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dummy

その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

16 color. blue -last melody-

著 : 

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 れんちゃんとぐっちゃん? たっははっ! かっわいい名前だなっ










「じっとしてったら!」
 少し強引だけど、ハクリューをロークに押さえつけてもらい、その横でカイは薬草を調合していた。それを傷口に貼り付けるたびに、ハクリューは痛みに暴れる。
「大丈夫、死なないから! ほら、これ飲んで!」
 薬草を浸した水を口に流し込む。だんだん落ち着いてきたようだ。
「…ねえ、君…主は?」
 その胸の証を、カイは見つめた。かれこれ数十分間、人間の気配がしない。








「………?」
 言葉の意味がわからず、フィアは戸惑う。
「…あ…ごめんね、いきなり変なこと言って。私、ケアルっていうの」
 ケアルは左に少し振り返り、ちょっと笑った。
「あ、いえ。あたしはフィアです」
 フィアはトトを放して立ち上がる。
「そのサンドパン、フィアちゃんの神獣? えへへ、私がぼーっとしてるから…さっきから何度も助けてもらっちゃってー…」
 少し、ケアルの声のトーンが落ちた。
「そうだったんですか」
 フィアは、トトに向かってにこっ と微笑んだ。
「………」
 ケアルは街を見下ろしたまま、また静かに口を開いた。
「…あのね…今、悩んでるの…。…心が…挫けそうなの…。ちょっと…聞いてくれないかな…」
 フィアに顔を向けないまま、ケアルは言葉を続けた。


「嫌だよね…? 自分が死んでいく姿を…一番大切な人に見られるのなんて。だって、悲しみしか生まれないから。そうでしょ?」
 ふつ と何かを、フィアの心が呟いた。

「悲しすぎるもの。大切だからこそ、崩れていくところなんて耐えられないもの。それなら…いっそ―――一思いに壊れてほしいよ…」
 自分にも聞こえないほどの小ささで呟いた声は、ケアルには届かなかった。
 目を離さず彼女を見据えるフィアと、視線をずらすことなく街を見下ろすケアル。

「私には壊す勇気なんてない…だから、…ずっとここで待ってるの…。あのコが早く…楽になるまで…」
 それが、言葉になった。


「違うっ」


 その言葉に、反応する。
「…違う」
 もう一度言う。
 ゆっくりと、ケアルは振り向いた。
 その右頬に、証。コスモスと羽根の紋章。
「ばかっ」
 目の端に涙を溜め、フィアはケアルに言い放った。背を向けて走り出し、階段を駆け下りる。
 ケアルはそのまま動かなかった。



「なんであんなこと言うのっ…」
 フィアの後をトトが追いかける。










 あー…。疲れた。で、その王子さんはどこだって?










 一通り処置は終わった。ただ、薬草だけではまだ心もとない。
「行こ? どっか、ちゃんと手当てできる所を探さなきゃ」
 カイが立ち上がる。歩き出し、手招きをする。ハクリューは少し躊躇うと、カイについてきた。
 あのビルに上ろう。こんな灰色一色の街なら、フィアのあの桜色は目立つだろうし、フィアのほうも自分を見つけやすいかもしれない。それにハクリューもいるからすぐわかるよね と、カイはビルを目指した。
 その向かっている途中。向こうから桜色が駆けてくる。
「…フィア!」
 カイが大きく手を振る。
 カイのもとへたどり着くと、フィアは膝に手をついて息を整える。
「そんなに急いでどしたの?」
「あ、ううん…」
 フィアは、ロークの斜め後ろからついてくるハクリューを見て、にこりと笑った。
「治ったんだ。よかった」
「うん。でも、まだ応急処置だから…」
「そっか」
 フィアはハクリューの前に立った。胸の紋章を見る。彼女の頬を思い出す。
「…あなたの主に会ったよ」
 そう言うと、ハクリューは悲しそうに顔を伏せた。








