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その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

21 color. rainbow -forth melody-

著 : 

イラスト : 

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 ガララ、と戸の開く音がした。
 洗ったカレー鍋の水滴を布巾で拭いていたところだったフィアは、それを聞くや否や投げ捨てる勢いで鍋を台にガタンと置くと、玄関に飛んでいった。
「ララっ!?」
 そこに居たのは、一人の老人――この村の村長だった。
「あ……」
「ララはまだ帰ってないのかね?」
 村長の言葉に、フィアは俯き加減にこくりと頷く。
 そうか、と村長は呟くと、少し回りを気にするように外に目を遣った。
 フィアがどうしたのかと思っていると、村長は声を潜め、告げた。
「実はな……」








「えーと……? ごめんくださーい」
 細い女性の声。
 フィアは鍋を流し台に置いた。
「ララちゃん、居ますか?」
 玄関に向かうと、女性のほかにもう一人男性が居ることに気づいた。
 この村では際立って目立つ色、赤いジャケットと、パステルブルーの髪。

 このひと達だ。

 村長さんが言っていた、ララを捜しているという二人組――。










 太陽は稜線に近づいてきていた。明るく白い日光は眩しい黄金に輝き、その丘へと光を届けて影を少しずつ伸ばしていく。静かな風が流れていた。
「すみませーんっ」
 カイの声に振り向いた二人は逆光で顔はよく見えなかった。でも、その二人が村の住人じゃないということはすぐにわかった。
 その色はあまりに、あの村のそれとは違う。
「人を捜してるんですけど、誰かここに来なかったですか?」
 少女は、えーと と少し考えると、青年に目を向ける。青年も少女に視線を返しながら肩をすくめた。
「さあな……どんな奴?」
「あの、ララっていうんです。黒い髪で、白いセーターを着た……」
 追い付いたケアルがカイの横に並んで言う。
「ララ?」
 少女が、まるで驚いたような声で聞き返す。その反応にケアルは違和感を覚えたが、きっと気のせいだろうと気にしなかった。
「ララ……ね」
 また青年が、独り言のように呟く。
「あ、知ってるんですか!?」
 カイが目を輝かせ、身を乗り出した。その時――






 風が、吹き抜けていった――。






 熱気を帯びたそれはカイとケアルの髪を後ろへ流すと、後方へと貫いていった。
 反射的に身を引いたカイは何が起こったのかわからず、驚いて青年を見上げていた。
「おっと。わりいな、驚かせて」
 目を細め、口許をちょっと上げて申し訳なさそうに笑う。
 ロークとハクリューが身構えた。
 ケアルがゆっくりと振り向き、風の吹き抜けた軌道を辿ると――後方の木が、チリチリと焦げていた。
「なっ……!」
 その木が、バキバキと音を立てて傾いていく。



ズゥン……



 大きな音にカイも振り向き、熱によって焦がされた大木を唖然と見つめた。
「ウィン! ちょっと、何のマネよ!」
「だってさあ……」
 青年――ウィンを包む熱気が、彼の服を揺らし、金髪を揺らす。手の甲で口をごし、と拭いた。
「まどろっこしいことは面倒だからあまり好きじゃないんだよな。だったら、軽ーくこいつらに吐かせたほうが楽じゃん?」
 少女は不服そうに少し唸ると、諦めたように溜め息をついた。
「あんたがそんな強行策に出るとはね……」
「マフィだってそうだろ?あれだけ歩かされて、収穫ゼロなんだからさ」
 少女――マフィは肩をすくめる。
「ど、どういうこと……?」
 会話に飛び込んできた声に、二人はカイとケアルに向き直る。
「そうだな……内輪話ばっかしてちゃあつまんないよな?」
 流れた風は白い花畑を撫で、橙色の光は隙間を縫って染めていた。そして、その優しげな色を背にする彼に変化が生じていく――。
 ウィンの全身は熱気に包まれ、火花が散った。足下の花は力なく萎れていく。
「ちょーっと痛いかもしんないけど、我慢しろな」
 にこっとウィンが笑った――かと思うと、そこにはもうウィンはいなかった。と、次の瞬間、ロークの巨体に強い衝撃が伝わり、ぐらり、と傾いた。
「えっ――!?」
 バランスが完全に崩れる前に、ロークはなんとか体勢を持ち直した。
「丈夫なやつだな……」
 今まで見失っていたウィンの声が左から聞こえた。とっさにそちらへ目を向けると、ウィンはぱんぱんとズボンの裾の汚れを払っていた。
 ケアルがカイの腕を掴む。
「ケアルっ……」
「カイ、早くっ!」
 ケアルはカイを掴んだまま走り出す。
「あ、逃げても無駄だってのに」
 ヒュ、とまたその場からウィンが消える。すると、ケアルの向かう先に突然ウィンが現れた。
「速さで俺に勝てるわけないだろ? ……でも、チョロチョロされると面倒だから……」
 ウィンは大きく息を吸い込むと、口の横に手を当てて勢いよく吐き出した。しかしそれは、息ではなく――――火炎だった。
 瞬く間に炎は二方向に弧を描いていき、カイとケアル、そして花畑を包み込み、炎を仕切りとしたフィールドができた。
「“炎の渦”とかできたら楽なんだけどな……あいにくやり方を知らなくてね」
 ウィンがフィールドに たっ、と着地する。
「マフィ、“雨乞い”なんてするなよ?」
「はいはい……。まったく、あんたにばっかり都合良くして……暑い……」
 すると、マフィの手の動きに合わせて水が躍った。そして、それがマフィの身体を包み込む。
「うん、こっちの方が涼しいやっ」
 アクアリングを身に纏い、マフィもカイとケアルに向き合う。
「乱暴は好きじゃないけど、仕方ないから手伝ってあげる」
 ため息混じりにウィンにそう告げると、今度はカイとケアルに向き合う。
「おとなしくしてた方がいいかも。二人とも“伝説”だから」


