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その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

14 color. bellflower

著 : 

イラスト : 

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 その港の陽は沈み、桔梗へ染まる町。ぽっ ぽっ と、黄色の明かりが灯されてゆく家々。街灯も同じ光を放ち始める。静かな海に、波の音がただ仄か。
 染まる汐の香る町、ルルティコ。








 大きく深呼吸。夕凪の海岸線で、くつに水が入らないようにさざ波を避け、さく、さく と濡れた砂浜を歩く。後ろを振り向くと、楽しそうについてくるトトと、残した分だけ続く足跡。カイとロークは波打ち際を駆け回っている。
 少し歩くと、砂利が多くなって磯に出た。視線を上げると、その岩のひとつに誰かが座っていた。暗くてよく見えないけど、フィアと同じくらいの年の男の子のようだ。その傍らには、一匹のイーブイがいる。










 海をあとにした。
 宿を探して、二人とニ匹が町を歩く。静かでひと気のない、汐風が吹き抜ける桔梗の町。周囲の家々からは、家族の楽しそうな声が聞こえてくる。いい気持ちだった。
 家族って、いいなあ…。
「おーい、フィアー?」
「はぅえっ!?」
 突然のカイの声に、フィアはびっくりしておかしな声が漏れた。顔が赤くなったのは後ろにいるカイには見えなかった。
「ほわ? なにぽけっ としてるの? どうかしたのー?」
「えっえへへへっ、なんでもないよ」
 不自然に笑って誤魔化す。家族っていいなあって、思ったとき…スウが頭に浮かんだ。別に焦って誤魔化すことでもないのに、なんでかな…。
 自分でよくわからず、またぼーっとするフィア。カイとロークが顔を見合わせる。
「フィア!」
「はいっっ?」
 また突然呼ばれ、今度はやけに高い声が出た。また恥ずかしくなり、わけがわからなくなってきた。
「久しぶりじゃないか、フィア」
 フィアはきょとんとした。その声はカイではなく、女のひとの声だ。
「アタシだよ、忘れたのかい?」
 顔を上げると…そこに、背が高く、がたいのいい女性が立っていた。










 男の子は、海を見ながら何かを手帳に書き留めているようだ。それを脇からイーブイが覗いている。
 口に手をあて、小さく欠伸をしたときに、その人はフィアがこちらを向いているのに気づいた。
「よっ、今晩は」
 ひらっ と手を上げ、フィアに笑いかける。その心安さに、フィアは彼に話しかけた。
「何をしてるんですか?」
「んー、修行かな」
「修行…?」
「ブイッ」
 イーブイは一声鳴くと、彼と一緒に小さく笑った。
「なんの修行ですか?」
「ま、それは秘密なっ」
 パタン と手帳を閉じる。少し気になったが、初対面でいろいろ聞くのも行儀悪いな と思い、そうですか とだけ言った。
 後ろから、カイとロークが波打ち際を駆けっこをしながら走ってくる。










「エルエさんっ!」
 フィアはその名前を呼んだ。おう とエルエが笑う。
「また会えて嬉しいです!」
「ほぇ? フィア、知り合い?」
 疑問符を浮かべ、カイがフィアとエルエを交互に見比べる。
「ああ。一ヶ月くらい前かね?フィアがうちに訪ねてきてそんときなんか半べそ…」
「エルエさんっっ!」
 慌ててフィアが言葉を遮る。エルエがそれを見てくすくすと笑った。
「どうだい、強くなったかい」
 エルエは優しく、柔らかい笑顔で聞く。フィアはちょっと視線を落とし、小さく言った。
「…いえ、迷惑かけてばかりです」
「そう…やっぱりね」
 ふふっ とエルエは微笑んだ。