 街を出るまでの道の間にも、何匹か魔獣が襲ってきた。その中には、結び落ちの神獣もいた。
 フィアは明るい気持ちにはなれなかった。

「ハクリュー…っ」
 ふと、後ろから声がした。もう街を出る直前だった。振り返ると、

 蒼い蒼い、
 あの少女がそこにいた。

「…ごめんね」
 両手を胸できゅっ と組み、ケアルは俯く。謝るように頭を垂れる。ハクリューはそんな彼女を見つめた。近づいていき、ケアルの横を通り過ぎる。
「…待ってるよ」
 その状態のまま、ケアルは言った。優しく言った。そして、ぱっ とハクリューのほうを向く。
「ごはん作って、待ってるからっ」
 柔らかく微笑む。ハクリューは一回ケアルを振り向くと、街へと消えた。

「―――帰ってくるの?」
 フィアの声に、ケアルは振り向く。途端。
「えっ!?」
という声を上げたのはカイだった。

 フィアの頬に、ぽろぽろと涙が零れていた。
「帰ってくるよねっ?」
 ケアルは驚いたように聞いた。
「どうして、フィアちゃんが泣くの…?」
「わ、わかんない…」
 目をこする。そんなフィアを見て、ケアルは目を細めて微笑んだ。
「フィア―――」










「誰だ…?」
 その白い白い建物の中。赤いジャージの少年が、そこに立っていた。
「傍観者。」
 欠伸。










「………」
 カイの口元がひきつっている。
「♪」
 目の前には、実に楽しそうに鍋をかき混ぜるケアル。その名も―――“ヤミナベ”。
 フィアはここから少し離れた街の入口付近で、さっきからその向こうを眺めている。そのため、この状況をフィアは知らない。

 まないた in ザ・鍋。



 どうしよう。








 フィアがこちらに駆けてくる。
「ケアルっケアルー! ハクリューが帰ってくるよーっ!」
 満面の笑み。嬉しそうに手を振り回しながら向かってくる。本当に嬉しそうだ。
 やばい、見つかる、このブラックホール。
 今のフィアにはあまりに刺激が強すぎるよ! だって、黒いんだもん! ブラックホールだもんね!
 カイは、ロークと顔を見合わせ、互いに頷いた。
「あ! ごはんできたんだねっ」
 ひょこっ とフィアが鍋を覗く。その横から、

「わああああ手が滑りましたーーーーー!!!」

がっしゃーん。
 ドロドロしたものが地面に流れる。
「ああああごはんがっ」
 それらをかき集めようとするフィアをカイは必死で止める。あの煙が見えませんか!
「あーあ…。でもしょうがないなぁ。カイ、気にすることないからねー。また作るからっ」
 また…。


 ハクリューがやってくる。ぴょん と跳ぶと、ケアルに飛び込んだ。
「ごめんね、もう離れたりしないから…!」
 ケアルはハクリューをぎゅっ と抱きしめる。その時、ハクリューが ちらりと“ごはん”を見て、ほっ と息をついた。そういえばハクリューが一回振り向いた時、ちょっと呆れたように笑っていた気がする。とカイは思った。
「カイ、ハクリューを助けてくれてありがとう」
 ケアルがカイの頭をなでる。カイはにこっ と笑った。そして、ケアルはてて とフィアの前に立つと、笑いかける。
「フィア、ありがとう! だいすきっ」
「ふぇっ?」
 きょとんとするフィア。ケアルが笑う。








 その、蒼い蒼い少女は

 蒼い服の
 蒼い髪の
 蒼い瞳の
 その少女は


 今日、もうひとつの大切なものをみつけた。





 大切にしようと思った。










     16 color. blue -last melody-

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2009.1.30  06:21:36    公開
2009.1.31  02:01:54    修正


■  コメント (5)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

こんばんはドルフィノさんー!!

