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dummy

その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

18 color. rainbow -first melody-

著 : 

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「フィア」
 そう呼ばれた。
 草原の向こうに住んでいる農夫のおじいちゃんから、野菜のお裾分けをもらった帰り道。スウがたくさん持ってくれたから、あたしの荷物は軽かった。藁のような懐かしい匂いのする紙袋の中に、じゃがいもやにんじんが入っている。スウはふたつの紙袋を両手に抱えていて、重そうなのにそれを軽々と持ち運んでいる。男の子って、すごい。
 あたしは機嫌が良くて、スウの声にぱっと振り返った。そこにいたスウを見ると、向こうに見える夕陽まで視界に入ってきて。オレンジ色で綺麗だけど、すごく眩しい。
 スウは口を少し開きかけ、む と口を閉じ、あー と目をあっちに持っていき、うむむ と考える。なんだろうと思って少し首を傾げていると、スウは困ったように笑いながら顔を上げた。
「わり、やっぱなんでもない」
「えっ、気になるよっ」
 何度聞いても何を言おうとしたのか教えてくれなくて、あたしは怒ったふうに頬をちょっと膨らませた。眉間にしわも寄せてみた。でも、スウはそんなあたしを見て笑うばかりだった。
 あたしが怒っても全然反省してくれないんだから。
「もーいいもんっ!」
 ぷい、と顔を背け、つんと口を尖らせる。
「あ、おいっそんな怒ることないだろっ?」
「ふーんだ」
 しばらく目を合わせてあげなかった。スウは困ってたかな。すぐ仲直りしたけど。

 だって。
 本当は、名前を呼んでくれたのがすごく嬉しかった。
 当たり前、だけど。今までだって、何度も呼ばれてるけど。
 あなたに名前を呼ばれるだけで、本当に幸せだから。










 あのオレンジが、やけに目に残る。優しい色なのに眩しくて、なんだか心がふわりと浮いたような感覚で……。
 そんなことを考えているフィアの目は、いつの間にか開いていた。夢の余韻が続いていて、いつ起きたのか自分でもよくわからない。
 起き上がると、カイもケアルもまだ寝ていた。しかし、ヒスイがどこにもいない。慌てて辺りを見回すが、やはりいない。
「ケアルっ、カイくんっ! ヒスイくんがいないよっ?」
「ぴ――――……」
「ろー……くぅ〜〜……」
 独特な寝言。カイがころん と寝返りを打つ。なんだか二人とも可愛くて、フィアは口を押さえて くすり、と笑った。





「あーっでででッ!」
「ピ―――ッ!!」
ばりばりばり
 そこから百メートルほど離れたところに、そんな音が響く。
「ピィカアァッ!?」
「なんだよもうわかんねえって!!」
 朝、起きるとこのひとがいなかった。慌てて捜すと、このひとは欠伸をしながら森を出ようとしていた。僕を置いて。昨日、主人を一緒に捜してくれるって言ったのに。諦めずについてきて、やっと誠意が伝わったと思ったのに。
「ピカー!」
ばばばばばっ
 放たれる電撃を避けながら、慣れた足取りで森を走る。
「なんだよ昨日はおとなしかったのにっ……デレツンってやつか?」
 ピカチュウのそれが夢だということに、その神獣は気づいていなかった。