 ウインディの半獣、ウィン。

 マナフィの半獣、マフィ。



「半獣なんて……私、初めて会った……」
 その半獣の二人がどうしていきなり攻撃を仕掛けてきたのか、その理由はまったくわからない。向こうが戦う気ならば、こちらも戦わなければ大切なものが傷付いてしまう。だけど、心に引っ掛かっているものは外れないままだ。カイも、ケアルと同じようにまだ状況が呑み込めていなかった。


「そんじゃ、『ララ』に関すること……全部教えてもらえねぇかな?」










「ララに……何か用ですか?」
 二人を前にしてフィアが言う。
「はいっ、お友達になりたくて!」
 その少女、マフィがにっこりと笑って言う。
 もう一人の青年、ウィンは玄関の外でうろうろしていた。
「お友達っ……あ、ララもきっと喜びますっ。でも……」
「はい?」
「……今は、いないので。ごめんなさい」
 マフィはぽかんと、俯くフィアを見る。
「いない?」
「はい、あの……そうなんです。……あっ、よかったらあたしと友達になりますか?」
 にこっとフィアは顔を上げる。
「いえ、……いいです」
 むぅ、と考え事をしながらマフィは出ていった。



 もしかしたら、ララは狙われているのかもしれない。

 村長はそう言っていた。その理由はフィアには教えてくれなかったが、それは村長にも不確かなことらしい。それを踏まえ、家に入れるかどうかはフィアの判断にまかせる、と。
 あまり悪い人には見えなかったが、出ていく二人を引き止めることもない。それに、まだそうと断定できる要素もないのだから、これでよかった。ただ、
「あたしとは友達になりたくないんだ……」
 ちょっと、ショック。


「ちょっとウィン、何してるのよーっ!」
「あ? お前がその辺で遊んでろって言ったからさ」
「バタフリー追いかけろとは言ってないでしょっ」
「遊んでたんだよ」
「可哀想だから放してあげなさいっ」
 遠ざかる声を耳にしながら、フィアは中へと戻っていった。








 それから、あの二人はもう来てない。
 まだララを捜してるのかな、それとも帰ったかな。
 キッチンの掃除が終わって、フィアはトトを膝に乗せ、椅子に座ってうとうととしていた。ララの家はもともと綺麗だったので、昨日一昨日と戦線を繰り広げていたキッチン以外に掃除する所がないのだ。
窓から差し込む金色の光がフィアの後頭を照らす。
 静かだった。
 畑仕事から帰る村民の話し声が遠くに聞こえる。ヤミカラスの鳴き声が遠ざかる。長く伸びて、夕陽が綺麗に片付いたキッチンを照らす。
 戸を開く音は、しなかった。
 お昼に出ていったはずなのに、カイとケアルも帰ってこない。きっと、ララをずっと捜してくれてるんだ。
 ……まだ、見つからないのかな……。
「キュァ……」
 トトが欠伸をし、眠そうに目を擦る。

