかに輝く。
「…やっぱり、あたしって甘いのかな…」
「ああ、甘々さ」
「もっと…強くならなきゃ、駄目ですね」













 桜色。













 エルエの家に着いた頃には、夜中の十時を過ぎていた。
「旅の費用、あるのかい?」
「あ…いえ…」
「そんじゃ、」
 エルエはさっきのハブネークから切り取った尾を布で丁寧にくるみ、フィアに差し出した。
「五十万はあんたのもんだ」
「ふえぇっ!?」
 驚きのあまり変な声が出たフィアを、エルエはクスクスと笑う。フィアの顔が赤くなる。
「そ、そんなにいただけませんっ…」
「いーや、いいのさ。それに、これは山分けできないからね」
「そんな…っ」
 渋るフィアに、エルエは優しく言った。
「こいつだって、散々傷つけちまったアタシより、優しく声を掛けてくれたあんたに使われた方が嬉しいだろうさ。遠慮はいらない。受け取って」
 フィアはちょっとためらうと、ゆっくりと手を差し出した。
「…はい、じゃ…ありがとうございま…」
 ゴト。
「ん?」
 フィアの頭がかくんと落ちた。手も力が抜けて、机に突っ伏す。スー スー と、寝息が聞こえる。
「…あっはは、寝ちゃったな」
 エルエはフィアを抱き上げると、ベッドに寝かせた。
「…強くならなきゃ、だってさ。やっぱり戻る気はなさそうだね」
 静かに眠る、その桜色の髪をなでる。
 見ると、モンスターボールで遊んでいたトトも眠ってしまっていた。
 エルエはトトに毛布をかけてやると、自分はソファに横になった。
「…そういえば、魔獣を従えてる奴は久しぶりに見たね…」










 あの日、一人になって気づいた。

 あたしは独りじゃない。


 抱き締めながら、思った。


 それを、印にして。



 ね、ずっと一緒にいられるよ。










 ぺこりと、頭を下げる。
「気をつけるんだよ」
「はい」
 桜色の髪の少女が笑う。その肌が、朝陽に照らされる。輝く。
「またね」
「はい、また」
 ワンピースの裾を揺らし、桜色を揺らし、少女は森へ消えてゆく。魔獣があとを追いかける。





 あの子なら大丈夫だ。
 そんな気がする。
 だって、あんたは充分強い。



 アタシよりも強い、なんて言えないけどね。悔しいから。










 照らされて、輝いて、きらめいて。
 橙に映えて。



 こんな色、初めて見た。



 魔獣の目に、映るのは、
 心に、染み込んでゆくのは、















 桜色。










     3 color. cherry blossom -last melody-

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2008.12.8  06:19:12    公開
2008.12.20  06:21:40    修正


■  コメント (3)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

おはようございます煉杜さん!
またこんな時間です←

ぴゃあああ!!
すっスバラシイなんてっ・・・!嬉しすぎっ・・・ます!!っ!!!・・・・・・・・・・!((声にならない叫びが
感動していただけるなんてこっ光栄ですっっ!!あなたは神様ですか(
エルエもかっこいいと言っていただいて躍り狂ってますよ!(崩

そして私は今奇跡を目の当たりにしているようです。

描いていただけるのですかっ!むしろこっちからおねがいし((
いつでもオッケーですよっっ♪
劣るだなんてっ私はスッポンですから!煉杜さんの絵は月越えて宇宙なんで!!

3話目にレイとラグが出ますよ!まだ執筆中ですが(

ところで昨日のは母ではなく兄だったもようです((知るかい

08.12.9  06:02  -    (1z0i3n1)

こんばんはー^^

うわぁあハブネークー!!

何か・・・いいですね、こういう文章・・・。
僕好きですよこういうお話・・・!(告
感動しました・・・!素晴らしいですっ・・・!

エルエさんかっこいい!!(心の叫び

もう少したったら、挿絵・・・描かせていただけないでしょうか・・・?
仁さんの画力には劣りますが・・・orz

そっ・・・!
それでは短文あんど乱文失礼しましたノシ

08.12.8  20:14  -  煉杜  (ゲスト)

桜色ヤフー(
ふたつめは桜色にしたくてこんなの書いたんですが、ふたつめとみっつめになってしまいまー!((;

でもけっこう気に入ってたりw
てかサブタイトル長いよww

そしてこの時間こっそりやってたらお母さんが二度も降りてきた・・
心臓ばっくばくでした・・・ばれなくてよかった・・・
私の成績最低なのに・・テスト前だし

はい、すみませんリアルが入りましたw

とりあえず挿絵とか描いてるひまのないいにです

08.12.8  06:26  -    (1z0i3n1)

 
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