 陽はもう沈んでいた。ただ、水平線に淡く淡く残る光が、その桔梗を作り出していた。
「そういえば見ない顔だな、旅行か?」
「ううん…えっと」
「旅の途中、だよっ」
 急に後ろから現れたカイに、フィアはびくりとした。
「旅? 二人で?」
「あとロークとトトも一緒!」
 で、この人だあれ?と、カイはフィアのほうを向く。
「二人で…一緒に?」
 しかし、フィアはカイの言葉を聞き返した。
「うんっ。人捜しっていう目的は同じだからいいでしょ?」
 そっか。フィアは今気づいた。こういうのを、仲間っていうのかな。仲間…なんだかちょっと、おおげさな気もするけど。ありがとう と、笑った。
「旅か…」
 彼は立ち上がり、岩場を下りた。
「な、旅の話聞かせてくれよ。俺も面白い話たくさん聞かせてやるからさっ」










「五十万はどうしたんだい? 持ってないみたいだけど…」
 エルエは煙草を取り出すが、注意をされ、少し愚痴をこぼすとしぶしぶしまった。そこは宿屋の玄関先だった。
「あれは…」
 グレンピアで使ってしまった。というのも、ブーピッグが暴れたあの店の修繕費に、と全部置いてきてしまったのだ。それに、フィアにはあんな大金を持ち運ぶ勇気はなかった。
「馬鹿だねえ」
 そう言って椅子の背もたれにもたれ掛かる。カイは 五十万!? と目をぱちくりさせた。
「ところで、エルエさんはどうしてここにいるんですか?」
「いい仕事があったからね。二十万の海獣を狩りにきたのさ」
 あと、とエルエは付け足した。
「あんたみたいに、魔獣と印を結んでるやつがこの町にいるんだ。ついでに会おうと思ってね」
「魔獣?」
 カイがトトを見る。
「…知ってたんですか」
「だてにハンターやってないからね」
 フィアはちょっと困ったように笑った。聖獣の間でも人間の間でも、魔獣をよく思う人はあまりいない。確かに、魔獣は獰猛で凶暴な神獣が多い。でも、その中でも自然と優しさを覚える魔獣だっている。フィアは、トトの左耳の後ろをなでた。
 さて とエルエは立ち上がった。
「さっき換金してきたばかりなんだ。金がないならアタシがあんた達の分も払ってあげるよ。こう見えてアタシは太っ腹だからね」
 にかっ とエルエは笑った。










 その人はとても話上手だった。いくら話しても飽きず、聞き入ってしまうほどだった。それに比べ、思い出し思い出し話すフィアと、擬態語が多いカイの話。
 残り陽もかすかになってきた。










 朝はエルエに早く起こされ、三人で市場へ出掛けた。半眠りの状態で目をこすりながらエルエに尋ねる。
「どこへ行くんですか?」
「昨日言っただろ、その魔獣の持ち主のところさ」
 まだ陽は昇りはじめたばかりだというのに賑わう市場を抜けて港へ出た。そこには何隻かの船が並び、男達が樽やずだ袋を中から運び出していた。
「こんな朝早くから仕事なんて…大変そう…」
 欠伸をしながらフィアが言う。横ではカイが立ったまま寝ている。
「おお、エルエじゃないか!」
 木材を持った男がこちらへ歩み寄ってきた。きっとエルエの知り合いというのはこの人だろう。エルエは気さくに挨拶を返した。
「久しぶりだねヨーヤ。ジャックは元気かい?」
「ああ、この通りだ」
 ヨーヤと呼ばれた男の腕に、一匹のムクホークが止まった。どうやらジャックとはこのムクホークの名前らしい。
「う、うわあぁっ!」
 船のほうから声が聞こえた。見ると、若者の手から樽が滑り落ちていくところだった。下には同じように働いている人がいる。フィアは思わず目をつむった。
 …しかし、樽が落ちた音はしなかった。
「フィア、目を開けな」
 エルエに言われ、恐る恐る目を開けた。

