その色が奏でるストーリー.
15 color. blue -first melody-
著 : 仁
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その城の前の広場、噴水の囲いに寝転がる一人の少年。
「くぁー…」
欠伸をひとつ。
少年の目の前を、誰かがどたばたと駆けていく。
まったく騒がしい街だな。安眠妨害だ。
森というほど深くない、広がる雑木林の中に舗装された道が一本。まっすぐに伸びるその道を木々が避けるように立ち並んでいる。交易の盛んな港町であるルルティコから市外へ物資を運ぶための道なのだろう。地面はしっかりと踏み均されている。
「あれっ」
ロークの肩に乗っていたカイが声を上げた。何事かと、カイの見つめる先をフィアが覗く。
数十メートル先の道がふたつに別れていた。折れた看板が地面に転がっている。それも、折れているだけならいいのだが、見るも無惨に粉微塵と散らかっているのだ。これではどちらへ行けばいいのかわからない。
「どっちに行こっか」
「どっちでもいいよ」
そんなやりとりを数分続ける。ところが、しばらくしてトトがトコトコと左の道を進んでいってしまった。
「あっ、トト待って!」
フィアが慌ててそれを追いかける。カイとロークもそれに続く。
その道の先にあるのは、廃ビルが建ち並ぶ廃れた街。アイデン。
王子が? 拐われた? 俺には関係ないけど。
第一印象はただ、灰色。そんな街にフィア達は迷い込んだ。
「トトー! どこなのー!?」
エルエさんに言われたそばからトトを見失ってしまった。トトは時々、本能に支配されてしまう。その本能の欲求を闘いによって埋めようとする。ティラでは大丈夫だったけど、グレンピアでは危うくルリ達を傷つけてしまうところだった。でも、それはトトのせいじゃない。だって、本当はそれが当たり前だから。自分がトトを護ってあげられてないだけだから。廃墟と化したその街を縫うように捜す。なんだか不気味な雰囲気だ。
ふと、ある角を通り過ぎた時、
「えっ?」
鮮やかな蒼が一瞬、灰色の中に映った。足を止めて戻ってみるが、何もない。
「…こっち捜してみよっか」
それでも少し気になり、その方向へと駆け出す。角を曲がる。
「……え…」
続く血痕。
それは、壁と地面に。引き摺っていったように先の通りまで伸びていた。紅い紅いそれが、向こうまで。
「なんなのこれ…!」
カイが壁に触れる。ついたばかりの血のようだ。カイは苦い顔をした。
恐る恐る、フィアは道についた血を辿り、曲がり角の多いその道を進んだ。
角を何回か曲がった時だった。
その傷だらけの蒼い身体を横たえて、それは道の傍らに居た。
「大変、酷い傷…!」
神獣だ。蒼く、長い竜。ハクリューだった。
フィアは駆け寄り、その身体を抱き起こそうとする。しかし、ハクリューはフィアを睨み付け、長い尾で振り払うと、血を流しながら飛んでいってしまった。
「…だめ、そんな身体で…!」
フィアは立ち上がる。追おうとするが、はたと思いとどまる。そうだ、今はトトを捜しているんだ。でもあのハクリューを放っておけば、死んでしまうのも時間の問題だ。
「フィアはトトを捜してきて」
どうすればいいかを必死で考えていたフィアの後ろから、カイの声がした。
「僕なら薬草であのハクリューを助けてあげられるから。大丈夫、ボクを信じて!」
カイが にこりと笑う。フィアは振り返り、カイを見つめる。そして、こくり と頷いた。
「じゃあ、お願いします。ありがとう!」
フィアはもと来た道へ、カイはそのままハクリューを追って駆け出した。
えええ…俺も行くのかよ。めんどくせえな…。
まあ、暇だけどさ。
結び落ち。それは、証の意味を失くした神獣。印を結んだにも関わらず、主から切り離された神獣。
結び落ち。そんな言葉が、フィアの頭の中に浮かんでいた。そう、あのハクリューには証があった。コスモスと羽根の紋章が、胸の水晶の下に。主は、どこにもいない。
主はもういないのだろうか。それとも…捨てられたのだろうか。
「トトー! どこにいるのーっ!?」
一刻も早く捜し出さなきゃ。フィアは一層声を張り上げる。しかし、それは不気味なほど静かな街の灰色に吸い込まれてゆくだけだった。
「…そうだ!」
高い所からのほうが見つけやすいかもしれない。さっき、高いビルの横を通ったから、あそこに上れば…。そう考え、後ろを振り向いた瞬間、
フィアに魔獣のストライクの鎌が振り下ろされる。
「きゃあああ!!」
あの出血量で動き回ればすぐに力尽きちゃう…。急がないと!