 山の峰に、太陽は静かに消えていった。










 息切れさえしていないウィンと、アクアリングで疲れを回復し続けるマフィ。そしてロークやハクリューのダメージは蓄積していくばかり。戦闘もあまりしたことのない二人と、生まれながらにして戦いの能力を身に付けていた二人との力の差は明らかだった。
「あーっ、埒が明かねえな。手加減してやってるのにさ」
 ウィンが動きを止めた。ハクリューの電磁波によっての身体の痺れにも顔を歪ませることなく、ロークに向き合う。
「俺、炎ばっかしか出せないわけじゃないんだな、これが」



……ボコ、



 神速でウィンが消える。
「カイっ……! ハクリュー、“りゅうのいかり”!」
 ロークの前にハクリューが立ちはだかり、竜の怒りで前方を塞ぐ。これで動きを止められると思った。が――――





ボコ、ボコ……





「ぬるいっての!」
 熱風を纏い、現れたウィンの牙は電流を帯びていた。







ボコボコボコ……!







 ハクリューの隣をすり抜ける。
「“雷の牙”! 俺ができるとは思わなかったか?」
 ウィンが、ロークの手前で踏み切った。
「ローク!!」









ボコ、ボコボコボコッ!









「“あなをほる”っ!」



 大地が盛り上がった。

 飛び出したその飴色の身体に、ウィンの牙が突き立てられた。
「なっ……!」
 ウィンが慌てて飛びずさる。





 ――トトが、そこに着地した。










     21 color. rainbow -forth melody-

21 color. rainbow -forth melody-

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2009.7.19  22:59:51    公開
2013.1.2  22:14:29    修正


■  コメント (7)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

おおうドルフィノさん!><**
そそんなに謝らなくていいですから・・・!もう!^^
チャットで久々にお話できて楽しかったですよー!><**
そんでドルフィノさんも楽しんでいただけてたならもっと嬉しいなっと!^^
えちゃも、いつかご一緒できる日をゆめみて・・・!><**ま、焦らず気長にゆきましょうっ^^
おおうやさしっ仁やさしいですかうわお^^*←
なんかも、いろいろ言っちゃってごめんなさいってかんじでしたが・・・!><))ぼくもドルフィノさんだいすきですからーーーっ!!ノシ><)ノシ


Σおおドルフィノさんがいうとそれっぽい!((
ええとつまり元々高い戦闘本能と戦闘能力が刻まれた体であるためにあの強さがあるというわけです(まんま引用←((しね
仁なんてゲームとかまるきりいきあたりばたーりですよww((ちょそれ
教えてもらってやっとこの前はじめて公式イベントでジラーチもらいましたww

トトの登場がね!もう!池面ですよね!!←さくしゃ
Σふおおほんとに叫んでくださってありがとうございまっ!!><**
ごくせんやんくみですかww(しらないやつ←

で す よ ね か わ い い で す よ ね ! !((

ではっありがとうございましたーーー!^^

09.7.23  02:57  -    (1z0i3n1)

時間が大変なことになってることに気付きました仁ですこんばんは西条流月さん!^^←

Σおおうショートカットですか!
想像してみたらほんとだしっくりきます!><**
てわけで挿絵撤収して次回の挿絵にショートカットなララを載せますね!^^
てか挿絵の削除ってどうやるんだっけwww(うましか
でもその他イメージどおりでよかったですうへへへへ(((

ですねっ^^
むしろ本音言ってほしいくらいですから!本音いってくださってありがとうございます!><**
よりよいものになりますようにっ^^
・・・Σって流月さんが仁を友達と思ってくださってるって証拠ですか!!((
も、だいすk((((((

まったくフィアはのほほですがトトの池面ふらぐが若干立ったんじゃないでしょうかww((
ウィンとマフィの絵もそのうち描けたらなーとか思っ(きいてない

た楽しみに・・・!><**
ありがとうございます挿絵描けたら更新しますね楽しみだ^^^^

ではっありがとうございましたー!><**

09.7.23  02:41  -    (1z0i3n1)

そんな慈雨さんにきゅんきゅんする仁ですこんばんは(真顔

えへへうわあああかかかわいいですかありがとうございます!!><**
しかもみんなとかもう!たしかにみんなかわいい・・・カイとかケアルとかララとかもう全力であいを降り注いでますb←
もちろんフィアとかマフィとかウィンとか村長にも降り注いでますが!!
あとロークとハクリューとトトと・・・(うわあきりがねえしかもなんかおやばk(ちょま
ま、知ってましたけどねwwwww^^