 お別れくらい言わせてくれたってよかったのに……。
 ヒスイの寝ていたところの地面には、木の棒と、それで書いたであろう『またな』という言葉だけが残されていた。










 真っ白な空間のそこ。
 彼女が体をゆっくりと起こす。床の上に無造作に横たえられていた黒く長い髪が少しずつ床を離れ、真っ直ぐに垂れる。
 どれだけの間眠っていたのかわからない。目覚めた記憶は、ない。
「やあ、起きたみたいだね」
 ふと、後ろから声。彼女が振り返ると、白い青年が立っていた。
 青年が足を踏み出すと、そのふわふわとした白銀の髪が揺れる。
「……ここは……?」
 初めて聞いた自分の声。それに応えて、青年が微笑む。
「“真っ白な空間”」
 でも、それは答えには聞こえなかった。
 彼女は黙って辺りを見回す。どこもかしこも、真っ白だった。天井と床の四隅で三点が集まり、影ができている。箱のような形をした部屋のようだが、扉は見当たらない。
 視線はその何処ともない白の虚空を見つめる。
「……私は、誰……?」
「君は、ララ・ホワイト」
 今度の答えはすぐに返ってきた。
 ララ・ホワイト? それが、私の名前?
 やはり、聞き覚えのない言葉。
 笑うように、青年の白銀の髪が跳ねる。この空間に、その青年は溶け込んでしまいそうだ――。
「……貴方は、……誰……?」
 彼女の三つ目の問いかけ。
 青年は静かに笑いながら、口を動かした。
「ベルク」
 ――いや、もしかしたら、そうなのかもしれない。
「僕の名前は、ベルクというんだ」
 繰り返し、青年は自分の名を言う。
「……ララ」
 そして、最後に彼女の名を呼び、妖しく笑う。
 ララ――そう、彼女が今知り、今初めて呼ばれた――名。
 私の名を呼んでくれた青年は。
「……お友だちに、なってくれる?」
 最後の、質問。
「僕はそのために君に会いに来たんだよ」
 怖いくらい優しげな声だった。
 彼女は笑った。その口の端から、八重歯がいたずらっぽく覗く。



 ――さあ、そろそろ時間だよ。また会いに来るよ、ララ。



 頭に響いて。また眠気が彼女を襲う。意識が朦朧として、瞼が重くなる。



 ――――ベルク。
 私の初めての、お友だち――。










 少し歩くと、すぐに次の村が見えてきた。そのすぐ後ろには小さな山がある。その村は、山の麓のちょっとした斜面に作られたとても小さな村だった。
「キー!」
「フィッ」
「ギャゥ!」
 村へ向かいながら、トトとハクリューとロークは追いかけっこをしていた。今の順位はこの順番だ。
「わあっトト速ーいっ! 頑張れー!」
「むっ、ハクリューだって負けないんだからーっ」
「ロークー! カメだからってまーけーるーなーっ!」
 トトとハクリューが競り合っている。その後ろをぽてぽてとロークが追いかけるが、差は開くばかりだ。とうとうハクリューがトトを抜いた。
「フィー!」
「やったぁハクリューっっ!」
「しょっ勝負はまだまだだよっ? トト頑張ってー!」
 村までもう少し。ハクリューを先頭に、一行は走り続ける。
 ハクリューとトトの差が開き、そしてまた縮まる。そしてちょうど二匹が並び、抜かせ抜かれるまいとスピードが上がった、と、その時。
「どっかーーーんっ!!」
 カイの声、と共に、びゅんっ と横を何かが走り抜ける。あっと言う間に二匹はそれに抜かされた。
「ああっカイくんとロークがーっ!」
 殻にこもったロークの甲羅にカイが乗り、ジェット噴射の要領で水流を大量に発射する。前に乗ったことのあるフィアは、その驚異的なスピードを知っていた。またこれを初めて見たケアルは、ポンプをこのように活用する用法に驚きが隠せない。
「なっ何あれっ!!」
「その手があったんだぁーっ!」
 ケアルは驚いてそれぽかんと見つめ、フィアは敵わないと足を止めた。
「ほわっ! お先にーっ!」
 元気よく手を振り、カイとロークは一足先に村へと入っていった。
「ず…ずるいよっ…はぁ、はぁ…」
 負け犬の遠吠えのような声を漏らす。それでも楽しくて、フィアとケアルは顔を見合わせて笑い合った。

