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dummy

その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

2 color. cherry blossom -first melody-

著 : 

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「ほらね、大丈夫。これでずっと一緒にいられるよ。」
 桜色の髪の少女は笑う。










 白く透き通る木漏れ日を受け、群青の森に建てられた、丸太を積み重ねた家。
 そのドアをノックするのは、白く透き通る肌の少女。桜色の髪が橙色の木漏れ日を受ける。





「あの、本当にありがとうございます…」
 グス、と鼻をすする。
「あっはっは、いいんだよ」
 丸太小屋に住んでいたのは、一人の女性だった。
「アタシはエルエ。まったく、土だらけの半ベソで戸口に立ってるもんだからびっくりしたよ。そこで転んだのかい?」
「い、いえ…だって…魔獣が…」
 弱々しく答えるフィアに、エルエは声をあげて笑う。
「…わ、笑いすぎです…」
「あっはは、悪かった!」
 エルエは温かいスープをフィアの前に出すと、向かいの席に座った。
 トトは、部屋の隅にいるキュウコンとじゃれている。
「あのキュウコン…エルエさんの神獣ですか」
 フィアはキュウコンの尾のひとつに刻まれた”証”を見つけて言った。印結びをすると、主と神獣に証が刻まれるのだ。
「ああ、あとロコンが二匹いるよ。三匹とも聖獣だから安心しな」
 エルエは煙草を取り出して吹かし出した。
「いい匂い…」
鳥の囀りのような、木漏れ日のような、薄紅の薫りが漂ってきた。
「いいだろう?アタシ特製さ。ただ、身体にはあまり良くないけどね」
 エルエは一息つくと、フィアに向かって言った。
「さて、唐突だけどあんた、早く家に帰りな」










「ごめんね、ごめんね…。もう、恐がったりしないから…だから…恐がらないで…」
 陽射しに照らされ、少女の長い桜色の髪が輝いて見える。
 少女の腕の中は冷たい。けど、心地いい。










 なんでも、というわけではなさそうだけど、エルエにはお見通しのようだった。
「家出かなんかかい? あんたには外の世界は向いてないよ。悪いことは言わない。今晩は泊めてやるから、明日にでもとっとと帰んな」
「でっ…でもっ…」
 フィアの目が泳ぐ。
「ほら、本当は帰りたいんだろう? 目は口ほどにものを言う、ってね」
「………」
 フィアは、膝の上に置かれた自分の手をじっと見つめた。顔を上げられなかった。
「………嫌です…」
「イヤ?」
「…駄目です…」
「ダメ? 何が嫌でどう駄目なのか言ってごらん」
 フィアは口をつぐむ。
 はあ と、エルエはため息をつく。煙草の薫りが漂う。
「目と、そのナリを見ればわかるさ。金色の目、汚れたものなんて見たことなさそうだね。サラサラの髪、生活に不自由したこともなさそうだ。いいかい、外の世界になめてかかったら命を落とすよ」
 それでも、フィアは首を縦には振らなかった。
「…あんたが思ってるほど、世の中甘くないんだ」
 エルエは煙草をまたくわえると、立ち上がった。壁の一角に取り付けられたつまみを引くと、隠されていたものがあらわになった。
「アタシはハンターだ」
 銃、短剣、防具。フィアの見たこともないものがたくさんあった。
「…ハンター…」
「そうさ。たまーにだけどね、人の死体も見つかる。この森にはね、獰猛な魔獣がいるんだ」
 エルエは防具を手に取ると、それらを身につけはじめた。
「今から狩りに行く。あんたもついてきな」










