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dummy

その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

11 color. ultramarine

著 : 

イラスト : 

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*空色の片想い少年








 雨の中、ただただ佇むその後ろ姿は

 どうしようもなく、


 儚げだった。






 コハクに送ってもらい、今フィアの前には比較的低い山々が立ち並んでいる。山の向こうには港町があるらしいが、低い山といっても越えるには数日かかりそうだ。
 フィアは止まない雨の中、コハクが飛び去った方向をずっと見つめていた。見えなくなっても視線を反らすことなく、ただその空を見つめる。
「…キ?」
 フィアは胸を押さえるように両手を握った。視線は地面へと移り、口から微かに声が漏れる。
「………スウ」
 スウに拒絶されたようで、フィアは心が折れてしまいそうだった。このままスウを追いかけていいのだろうか。自分の幸せが、必ずしも相手の幸せとは限らない。いや、そんなこと滅多にない。自分を過信していた気がして、恥ずかしい。
 でも、人違いだった。自分はまだスウに会っていない。まだわからない。そうやって自分に言い聞かせる。だけど、それもただの言い訳に聞こえて…。

 滴り落ちる雫が、桜色を濡らした。










「おまえは綺麗すぎるんだ」
 スウが言った。
「…そんなことないよ」
 あたしはなんのことかわからなかった。
「……あのな、俺………おまえが好きだ」
 驚いて顔を上げた。顔が熱くなるのを感じた。でも…理解できなかった。
 スウは笑っていた。
「一緒にいようよ…」
 スウは横に首を振る。
 あたしはまた泣き出したくなった。そのせいか、声が出なかった。待って、と言えなかった。
 木造の床を軋ませ、戸を開け放つ。
 どうして…?

 群青の森に、スウは消えた。



 あたしを残して。










 あの日から、一ヶ月くらいは経った。でも、あんな簡単だと思ってたはずの言葉…あの一言が、未だに理解できていなかった。

ザアアアア…

 雨音がする。葉の隙間から雫が零れ落ちる。今は、この止まない雨がフィアの心をうやむやにしてくれた。
 …このまま夜を明かしてしまおうか とフィアは思った。でも、それではトトが凍えてしまう。
 フィアは感覚のなくなった両手の指先を合わせる。それはまるで祈るように、願うように。一体何に祈り、何を願っているんだろう。自嘲さえも出てこなかった。

 その時、男の子の声がした。
「ミド、“はっぱカッター”!」
 どしん という小さな振動。振り返ると、そこにいたのは黒いキャップをかぶった空色の髪の男の子。足元には一匹のナエトル。
 そして、目の前には力尽きて倒れたドンファンがいた。
「あぶねーだろっ…何してんだ…?」
 フィアと目があうと、少年は少し目を泳がせた。
「…なんでもないよ」
「嘘だろ、こんな雨降ってんのにっ」
 フィアはまた前を向いた。少年がおそるおそるフィアに近づく。
「…あぁっと…うち来いよ! ここよか暖かいし、雨もしのげるからさっ」
 フィアは動かない。
「…ほらっ」
 少年は少し躊躇うと強引に、でも遠慮がちにフィアの腕を引っ張った。
「オレ、スカイブルーっていうんだっ」
「………あたしは…フィア」



 フィアが連れていかれたのは、石造りの小さな家だった。

 ひとつしかない部屋を三匹の神獣がきゃーきゃー と駆け回る。
「うっせー!! ミド! レナ! アオ! ただでさえ狭いのにおまえらっ…」
 スカイブルーがその神獣、ナエトルとヒコザルとポッチャマを怒鳴りつける。
ドガッシャン!!
 案の定ひとつの棚が倒れ、中に詰まっていた色々な種類の木の実を床にぶちまけた。
「っだぁ! だから言ったろーがっ!! 待てコラ!!」
 まずい! と慌てて逃げ出す三匹を今度はスカイブルーが追いかける。
 その騒がしい様子を見てフィアは ふっと笑うと、何も言わずに戸口へ向かった。
「あ、あれ、フィア? どっか行くの?」
「…うん、ちょっと…トトを頼んでいい?」
「別にいいけど…」
 フィアは パタンとドアを閉めた。