 樽が浮いていた。
 それは一瞬で、次に蜘蛛の糸のようなものがその樽を捉えた。
「………?」
 何が起こったのかわからなかった。カイも今ので目を覚ましたようだ。
「あいつはね、半獣なんだよ。イトマルのね」
 その右腕に、錨と太陽の印。その肩に舞い降りたムクホークの首の後ろに、同じ印。
「…半獣のひとも、印結びができるんですか…?」
「そうだね、安定はしないだろうけど。でも、そのおかげで魔獣と心を通わすことは人間ほど難しいことじゃない。それに、ヨーヤはジャックをムックルの頃から育てているんだ」
 もし、とエルエは続けた。
「魔獣の本能が暴れだしても、ヨーヤは力がある。フィア、あんたはどうだい?」
 フィアは、何一つ当てはまらなかった。










 風が出てきた。陽は沈んだ。桔梗は終わってしまった。
「そろそろ俺は帰るな。風が強くなりそうだから、早く宿に戻ったほうがいいぞ」
 彼は町へ向かって歩き出した。
「ありがとなっ」










 エルエはいつも現実の厳しさを教えてくれる。そうして心が揺らぐ。だから、もっと強くなろうと思う。

 力なんてない。でも、強い願いは届くはずだから。
 あたしはトトが大好きで、トトはあたしとずっと一緒にいてくれるから。
 あたしは、後戻りはしたくないから。
 迷わないって、信じるって、決めたから。










 ててて と走って彼の横につくイーブイの左手に証を見つけた。重なる月と星に“INFINITY”とまた重なった印。どういう意味だろう とフィアはなんとなく思った。










 暁が町の向こうを仄明るく照らし出す。朝も早いというのに、その町にはすでに気配が溢れている。打ち寄せる潮の音色はたちまち人々の声に溶け込んでゆく。
 零れる朝陽に活気溢れる町、ルルティコ。










「あ、名前聞くの忘れてたよっ」
「あっ」













「―――王子! どこですか!? 王子!」
 グレンピアのその中心、ラピス城に声が響く。何が起こったか―――聞いての通りだ。



 ルリが拐われた。





 何処かの誰かに。










     14 color. bellflower

14 color. bellflower

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2009.1.22  20:14:31    公開
2009.1.29  22:40:21    修正


■  コメント (3)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

こんばんはドルフィノさん!こめ返しお待たせしました・・・!
100こめ自分で踏みました←

うおおカイ可愛いですか・・・!よかったですっ!><*
それはあれです!仁の表現でなくドルフィノさんのキャラ作りが神だということですから!!本当にありがとうございます!!><**

あああ仁は適当←><))
先は考えてるのに展開の仕方を考えてないもうしねばいいよ!

わあエルエ覚えててくださってたんですね!!><**もうそれだけで嬉しいです!!

定期的に更新できるとか羨ましすぎます・・・!><**
私もドルフィノさんを見習え!ということで私の師匠になってくだ(だまれ

ではありがとうございました!!><**

09.1.24  23:13  -    (1z0i3n1)

海で走り回るカイとローク可愛いw

あの、カイが立ちながら寝るとかめちゃめちゃ可愛いんですが!
はしょりは気にするほどでも無いですよ!オリエディの方は超はしょりまくってますから!(展開をまともに考え無いで本編書くドルフィノとかいうヤツが一番悪い件

エルエ久々に登場!まさかとは思ったんですけどまさかうあおあ((

ルリ、拐われちまったか…。
ところで、あいつですか!?うおぉぉ!(うるさい

最近僕の方は更新が定期的になっていて、しかも今日なのに…まだなんも考えてねーよ!(おい
あの、とりあえず今から更新して来ますおお!

では!

09.1.23  00:12  -  不明(削除済)  (Mariner)

わー一週間ぶりの更新←

うおお書きたいこととか表現をいろいろはしょりました・・・!
おかげでなんだかヘンなことに!><))

ところでルリがでてきたということはそろそろあいつが現れそうですね!←

エルエを再登場させようかなーしないかなーと思ってましたが結局出しました><
というかそっちよりも半獣も印結びできるよって話を中心にしようとしたのにちょ!おまけじゃん!ものすごく追いやられた感が・・・><)))

では〜><**

09.1.22  20:23  -    (1z0i3n1)

 
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