「る〜、るーるーっ」
 息を整えながら二人が歩いていると、前方から……つまり、村のほうから一人の女の人が鼻唄を唄いながら、ゆっくりとこっちへ向かってきた。ゆっくり、というのも、ナップザックを片手に地面に落ちているがらくたや植物などを物色し、そのナップザックに詰め込みながら歩いているのだ。ほんの数メートル程先にいるのに、集中しているのか向こうはフィア達に気づいていないようだ。
 すれ違う直前になって、やっと女の人がこちらに気づいた。
「……あら〜?」
 キョロキョロと、辺りを見回す。そして、ケアルに目を止め、とてとて と近寄ってくる。
「あの、ここはどこかしら〜?」
「えと、どこって……」
 女の人は返答に困るケアルからすぐに目を逸らす。そして後ろを振り返り、ぱっ と閃いたような顔をする。
「あー、私……いつの間に村を出ちゃったのね〜」
 なるほど、と頷き、自己完結をする。
 フィアは、その女の人が手に持っているナップザックが気になり、ちょっと覗いてみた。中には、様々なものが詰め込まれている。
「見る?」
 にこりと笑って女の人が言う。突然掛けられた声に、フィアはびくりと身を引いた。
「あ、いえっ」
「ほら〜」
 反射的に遠慮をするフィアをよそに、女の人はナップザックをひっくり返して中身を地面にばらばらと落とした。
 紙の切れ端、花、壊れた玩具、髪飾り、雑草、瓶の蓋、鳥獣の羽根……どれも捨てられたがらくたやごみばかりだ。
 それにしてもそれらは膨大な数で、山積みになったがらくたは膝あたりまで積みあがった。こんなにたくさん、どうやって入っていたのか本当に不思議だ。
「かわいいでしょう?」
「あ……はい」
 にこにこと笑う女の人。口の端からは八重歯が覗いている。これをかわいい、という考え方はよくわからないが、フィアも顔を上げて笑いを返した。
 すると、突然視界が真っ白になった。ばふり という音と、柔らかい感覚。
「きゃーっ!」
 女の人が、突然フィアに抱きついたのだ。
「かわいい〜っ」
「フィアが潰れちゃうー!」
 フィアよりも遥かに背の高い女性は、まるでフィアに寄りかかるように抱きしめる。ケアルが慌てて支えようとするが、案の定――フィアもろとも、三人はその場に倒れ込んだ。

ばたたたんっ










     18 color. rainbow -first melody-

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2009.3.31  19:21:53    公開


■  コメント (11)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

はじめましてポンさんー!!^^
はわわ読んでくださって嬉しいです・・・!><**
あああこめ返し遅くなってごめんなさい・・・!><))

Σ容疑者ポンさんですかww
なにをしたんですか!仁を悶え殺した罪ですかー!((
・・・Σ事故大丈夫ですか!あれ!話についていけてない仁なのですがww
ベルクがポンさんになにか・・・!((
ララの話はずっと温めていたにもかかわらずばっちりすらんぷと重なってしまったあほうなのですorz

Σなにをおっしゃいますー!
仁は天じゃなくて点ですからっ!!あの、0.5mmのボールペンの点ですから!><))

ふおわ!また来てくださるのですか!!
はわわ来てくださったあかつきにはVIPルームへご案内するのでぜひっ((

ではっありがとうございましたーっ!!><**

09.4.7  17:19  -    (1z0i3n1)

こめ返し遅くなってごめんなさい!><))
こんにちはりかP−さんっ!!

カイはドルフィノさんが提供してくださった素敵キャラです!><**可愛くってもう・・・仁のトボシー表現力でそれを表せているとは思えませんが・・・!orz
私も見てみたいですー!><**

ピカチュウ可愛いですよね!^^
・・・ΣえちょりかP−さんの身になにが起こったんですかちょ大丈夫ですかあああーーー!!?((

ベルクさん初登場ですぜー(
あれれ、まだベルクについてはなんにも明かしていないのですがww
これだけで大興奮してくださるとかりかP−さんなにものですか天使なんですか!!(
フィアはもうお好きにだいてだかれてていくあうとしちゃってくださいませ!!Σd(あ、スウとスカイブルーに殴り飛ばされそうですww

ではでは!ありがとうございましたー!!><**

09.4.7  17:11  -    (1z0i3n1)

初めまして、ポンです。
自分では容疑者ポンです。
「ポンって本当に事故起こしたことあるんだぜ」
いや、ベルクさんが。
ついにララ・ホワイトさんが出ましたね〜
(知ったかぶりはやめとけ
違う!知ったかぶりではない

これでスランプだったらポンは
どれだけ・・・・・・
(仁様とポンでは天とありぐらいの差だよ
ではまた・・・(もうくるなよ

09.4.4  09:35  -  不明(削除済)  (kurukuru)

遅れて登場!りかP−です!

カイ君の可愛さもりかP−は見てみたいです!
私もくすりと笑いたーーい!

ピカチュウも可愛い!
モンスターボール!
 ビイビビビビビビッバリリリッ!
りかP−倒れました。バタリ(

わぁ!ベルクとララ・ホワイトが友達になったぁ!なんかこういう絆系が好きなりかP−は大興奮です!!
あとふぇにっくすさんと同様、フィアに抱きたい!てか抱かれたい!いや持って帰る!(おバカ
では!

