その色が奏でるストーリー.
20 color. rainbow -third melody-
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雨音が耳に飛び込んできて、フィアは目を覚ました。朝にしては外は暗くて、時間感覚がわからなくなりそうだ。
すると、突然目の前が翳った。
「おはよう、フィアっ」
ララが、目覚めたフィアを真上から見下ろしていた。
フィアは驚いて少しの間固まる。ララはいつものように笑ったまま、大きく欠伸をして自分の布団へ引っ込んだ。
「おはよっ」
身体が起こせる状態になり、フィアは起き上がりながらララに微笑んだ。ララがまた欠伸をする。
「んー……眠いわぁ……」
目を擦りながら立ち上がると、ララはふらふらと布団を片付け始めた。
「……ララ、大丈夫?もう少し寝とく?」
「大丈夫よぅ〜……」
脳裡にちらつく夢の光景。
一瞬、ララの手が止まった。それと同時に、笑顔も消える。
「?」
どうしたのかとフィアが疑問符を浮かべる。
しかしすぐにもとの顔に戻り、ララはせっせと片付けを再開した。
――紅蓮だった。
初めて見たララの瞳。鮮やかな紅蓮は、白のそれと、黒のそれと、また対照的に映えていた。ただ ――それは、悲しみを帯びた色で――いや、きっと気のせいだ。
「にゅ〜〜……」
「ごはん……」
カイとケアルの鳴き声……じゃなくて、寝言。毎回これが楽しみで早く起きてる、と言っても過言じゃないかも……なんて。
戸を開けると、雨がざあざあと降っていた。ロークが嬉しそうに外へ飛び出すが、トトは雨の雫にも当たりたくないのかフィアの足の後ろに隠れた。
「出発できないね……」
残念そうに言うケアル。それを見て、ララがぽん と両手を合わせた。
「ならっ、一緒にお料理の練習しましょう〜?」
ララの言葉にケアルが振り向いて目を輝かせる。何か悪寒を感じたカイがぞくりと身体を震わせる横で、フィアの頭に思い浮かんだのは昨日の花畑だった。
ララがとてとてと中へ戻っていく。ケアルとハクリュー、フィアとトトと続き、カイが残された。カイはちょっと笑って息をつくと、ロークを呼んで中に入っていった。これでケアルの料理の腕が上がってくれたら嬉しいな、とか淡い期待を膨らませながら。
「わーっ! ケアルやめてー!」
バサァッ
「なんで袋ごと砂糖入れちゃうのー!」
「……あ、塩と間違えちゃった」
「だからカレーには塩も入れないってば!なんで昨日と同じことするの!?」
その時、今度はケアルの隣で バサァという音がした。
「キャーっ!!」
カイの悲鳴。
「なんでララまでっ……! 瓶ごとシナモン入れちゃうのー!」
「胡椒と間違えちゃったのよ〜」
「笑顔で言わないっ!」
「だって〜、ケアルとカイが楽しそうだったから……」
そう言うララが嬉しそうに味噌汁をかき混ぜる。あれ、味噌汁に胡椒って入れるっけ。
心配で二人から目が離せないカイは、ケアルの料理の腕が上がるかもという無謀な考えを後悔していた。最初から止めていれば、こんなことにはならなかったかもしれない。でも、この調合(宇宙物質入り)が始まってしまっては、もう後の祭りだった。
ケアルの隣にいたハクリューが、尻尾で優しくカイの頭を撫でた。
賑やかな一日で、時間はあっと言う間に過ぎてしまった。
「明日は晴れるといいねっ」
フィアはララににこっ と笑いかけると、ぽふっと布団に潜り込む。
「おやすみなさい」
しかし、ララはの声は消え入りそうなほど小さかった。
目を閉じると、思い浮かぶのは今日の出来事――ではなく、
――――昨日の夢――――。
「ぃッ……いやあああああああっ!!」
まだ空が白み始めてきたばかりの頃。息を切らし、胸を押さえ、ララは起き上がった。汗が止まらない……。
――赤と、黒と。あとはただただ灰色な世界。
上空から星の数ほどの光が降り注いできて、それは人々を襲う。私はそれを見ていた。恐くて、恐くて、逃げ出したかった。だけど、私は逃げられなかった。嘆き、苦しみ、渦巻く謀略、絶えない悲鳴……。泣き叫ぶ声は――あれは、きっと私の声だった――。
ララの頬を溢れる涙が伝ってゆく。夢から覚めても、戦慄が止まらない――。
「千年前の、夢でも見たのかい」
突然の声に、ララはびくりと振り返った。
「やあ……暫くぶりだね、ララ」
白銀の青年――ベルクが、そこに居た。
「ベルクっ……」
心から安堵したララは、すがるようにベルクの袖を掴む。
「恐い夢を見たんだね」
「……」
ララは俯き、涙を拭う。そして、顔を上げてベルクに笑ってみせた。
「でも、もう大丈夫よ?」
「そう」
ふわり、と振り返ったかと思うと、ベルクはララに背を向けて歩き出した。
「あ……お願い、待って……!」
歩みは止めず、ベルクはちょっとだけララに顔を向けて微笑む。
あの時と同じような、妖しい笑み。
「一人にしないでっ……!」
ララは慌てて立ち上がると、朝靄の中、ベルクを追って――消えた。