「ローク、先に行くね!」
カイはスピードを上げて走る。
その時だった。
「ガゥオオオオオオッ!」
雄叫びを上げ、真っ黒な物体がカイに襲いかかってきた。口を大きく開き、炎を放とうとする。
「ヘルガー!?」
ブシャアアアアッ!
ロークがハイドロポンプを打ち出した。それが直撃し、ヘルガーは逃げていった。
「…今の、魔獣…?」
アイデン、それは無人の街。昔栄えた面影を痛々しく残したまま、それは日に日に褪せてゆく。いつしかその街には、魔獣や結び落ちの神獣達が住みつくようになった。
神獣なんか連れてねえよ。なんか悪いか?
ギィン!
フィアは頭を抱え、しりもちをついた。痛みを感じない。ゆっくりと頭から手を離しながら上を向くと、ストライクの動きが止まっていた。いや、正確に言うと、止められていた。カイロスの大きな鋏と、ストライクのふたつの鎌。それが同じ力でぶつかり合っている。助けてくれたわけではない。ストライクと同じようにフィアを狙っていたカイロスが、たまたまそれを受け止めただけだ。二匹は、今もなお狂気に囚われている。
フィアは転がるように二匹の真下から抜け出し、ビルの階段を駆け上がった。
カンカンカンカン、カン、カン…カン…
長い階段に息が切れてくる。手すりにすがるようにして、フィアは最後の段を上りきった。錆び付いた扉は壊れて全開になっている。屋上に出た。
そこに、
蒼い蒼い―――。
誰かがいた。
服も髪も、蒼い少女。後ろ姿だが、フィアよりも二三歳年上に見える。
この街にきてはじめて見た人間に、フィアは少し驚く。声を掛けようとした時、視界の端で何かがきらり と光った。はっ として顔を上げると、上空にエアームドが見えた。少女めがけて鋼の翼を構え、急降下してくる。
「危ないっ!」
聞こえていないのか、少女は ぴくりとも反応しない。すぐそこまで、その鋭い翼が迫る―――。
風が吹き抜けた。それに乗り、大量の砂埃が巻き上げられてゆく。砂嵐だ。
「トト!」
砂嵐の中心に、飴色の魔獣。背中の棘を逆立て、トトはエアームドを ギラリと睨む。砂に目を潰され、エアームドは空を飛び去っていった。
「トト…!」
フィアは駆け寄ると、トトを抱き締める。もうその目は穏やかだった。
「―――あなたならどうしますか」
突然、少女が口を開いた。
「あなたなら―――大切なものが崩れてしまう時、どうしますか…」
それは、とても切ない声だった。
どうして結んだ糸を切ってしまったのですか。
切ってしまったことに気づいているのですか。
それとも、貴方が一番辛いのですか?