チッチッチッ…
 時計の音が聞こえた…のは、一瞬だった。
「キャッキャ!」
「チャマッ!」
「…ナ?」
「キキキ」
 うちのあほ三匹プラス、フィアのサンドパンが何か話をしているらしい。なんだか盛り上がっているようだ。
 まあ、それはどうでもいい。あれからフィアがなかなか帰って来ない。時計を見ると…まだ五分も経っていなかったが。
 何か気に触ることでもしたのかな。いや、きっとしたんだな。だって明らかに呆れてた顔だったもん。あ〜どうしよ…。
 スカイブルーは両肘を膝につき、顔を両手で押さえた。指先で空色の髪を くしゃりと握る。
 ふと思い立ち、スカイブルーはテーブルに置いていた黒いキャップを手に取った。










 すぐにグレンピアを発ったのは、早く…もう一度スウに会おうと思ったから。居ても立ってもいられなくなったから。でも、この降り頻る雨が心を濡らしていくうちに、頭が冷静になっていった。

 あたしは…スウを追いかけるべきじゃない。








 みるからに弱そうで、小さくて、震えているその背中。少し触れたら壊れてしまいそうだった。
 脳裏にさっきのフィアの笑顔が蘇った。消えてしまいそうな笑顔。
 ドキリと胸が鳴った。なんだか胸が熱くなった。








「傘」
 雨が肌を打つ感覚がなくなった。振り向くと、スカイブルーが目を反らしたままフィアに傘を翳していた。
「…スカイブルーが濡れちゃうよ」
「オレはいいからっ」
 フィアはスカイブルーに向き直り、じっと見つめる。一瞬目が合ったが、スカイブルーは慌ててまた反らした。
 スカイブルーの頬が赤い。それを見て、フィアはまた辛くなった。
「…顔…赤いよ…」
「へあっ赤っ!?」
 フィアは下を向き、胸で手を握った。
「うあっとこれはだなっ…」
「…あの時っ…」
 混乱していたスカイブルーだが、フィアの声を聞いて言葉を呑んだ。
 涙声だった。

「あのままずっと待ってればよかった! 引き留めもしなかったのに今更追いかけるなんて迷惑なだけ! あたしが追いかける資格なんてないよ! 泣いてスウを困らせてわがままでスカイブルーに風邪を引かせて! こんな自分のことしか考えないようなやつなんか最低! 最低!!」
 ぽろぽろとその瞳から雫が零れる。肩は小刻みに震え、足元はふらついている。
「お、おい…」
 その肩に触れようとするが、手前で止まった。触れてはいけないもののような気がした。
「あたしが勝手に自惚れて! スウはあたしと一緒にいたいに決まってるって決めつけて! ずっとずっとスウを縛ってきたのはあたしなのに! あたしなんかっ―――」
 フィアの言葉は急に途切れた。

 でも、大切なものが目の前で崩れていくような気がしたから。
 必死でそれを抱き止めた。その儚くて壊れてしまいそうなほど小さな存在は―――。
 オレなんかが触れたら壊れてしまいそうだし、そんな勇気ないから―――抱きしめるなんてことはできないけど。頭をなでてやるくらいはできるから。支えることはできるから。その間は俺の腕が守ってやれるから。
「…ちょっと黙ってろよっ!!」
 フィアは抵抗することもなく、スカイブルーに身体を預けていた。服が濡れている。
「…まず、オレは風邪なんか引いてないから!」
 そう。顔が赤かったのはその、あれだ。
「あと…」
 頬を掻こうとしたが、両手がふさがっていてできなかった。
「…オレにはさ、なんのことかわかんないけど………ひとの考えてることなんて誰にもわかるわけないんだからさ。納得できないなら中途半端でもなんでも…かっこわるくても…追いかける権利はあると、オレは…思う」
 資格とかじゃなくてさ、とスカイブルーは続けた。

 フィアは顔を上げてスカイブルーを見た。

 雨が止んできた。










 その向こうに夕陽が沈む。雲はまだ多くて、その色が見えるのは僅かな切れ目だけだった。真下には、何処までも何処までも群青が広がっている。
 その青い青い海。
 家の裏の奥にある、スカイブルーの秘密の泉。湧き出る冷たい水がこの海に繋がる。ここもスカイブルーの秘密の場所。
 その群青はあの時とは違う、透き通ったやさしい色。
「まだ迷ってんなら…ずっとうちに居てもいいぞ」
「ありがとう」
 海に茜がキラキラと舞う。群青が躍る。
「また来たい」
「いつでも来いよ! いつでもうるさいけどな」
 スカイブルーは ちらっと向こうの浜辺ではしゃぎ回る三匹を横目で見る。
「うん。だいすき」
「だっ!!!?」
「いいところだから。また来るよ」
「あ、あ〜っそ〜だな」
 フィアは裸足になり、波打ちぎわで手を大きく広げた。潮風をいっぱいに受け、大きく息を吸い込む。
 フィアが振り返ると橙の夕陽が背中に当たり、正面は影になった。
「トトーっ!」
 トトがフィアの声に気づいて走ってくる。フィアはスカイブルーに背を向け、浜辺に沿って歩き始める。足跡が残る。波が足を濡らす。
 しばらく歩いて、フィアはスカイブルーを振り返った。