次回ヤツです!
・・・“傍観者”っていれるか迷ったんですけどね・・・!だってこれ、傍観者というより・・・主催者?(違
とりあえず彼は自称傍観者ということで←

もうこれからカイはケアルからフィアを守るため大変なことになるんじゃないでしょか!(でもまだ未定・・・!><))
もうトトよりもロークのほうが存在感あるなって自嘲気味のじんです!←
Σあれ!だいすきっていったのはけあるなんです・・・!><))
すみませんまぎらわし・・・!修正しておきました!(そんなかわんねえw
・・・そういえばフィアを嫌うキャラは考えてない!(

確かに最近更新かさなりますね・・・!掲示板とか・・ほんとに毎回かぶってて申し訳な・・・!><))今日もかぶtt・・・!
しんくろですか!(
毎日更新したいなあとか最近ちょっと頑張ってます・・!でも私の辞書には「みっかぼうず」という恐ろしい言葉が・・・!

ではっ><**

09.1.31  02:26  -    (1z0i3n1)

わわこんばんは四葉さんはじめまして!!
読んでくださってたとかうわああありがとうございます!!><**
Σしんじゃだめですかわりに仁がしにますから!←

やみなべwもっと詳しく書きたかったです(
でもそんなことしたら路線がずれちゃうんで・・・Σあ、自重してた
フィアに見せると何が起こるかわかりませんからね!書いてみたい気もしますが・・番外編とかで書いてみましょか!w(

ふおおかわいいといっていただけてじんが嬉しいです!ありがとうございます><**
Σ!!!トトが好きですか!?わああほんとですかっ!なんかかげうすいなーとかおもってたのでものすごく嬉しいです・・・!><*そして安心です・・・!

ありがとうございましたっ!!また来てくださ・・・!><**

09.1.31  01:58  -    (1z0i3n1)

赤ジャージの傍観者キター!

今回のフィアはちょっと切ない…(つД`)

けあるんのまな板鍋が!ブラックホールてw
必死なカイ可愛いw
そしてカイ!だいすきて!スカイブルーがどんどん哀しくなって行く…((
にしてもフィアモテモテですねw(

すみません間違えてましたね…神獣と魔獣て書いてました…。
聖獣の方向でおkですよ!

それにしても最近僕が更新していると仁さんが更新されている(もしくは逆パターンあり)のが本当に多いですな…。
はっ!ならば僕が毎日更新すれば色奏の最新話が毎日読めるのでは!?(むちゃくちゃ喋んな
すみません冗談です(

では!

09.1.30  18:32  -  不明(削除済)  (Mariner)

はじめまして!
前から仁さんの小説読ませてもらいました四葉です><(コメントしろ
コメントできなくてごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなs(しね


ヤミナベいいです・・・・ハクリューさんほっとしてるところがいいです。
ブラックホール・・・やみなべ・・・ぶらっくほーる・・・・やみなべ・・・フィアちゃんには到底見せられませんね^^;
フィアちゃん可愛いです!(へんたい
でも一番好きなのはトトさんです。トトさんすきです(えっ!?

ではっ。

09.1.30  16:24  -  不明(削除済)  (102206)

わあ「♪」が入ってるあたりたて読みのかたにやさしくないことに・・・!><))
そしてなんか今回「まあいっか☆」が多かった気がする(

はい、ぴかりさんが面白い設定を考えてくださったおかげで後半に仁が暴走しました!自重なにそれ!ってかんじでした←
・・・いやでも・・・そうでもなかったりしても・・・色奏のこの雰囲気になんか・・・まあいっか(
しりあすからのぎゃっぷですか(きくな

では時間なのでこれで・・・!
うわあああみなさんのところにこめしにいくじかんがなかった・・・!><))今行ったらぴかりさんのところキリ番なのに・・・!!ドルフィノさん更新されてるのに・・・!orz

09.1.30  06:29  -    (1z0i3n1)

 
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