15 color. blue -first melody-
2009.1.29 05:51:52 公開
■ コメント (5)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
09.1.30 06:06 - 仁 (1z0i3n1) |
わああああハルさんだ!!忘れるはずないじゃないですかほんとハルさんの絵は神ですから・・・!><* というか仁を覚えていてくださってありがとうございます奇跡ですか← あの、逆すとーきんぐしてもいいですか( わああ・・・!なんだかもったいないたくさんのお褒めの言葉がっ・・・!><)) フィアのとりえはやさしさですからね!たぶん( カイは投稿していただいたキャラなのでうまく動かせるかどうか不安だったんですが・・・そういっていただけると自信がつきますありがとうございます・・・!><** ふおお気になるとか・・・!><仁がいい気になりますよ・・・!ふふふふふふh(変質者☆ めんどくせえのひとは・・・知らない人のが多い気もしますが><あれです! わああ楽しみにしててくださるんですか・・・! ありがとうございます!では・・・!><** 09.1.30 05:46 - 仁 (1z0i3n1) |
今日の体育の授業のバスケで右手小指を突き指してしまったのではないかとびくびくしてたけど無事で助かったドルフィノです(前置きなげぇ さすがに利き腕がやられるのはあれですからね!前にもバレーで左手中指突き指したことだし!(はい終了ー てか野球やりて(黙 朝一で読みました! けあるんはなんかめちゃシリアスですな…! そして途中途中のめんどくせぇは!アイツですか!?フラグに興奮しまくっています( そういえばロークは神獣なのか魔獣なのか決めてなかった!どうしよ←← 因みに僕は縦書き完全無視です(ぇ そして定期的更新で今日の朝更新する予定だったのをすっかり忘れてた僕( すみません今からでも更新します! ところで最近僕が更新しているとなんと仁さんも更新してたよってことによくなってますが ここれはけっしてすとーきんぐじゃないですよほんとーにていきてきこうしんですからね!(必死 では…! 09.1.29 17:59 - 不明(削除済) (Mariner) |
仁さんこちらでは初めましてですよね! 覚えてますか?其擬人化掲示板でお世話になったハルです!! 実は最初からずっとストーカーしてました |壁|ω☆) 今回、思いきってコメを・・・・!! フィアちゃん可愛いです!! そして物凄く優しいですね!! カイくんも好みだったりします(´人`) そしてそして、最後の女性が物凄く気になります!! ハクリューもどうなっちゃうんだろ((゜口゜;)) あ、途中で「めんどくさい」とか言ってる人ってもしかしてもしかすると!? フフフフ---・・・・・・(勝手に妄想すな。 続き楽しみにしてますね!! それでは失礼なコメごめんなさいです。。。 09.1.29 13:38 - kkt (kikuti) |
どうして私が書くと肝心の人物の登場が遅くなるんだろう!! はい、それもニガテ分野!の、仁です← 一話におさめる気だったのに・・・カイのとき同様ふたつにわかれざるをえなく・・・!><)) なんだか暗い雰囲気ですが・・・次回崩壊します(どんな意味かは 想像におまかせです☆← あ、あの・・・! よくわからないかもしれませんが、途中途中のめんどくせえとか言ってるやつはその・・・!あれですから・・・!><* とにかく違うところで何かが進行しているということがわかっていただければ・・・! あ、仁は何気に毎回縦書き表示のされかたも意識しているのですが、今回はうまくいってうおおおというかんじでした!(しらねw ではでは!近いうちに16話更新します!><** 09.1.29 06:02 - 仁 (1z0i3n1) |
Σつきゆび!痛いですよね!大丈夫ですか!?怪我なくてよかったです・・・!
ふお!朝一とかありがとうございますわああ!!
彼女はシリアスにしすぎて性格がかわりそ(
いやこれはちょっとせいさくじょうのつごうでっ・・(いいわけー
はい、仁はフラグへたくそですね!!てきとうであとあとどうなるかものすごく心配です☆←
本気で(
あ、私はロークは聖獣のつもりで書いてました・・私の脳内設定では魔獣つれてる人間はめったにいないせっていなので・・
魔獣がいいーとかあったらいってください♪
オリエディの更新読みましたよ!
すとーきんぐされたら逆すとーきんぐで対応するので大丈夫です!Σd
ではでは><**