「ありがとうっ」





 その瞳は吸い込まれてしまいそうで、その髪には届きそうもなくて、その肌は壊れてしまいそうで。でも、それは昨日確かにオレの腕の中にあった。
 ただ、そこになかった一番大事なものを今、手に入れた。
 何にもかえがたいその笑顔。かけがえのないその笑顔。
 その笑顔は、反則もんだ。

 スカイブルーは湿った砂浜に手足を投げ出した。茜色がだんだんあらわになってくる。もうすぐ沈む。茜が消えかける。フィアの足跡を、波がさらってゆく。
 フィアは今何処までいったかな。


「フィア――――――――!!」

 その僅かに残る茜の空に向かって。
 立ち上がると、海の塩水に足を突っ込む。波が ばしゃ、と音を立てた。





「大好きだ――――――――――――!!!」










     11 color. ultramarine


11 color. ultramarine

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2009.1.7  05:07:34    公開
2009.1.7  06:37:00    修正


■  コメント (13)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

ふお!!
報告ありがとうございます!

認証コードについては・・・ここで説明するのもあれなので、ぶろぐんの一番上に表示されているところのコメント欄に説明のせておきますね!
めんどくさくてごめんなさいうわあ><))

うまいってわあありがとうございます!だいぶまえにかいたやつなのに・・・!
オリーブは黙ってれば美人なおねーさんなんですよー
小説であらわすのはなかなか難しいですね><

見ましたよ!大人気おめでとうございますっ!!仁のあれてきな血が騒いでおりますが!!あれか!もとバスケ部の血か!(違
助けてくださいってドルフィノさんかわいいっ・・・><**(へんたいめ

ではではっ私も更新がんばりますよ〜♪

09.1.10  15:14  -    (1z0i3n1)

うおおいいあんうおうおおえあんいおえうおいいおうおいああ

「認証コードが正しくありません」

と出て仁さんブログにコメントできなかった…。
うおお認証コードってなんだ(


ルビー上手いですね!
そしてオリーブ!あんな顔だったんですね…。もうちょっと恐い顔だと思ってました…。
本当にブログ羨ましい!(しつこい

ってぎゃああああ!(夜に騒ぐな

だだだだ大人気小説のところにマジで僕の小説出てきたんですけどどうすればいいんでしょう仁さん助けてください(自分で何とかしろ
色んな理由で涙が…

でも僕はいつも通り頑張りますよ!

では!冒頭の荒らしまがいの書き込み失礼しました。

09.1.9  23:52  -  不明(削除済)  (Mariner)

きてくださったんですか西条流月さん!!
なんだかはじめたばかりなのに今更恥ずかしくなってきた仁です←


うわあ失礼しました!情報公開しておいたので、ポケメお願いしますっ!!
やったあ楽しみですーーーーー!!(ちょ、プレッシャーを

09.1.9  20:19  -    (1z0i3n1)

ブログ見ましたよ〜
着物姿のフィアに惚れました(あの表情も良い!)

本題
ポケメール送ろうとしたんですが情報が公開されてなかったので
送れませんでしたので情報を公開しておいてください
そしたら、送りますので
設定はとりあえず、まとめてみたので送れるようになったら、速攻で仁さんのために送らせていただくので
大したものじゃないと思うので期待しないで待ってて下さい(ちょ)
それでは

09.1.9  18:31  -  不明(削除済)  (rutuki)

わああごめんなさい!!こんばんはぴかりさん!
本気でなみっ・・・!?ちょそれはあれえええ!!?
泣いてるぴかりさん可愛(すとかー!

かっこよすぎってすぎってちょ!!ああああの自重皆無のカタマリですよ!?あわわ嬉しくて血涙が(パワーアップしてきた
神返し!!(なにそれ
神はぴかりさんなので間違いのないようっ・・・!!><**
あああフィア大好きって!!仁が嬉しいです!!仁は変人!!(とーとつ

ってああああ!!フィア描いていただけるのですか!?
追い返すどころかレッドカーペットでご招待しますよ!!!あ、お師匠様コート預かりますっ!!(もうすとーかへんじん
ぜっぜひ・・・!!><**喜喜

ではでは・・・!