09.4.2  11:51  -  不明(削除済)  (0498411)

こんばんは西条流月さんっ!
ララ提供ありがとうございます感謝感激あめあられですーーー!!><**
いえいえ!使いにくいなんてことないですよ!^^もともとキャラ設定がしっかりしているためイメージしやすいです!
むしろ書きやすくて早くも愛着わきまくってる仁です!><**
Σ・・・イメージ通りですかっ!?わああありがとうございますっ・・・!><**
それはあれですね!流月さんの説明がうまくてわかりやすかったんです!
仁の捏造も加えられていますが(おま
ララ×フィアはしばらく続きます・・・わかる方はわかると思いますが!(・・・たぶん?

Σふおお!><**
ベルクにつっこんでいただきありがとうございます!
わばばば楽しみといっていただけて嬉しいですーーーっっ!!><**

ではでは!ありがとうございましたーっ!><**

09.4.1  23:06  -    (1z0i3n1)

こんばんはふぇにさんー!
Σようこそすとかさま!wVIPるーむへご案内いたしますっΣd
フィアはどうかわかりませんが仁はふぇにさんをしっかり受け止めますよっ!!そしてだきしめかえs((((へんたいかーえーれ!

綺麗感・・・!><**
おおお目指しているものがふぇにさんに伝わっている・・・!ありがとうございますーーーっ!
Σわあ・・・!珍しく(
すーちゃんに反応がっwwありがとうございます感激なんですが!!><**
ふおお完全脇役のピカチュウまでもときめいてくださったとか・・・!><**

ではではっありがとうございました!><**

09.4.1  22:53  -    (1z0i3n1)

こんばんはドルフィノさーん!
カメックスって走れないよなあとか思いながら、よたよたでべでべおっとっとなロークを想像しながら・・・悶えつつ((
あああじれってええ!がしゃこんばっしゃーーーー!!(
もえがぶっちぎりに変化する瞬間です←
仁が書くとポケモンが空気になることが多々あるというかほぼなんですがorz
そんなわけでポケモンレースだっと書きました!
がしかしやっぱり最後は空気に((
あの・・・まあいっか(だめだ、だめだって

ララの登場シーンは迷いまくりました・・・!
ポケ譚と違って色奏はアクションが少ないので・・・似たり寄ったりなことになりまくるんですよー!><))

・・・カイの秘密・・・!
あれ、かな? という感じですが!
仁の予想は大概はずれるので恐いです☆←

騒ぎたくっww
ながらくお待たせしてすみませんでした!><))
とにかくいいのが書けるまでまいぺすに頑張ります^^

ではっありがとうございました!><**

09.4.1  22:26  -    (1z0i3n1)

こんばんは西条流月です
ララ・ホワイトが出てきましたね
裏設定が使いにくくてすいません(投稿した設定も)
でも、それ以上に仁さんがよく描いて下さっているのでイメージ通りです
ララとフィア達がこれからどうなっていくのか気になります
そして、ベルクの存在がこれから物語にどう影響するのか、これから、物語はどうなるか楽しみにしています
それでは

09.4.1  19:43  -  不明(削除済)  (rutuki)

はっはっはーww仁さんのすとか只今登場です(ぁ

いいな〜私もフィアちゃんに抱きつきたいなぁ(変態
んでもってそのまま仁さんにも(そろそろ捕まる

色奏は本当に綺麗感漂いまくってますよねっ!
ふぇにとは正反対←
そんでもって「む あー うむむ」が可愛くて面白いっw

ピカチュウちゃんが可愛いんだかかわいそうなんだか…><*
とりあえずときめきましたw

ではーw失礼しましたっ!

09.3.31  21:17  -  不明(削除済)  (phoenix)

色奏久々の更新キター!

すみません;
鼻から興奮してましたww
こんばんはドルフィノです!(前置き長いよ

うおぉロークがぽてぽて…ちょ、可愛いw
やりますねカイ…ジェット水流でぶっちぎり…水好きの僕が興奮しますよ騒ぎますよついでに血も騒ぎますよ!?(もう帰れ

そしてララ・ホワイト登場ですね…!
西条流月さんが言う裏設定が気になる僕です^^←
で!そろそろ仁さんも気付いてくださると思うカイの秘密!(
ヒントはあえて明かしません(意地悪
調子乗ってすみません…

ではでは、色奏更新で騒ぎたくった僕がお送りしました!

09.3.31  19:58  -  不明(削除済)  (Mariner)

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