「………お父さん…嫌、なんで………」
 その髪を揺らし、肩を震わせ、少女は冷たい雫をこぼす。










「ロコ!コン!召喚!」
 エルエはふたつの小さなボールから二匹のロコンを召喚した。
「すごい…。それ何ですか?」
「モンスターボールさ。これがあれば、印を結んだ神獣を召喚できる。まあ、召喚玉って感じだね。街にいけば売ってるけど、これが結構高いんだ」
 先頭にエルエ、ロコン。次にフィアとトト。最後にキュウコンという順番で森を歩く。
「大丈夫、あんたはアタシが守る。でも、しっかり見とくんだよ」
 もう陽はすっかり沈み、辺りは真っ暗だった。フィアは恐いのを必死に堪え、トトの爪をぎゅっと握ってエルエのあとについていった。



 どのくらい経っただろうか。少しひらけたところに出た。そこでエルエはぴたりと足を止めた。
「牙蛇」
 エルエが口を開いた。
「尾には鋭い刃、牙には猛毒。森の神獣を聖魔関係なく食い散らかしてる。まったく行儀が悪いよ」
 緑青色の夜空に、少し欠けた月が浮かんでいる。雲は見あたらないのに、星が少ない。
「来たよ」
向かいの森の闇から、巨大な蛇が姿を現した。
「懸賞額五十万のハブネークだよ。キュウ、ロコ、行くよ!」
 エルエはキュウコンとロコンを従え、ハブネークに向かって駆け出した。










「嫌…こっちに来ないで!やだ…!」
 魔獣が近づいてくる。大きな爪、刺々した背中、鋭い漆黒の目。
 少女は父親を庇うように覆う。
 もう動かない父親を。
 魔獣は迷うことなく少女に近づく。
 恐怖が、哀しみが、少女の頬を伝う。伝い続ける。
 父親にすがり、目をぎゅっとつむる。桜色が少女の顔を隠した。

 その刺々した背中が、少女の身体に触れた。
 柔らかく、触れた。
「……あ…」
 魔獣は―――










 エルエが優勢だ。ハブネークの尾をひらりとかわし、キュウコンが尾から炎の猛攻を浴びせる。
 フィアは、怖くてたまらなくなった。










 魔獣が、父の傷口をなめている。
 動くたびに、少女に触れる。
「………ないよ…」
 魔獣はなめ続ける。
「…動かないよ……だって……」
 少女の目から、溢れ出す。橙の夕陽を受けて、それらはきらめく。悲しくきらめく。
 少女はそっと魔獣の背を撫でた。
 魔獣はびくりと身体を震わせ、走り去ってしまった。

 悲しくなった。

 寂しくなった。

 あたしはもう、一人なの…?
 あの魔獣は……










 足が動いた。自然と。
 その魔獣の手を引いて。
 コンが止めようとしても、止まらなかった。
 ロコがハブネークに噛みついている。エルエは短剣を突き立てている。
 ふいに、フィアは駆け出した。魔獣の手を離して。
「お願い、やめて!」
 キュウの尾に抱きつく。牙蛇に放たれるはずの大文字が、夜空に打ち上がった。
 エルエを、聖獣を、魔獣を、少女を、その橙が照らした。















 印結びを行うと、神獣とその主に、”証”が刻まれます



 その”証”の紋様は人それぞれです


 身体のどこかに刻まれます



 あたしは、左肩

 トトは、左耳の後ろ




 本当は怖いけど、恐くないから、ね。


 本当に一人でも、独りじゃないから、ね。


 あたし…、心を満たしてあげられるかなぁ…?
 



 ね、笑お?










     2 color. cherry blossom -first melody-



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2008.12.7  12:29:06    公開
2008.12.8  05:46:56    修正


■  コメント (1)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

昨日投稿したんですが、なんか一部抜けてたああっ!
はぅ申し訳ないです・・・
「いい匂い・・・」とか抜けてました・・・なぜじゃ・・・?

書いてたらなんか長くなっちゃいまして、ふたつに分けました!
緑青色の夜空に打ちあがるだいもんじ・・・自分で書いてて綺麗だなーと思ったりw(
私の表現力でみなさんに伝われば嬉しいです♪

08.12.8  05:54  -    (1z0i3n1)

 
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