隣には、くしゃりと乱れた布団以外何もなかった。
「ララ……?」
返事はない。
きっともう起きたんだと思い当たり、フィアは布団を綺麗に畳んだ。
ふと窓の外を見上げると、雨は上がっていた。青空もちょっとずつ覗いていて、まるで木漏れ日のように光の矢が地面へと伸びている。少しすれば、今日は真っ青な快晴になるだろう。そしたら、皆であのお花畑に行こう。ララも絶対喜んでくれる。
「じゃあ、フィアは留守番よろしくね」
「いってきまーっす!」
「いってらっしゃい」
ララが、いつまで経っても戻って来ない。もう正午を回ろうとしていた。ララのことだから、きっとまたそのへんをうろついてがらくたの物色をしているんだろう、とカイは言った。それを聞いてフィアは少し 安心したが、やはり心配は拭いきれない。それは、ケアルもカイも同じだった。
そして、ケアルの提案でララを探しに行こうということになったのだ。フィアは、ララが戻って来るかもしれないと家に残ることにして、玄関でカイとケアルを見送った。
「……片付けなくちゃ」
キッチンに向かい、昨日の残骸を前にする。
「……」
ちょっと、勇気がいりそうだ……。
フィアは すー、はーっ、と深呼吸をひとつ置くと、腹をくくって作業に取りかかった。
村を一周して、隅々まで徘徊して、また一周して、いろんな人の家を訪ねて……、数時間が経過した。
「いないっ……!」
村の入口でカイがぺたりと座り込む。そんなカイをロークが持ち上げ、自分の肩に乗せた。ケアルは入口から目を凝らして外を見回してみるが、神獣が草むらからぴょこんと姿を現し、また慌てて逃げていっただけだった。耳も澄ましてみるが、やっぱり何も聞こえない。
「外も探そ? 気まぐれなララのことだから、外にいる確率のほうが高いかも……。」
「うん、そだね……。ローク、暫く乗せて……。」
「ギュッ」
ロークはこくりと頷くと、がしゃんと音を立てて立ち上がり、先を歩くケアルの後ろについた。
「フィ?」
「ううん、私は大丈夫。ありがとう、ハクリュー」
ハクリューがケアルに背に乗るよう促すが、ケアルはそう言って笑い、ハクリューの頭を撫でた。
入口よりも西側に丘がある。ただの道を辿るよりかは、目指すところがあるほうが歩き回りやすいだろう。ララがいるかもしれない。
「じゃあ、あの丘に登ってみよっか」
「うん、りょうかいー」
キッチンはだいぶすっきりしてきた。さっきまで水につけていたカレー鍋をスポンジでがしがしと洗う。
「あっトト! そこにあるお皿、戸棚にしまってくれる?」
「キーッ」
トトが手を振って肯定し、長い爪で丁寧に皿を取ると、慎重にそれらを戸棚に並べていく。
「……もう3時になるのに……ララ、帰って来ないなあ……」
カイとケアルはララを見つけたのだろうか。
片付けに打ち込んでいる間は、不安は少しだけ何処かへいってくれた。
丘に繋がる森を抜けた。そこに、目を瞠るほど美しい世界が一面に広がっていた。
真っ白な、花畑。
「綺麗っ……」
ケアルが思わず呟く。
カイがロークの肩から ぴょんっと飛び降り、嬉しそうに花畑に駆け寄る。
「……あれ?」
その中にダイブしようとする寸前で、カイは足を止めた。
「ねえケアル、誰かいるみたい」
「え、ララ?」
「……ううん、違う……」
ここからは逆光でシルエットしか見えないが、そこにいるのは男女一人ずつ。女のほうは背が低い。ララはあんなに小さくなかったはず。
「村の人かな? ララのこと聞いてくるっ」
カイはたっ と駆け出し、二人に近付いていく。ケアルも小走りでカイに続く。
「あのーっ」
カイは、そのパステルブルーの少女と、赤いジャケットの青年に声をかけた。
20 color. rainbow -third melody-
2009.7.11 23:09:27 公開
2013.1.2 22:49:03 修正
■ コメント (5)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.7.13 19:38 - 仁 (1z0i3n1) |
こんにちは西条流月さん!^^ あわわそんな早くの時間からやってきてくださったとか・・・!ちょ、仁をよろこばす気まんまんなんですかっ!!><**(違 部活お疲れ様です!^^ はいもう一貫してララですぜ!!Σd 段階踏んでたら話数がトンでもないことになって早く進めって言われるかもと思ってたらなななんか期待されてる気がしてきた(勘違いでも別にいいし!)のでもうはしょったり自重したりしなくっていいってことですよね!!(( あとがきにまで書きたいことあるのにぬたばれになるから書けないとゆ´∀`)← ふわわわもっ・・・!そんなに読み込んでくださる流月さんだいすきですっ!!((Σじちょry たくさん疑問符があると嬉しいです・・・!!><**ちゃんと伏線は消化していきますよー!^^ ララの失踪後とかベルクとかっ!! カイはならきっとそこに花畑があれば飛び込むかと((妄想 し か も ! ! わばばララ許可くださっていいんですか!?><**((ん? 勝手に妄想したたまものですよほんとに!え、も、次回の挿絵にしちゃいますよ!!そろそろ閉店のお時間ですがなにか!!((( お気に召しませんでしたら言ってくださいましっ^^)ノ ではではありがとうございました!!><** 09.7.13 19:19 - 仁 (1z0i3n1) |