09.1.7  23:49  -    (1z0i3n1)

ええもう大好きて!!私も思います!←
かっこよすと言っていただけてあああ仁の目から汗が激しく・・・!!でもおまちょ自ちょっ((

はわああぶろぐんきてくださったのですか!!(コメントするとじんが喜びますよ!
いいですよねっ!綺麗な空とかヘンなものとか見つけると撮っちゃうじんですwでも写真部ではないという!
ドルフィノさんと同じ趣味発見・・・!><**嬉嬉

ちょ挿絵あれは遅筆の仁があわあわしながら・・・!!
バランス悪いから今度描き直そうとまで思ってたのにちょ、嬉しいんですが!!><**))
上手てちょfdんckjsがうあkj←しね
こっ・・・心意気ですか?←しねばいい
でもまずドルフィノ師匠には及ばないかと思いますが!><)))

アアアアでは!!

09.1.7  23:34  -    (1z0i3n1)

うわわ!こんばんはヨゾラさんっ!ぶろぐいかれたのですか!!
すごいってちょ、仁がさらに調子に乗りますよ!いいんですか!?
ふわああフィア見てくださったんですか!お持ち帰りおっけーですよ!!Σd(><**リボンはピンクでいいですか!

じんも前置き長いですww
挿絵わあああ!!あのむらむらで遅筆野郎(と書いてチキン野郎(と書いて仁と読む)が混乱しながらいちじかんで仕上げた奇跡(とかいてへぼと読む)うあああ!←もううるさい
褒めてくださって仁の努力(?)が報われますっ・・・!><**

ふわあかっこいいですって二回もっ仁が嬉しすぎであああ涙が!!スカイは基本ヘタレなのに!!ww
!!ギャグセンス皆無の仁がそれはきっと奇跡!(
大好きだーーーって!!ほわわものすごく嬉しいです!!でもその引用は仁の自ちょっ・・・・・・!!><*)))

あああぁぁぁぁぁぁ・・・・では・・・!

09.1.7  23:01  -    (1z0i3n1)

ふぉぉこんばんは西条流月さん・・・!
こんなやらかしてしまったじんにコメントありがとうございますっ・・・!!><**
投稿後ビクビクしてたのでものすごくほっとしました・・・!><))

ほわああの絵を褒めていただけるとは!ガッコのせいで残された時間が一時間しかなく・・実は描いてる時はパニック状態でした・・・><)))遅筆がにくい・・・っ!
でもちょ!さすがに褒めすぎでは・・・!西条流月さんに後光が見える・・・っ!!

スカイブルーがいいやつにみえるのはあれです!すきな人の前ではやさしいとかいう!!←?
でもこれ以上出すとスウの居場所がなくなるきがしますw


PS.について!
裏設定送ってくださるのですか!!Σ(゜∀゜*
わわ!ぜひお願いします!よろしいでしょか><**
ポケメは使ったことないのですがこれを期に覚えようと思います!
最大保管数はいまだ5ですけどねw
うわーー!楽しみに待ってます!!生かせるよう努力します!!

09.1.7  22:30  -    (1z0i3n1)

本気で涙が出ました。仁さんのせいだ!(仁さんのおかげだ!)

こんにちはぴかりですっ前回超変な処にコメントしてたので悶えました。すっすみませ・・!

スカイブルーかっこよすぎじゃないですか・・!最後のセリフの切り出しとか仁さん神すぎですってば!
フィアの成長が目まぐるしくてああ、もう大好きこの子!(何この変態★
あの、追い返してくれても構いませんのでよろしければフィアを描かせていただいたりできませんでしょうか・・!

ではでは!失礼しました><**

09.1.7  20:38  -  ぴかり  (pika)

スカイブルーカッコヨス!て言うか大好きて!

ブログ見ました。わお!(いみふ
空の写真が綺麗過ぎて!ああいう景色は僕も好きです。
いいなぁ僕もブログ欲しいよぉ…ホムペでもいいからさ!(
そのうちコメ欄に乱入するかもです(やめ

んで挿絵っ…!
綺麗過ぎてまたまた僕の変な血が騒ぐじゃないですか!
あなたはどうしてこんなに絵がお上手なの!?(


では!また来ます!

09.1.7  10:43  -  不明(削除済)  (Mariner)

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