はい、とりあえず仁が慈雨さんをお持ち帰りするといほうこうd(どこから
も、フィアを嫁にもらってください!wwwついでに仁もこっそりついていk(((((
持ち帰るんだかそっちにいくんだかどっちだってはなしだけどきめられるかああああ((

Σたっ楽しんでいただけてますかわああ><**
も、頑張ります!この言葉聞くだけでもう、頭が最終話までふっとびます!!((えちょ
はやく更新して完結させたいな!^^頑張りますもうなんという原動力←

ありがとうございますっ><**ありがとうございましたー!

09.7.23  02:29  -    (1z0i3n1)

本当にすみませんすみません本当にすみませんorz
いや、結局チャットでちゃんと謝罪できてないし今更ながら絵茶も出てなくて…あああ絵茶行きたいちくしょう…!
…なのに仁さんが優し過ぎてもう、本当に滝が目から汗の如く…違う逆だった;
本当にもう大好きですからー!(自重すると決めたはずの変態発言←
うわあ皆さんありがとうございます…!

さて感想に!

まず!
半獣組がお強く…!
元々高い戦闘本能と戦闘能力が刻まれた体であるためにあの強さがあるというわけですね…!
速さですか…僕は防御重視のためにスピードを捨てるタイプの戦術を好むんですが、まあ時たま速さに拘ったりもしますね^^
というかゲームの話を小説に持ち込んでどうする←

そして最後のトトがまじでかっこいい件!
なんか「キタ─────(゚∀゚)─────」
とか叫びましたw本当にww
ごくせんで言うヤンクミ登場みたいな感じでww興奮しとりましたww

ララが可愛いw(ちょうおい

ではこれで…!

09.7.22  01:07  -  不明(削除済)  (Mariner)

若干、最近なんだかショートカットが気に入ってしまっているので個人的にララはショートカットのイメージだったんですけど、それ以外はイメージ通りですね
ほんわかしてて、可愛いです
ですので、是非ショートカットヴァージョンを(ry
すいません、つい、本音が、最近自重回路(何それ?)が故障してるので本音ばっか言ってますね、すいません
でも皆、友達ぐらいには七割ぐらい本音を言うべきだと思います
三割ほど建前なのは空気を読む必要があるから
そんなに、本音ばっかり言ってると嫌われるという真理が聞こえてきますが嫌われても、声を掛けるしかないのでしょうし、
さて、では感想に、
とりあえず、村長から話を聞いてるなら敵になるかもしれない人に友達になりましょうってのはフィアらしい呑気っぷりだと思いました
その後、落胆するフィアには頬が緩みました
そして、半獣軍団との戦闘ですが
ウィン、強いですね
2vs1なのに、押してましたし
そして、最後のトトの登場がカッコ良かったです
ただの方向音痴じゃなかったんですね(ちょ、おま
次回、トトが活躍するのか、楽しみにしてます
それでは、西条流月でした

09.7.21  20:34  -  不明(削除済)  (rutuki)

ちょもwかわいすぎるwみんなかわいすぎる><*
なんかきゅんきゅんしてる変態がここにいますよ←

こんにちは!慈雨です

ちょ、あたしとは友達になりたくないんだって・・!
ちょっとショックって・・!
かわいすぎますどうしましょう!(とりあえず黙れ
フィアちゃんとは慈雨がお友達になるんだ!(氏ね
フィアちゃんは俺の嫁(
いやてかむしろ仁さんは俺のよm(自重しろ

とにかく毎回楽しませてもらってます^^(にげた

それでは失礼しました><

09.7.20  16:17  -  ジ  (arisu)

ララがかわいい・・・んだぜ・・・!!Σorzばんばんばんばんばんばn((
流月さんに許可いただいちゃったんで自重せずにあぷしちゃいました!><**

仁 の 妄 想 の 塊 ! ! ←


・・・イメージとそぐわなかったら言ってくださいっ><))

こんばんはすみませんええとさきおととい・・・?に、更新しようとしたのですが、ことごとく寝坊しましたえへへ((じゃねえ
今回はぼここのくだりのせいで改行がやばくてスクロールが((配慮は
でもこの池面トトが書けてしあわせでした(←誤字っつうか

おや、今日はあとがきに書くことが思いつかんです・・・てことでこれで!^^

09.7.19  23:13  -    (1z0i3n1)

 
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