ぐはあっ( またしても謎の悲痛から開始したすとかのコメなのですがw 昨日の夜に読んでいながらコメしなかった馬鹿野郎とはまさしく僕のことですが何か← ちょまた仁さん返り咲きじゃないすかおめでとうございまーす! ええおあ、ちょ仁さん凄いんですが、ああ( 二度目の返り咲きからオリエディが一度も返り咲きしてない件についてw え、差が歴然じゃないすかw ぬおやっぱ仁さんが書くとカイが可愛いww だめだ我慢できないんですがちょ、拉致おkですか( 断られても拉致る気満々ですが(帰れ そしてダイブのところでカイに激萌えしてしまいましてw← 理性が危うくしにかけました。はい。 これは抱きしめてもたりないですねwカイと一緒に僕も花畑に飛び込みたいんですが(おま大丈夫ですかw えあララさん千年前の夢ってちょ…! rainbow編が10話ってことは…要するにそれだけ色奏が長く読めるってことですねわーい! それとカイの絵貼ってくださってありがとうございます…! コメ返し読んだ後速攻で見に行きましたあ…あの駄絵が仁さんの神小説にとか場違いすぎるわ…! この後どうなるんだろ…・ω・ あ、ではw 09.7.12 19:55 - 不明(削除済) (Mariner) |
朝っぱらからやってきました西条流月です いや、部活が朝の八時半からとかね、テンションが下がります その分、早く終わるから良いんだけど、とは思いつつ rainbow編が十話続くって事はララの出番が増えるって解釈でいいんですかね(出番なくても仁さんの小説見れれば構いませんが) 今回はララがいきなり失踪しましたけど、これからどうなるんですかね そして、カイ ダイブしようとするって……目的を若干忘れてないか?とか思ったり、最後の二人はベルクと一緒に居た人達に声掛けてましたがどうなるんでしょうね また、ベルクはララの千年前を知ってるんですかね? だとしたら立派な御老体か……見た目若いけど そして、ララの挿絵ですが全然OKですよ 全然ウェルカムですよ 用法が違う気がするのは英語できないからだよ、とか言ってみる それでは 09.7.12 06:01 - 不明(削除済) (rutuki) |
なっきぼっくろー!!(( ・・・はい、画像はベルクです。しんだ魚のような目をしてます← らくがき程度のものですみませ・・・! とにかくイメージもってもらおうと思っ・・・て・・・!><)) ・・・仁の妄想のたまものであるララも描いたんだけどね! 流月さんに許可もらえないかなあとかたくらんでる仁ですが突然ポケメがいったらごめんなさいww← てかさ、あのさ、rainbow編がまさかの約10話ほど続くんですがwwwちょwwwおまwww( いやー書きたいこととか起承転結とかつめこんだらはしょれねーし! 気にしない方向でいくつもりです(( ではこめ返いてきます・・・!><)) 09.7.11 23:22 - 仁 (1z0i3n1) |
いえそんな!読んでくださるだけでも嬉しいのでうましかは仁の称号なので譲りませんよ!?(
ってうわああああドルフィノさんのこめ読んではじめて気が付きましたわああありがとうございます!><**
数秒固まってました(
でもなんか仁の小説は最小値と最大値の高低が激しすぎて・・・いかに仁の文力が安定してないかが見て取れる><))感情に左右されすぎなんでしょうか・・・!
高いところで留まれるドルフィノさんとの差が歴然じゃないですか・・・!><))
だめですカイは仁のもn(((((
カイがかわいいのはドルフィノさんのキャラですから必然ですよね?必然なんですよ常々思います(
カイとドルフィノさんが花畑に飛び込むならもれなく仁がついてくr((かえれ
Σぶわあなんですかそのフェイントはっ!!
なんかまずったかと思ったら次の瞬間吹きましたよわーいってわーいっていいんですか自重しないよ仁!!(((
カイありがとうございました!!^^
ほんとドルフィノさんの神絵をこんな小説に貼ってしまって申し訳ないのですが仁が必要以上に躍り狂ってます((
こうして仁の小説がみなさんの神絵によって素敵になってゆくのだ!・・・うわあ仁が足手まといじゃないですか!!><))
そして最後の一言で仁のモチベーションがさらに膨れ上がるっ!!><**
わああそういってくださってうれしいですー!!ちゃんと終わりまで書き上げますよー!^^
ではっありがとうございましたー!><**