ポケモンノベル

ポケモンノベル >> 小説を読む

dummy

その色が奏でるストーリー.

著編者 : 

9 color. gray

著 : 

ご覧になるには、最新版の「Adobe Flash Player」が必要です。 また、JavaScriptを有効にしてください。









 紫苑の中、
 灰色の下で、








「あっ…!」
 フィアは足を止めた。
 光まではまだまだ遠かった。なにしろ南東の郊外なので、今まで向かっていた方角とはほぼ真逆。どれだけ急いでも一時間はかかる距離だ。
 今まで建物の間から見えていた光が、薄れてゆく。
 フィアはまた駆け出した。










 何もない。
 真っ白だ。
 待ってれば、フィアが来てくれるかな。

 いや、誰かいる…?
 フィア?
 違う。

 だって―――あいつの目は、金色のはずだ―――。



 ぼんやりと、意識が戻ってきた。だけど、相変わらず胸がうるさい。辺りはやけに静かだ。
 …俺は…。
 何が起こったんだ…?
 あれ、手が動かせない。

 地面に座り込み、コハクがシオンの両手を、祈るように ぎゅっと握っていた。
「………コハク…」
 声をかけた途端、コハクは ばっと手を放した。顔をゆっくり上げる。
「手っ…手を使えなくしたら…あれは撃てないと思って…」
 泣きそうなコハクの顔が、フィアを思い出させた。
 シオンは立ち上がると、今や1本しかない大木を見上げる。
 その木も葉はすべて焼け落ち、丸焦げになっている。残りの3本は、もう視界には入らない。
「…ごめん…俺がやったんだよな…」
「いいよ別に。シオンのせいでもないし」
 コハクが笑った。


 なんだ? 視線を感じる…。
 コハク、じゃない。
 …どこからでもない視線。

 俺の中の、紫苑の瞳が光っている―――。

 誰だよ、おまえは?
 …まだ暴れ足りないのかよ…!


 紫苑が身体を包んだ。
「シオ…うわっ!」
 風を巻き起こしながら一瞬で空へ昇る。そのまま稲妻を描きながら、シオンは曇天を飛び去っていった。
「どこ行くんだろ…! めぐむ!」
 コハクは竜に飛び乗り、後を追った。










「ひぇ…はら…」
ガシャン!
「ぎゃあ!!」
 コハクが竜からずり落ち、ルリに突っ込む。
「めぐむっ…は、張り切りすぎじゃあ…ありませんかね…っ」
 ピクピクするルリの上で目を回すコハク。自分で指示した技にあてられたようだ。
「どっ…どけっ…」
「え、うわあっ! 王子さまっごめん!」
 コハクは慌てて飛び退く。
 いてて と腰をさすりながら、ルリはコハクに笑いかけた。
「た、助けてくれてありがとな…でも、なんでコハクがここにいるんだ?」
 するとコハクは南東の、かつて4本の大木が立っていたほうを見た。
「うーん、なんていうか…人を探してるっていうか…突然いなくなっちゃって…いや、突然というか…うむむ…」
 曖昧すぎるその答えに、ルリは首をかしげる。
 唸っていたコハクが、んぅ? と顔を上げ、ルリに疑問の表情を向けた。
「王子さま…なんでボクの名前知ってるの?」
「あ、いや」
 ルリはしまった と目を泳がせた。今度はコハクが首をかしげる。
「おいガキ! ブーピッグ討ば…捕獲できなかったじゃねえか!!」
 男がコハクを怒鳴りつける。
「そのうち帰ってくるよ。あのコだって聖獣だし、主もいるもん」
 コハクは男に笑いかける。しかし、男はまったく面白くなさそうだった。
「とんだ無駄足だ! クソっ!!」
 ずんずんと足音を立てながら、男は帰っていった。
「ギリギリセーフでよかった」
 コハクがルリに笑顔を向ける。初めて間近で見たコハクの笑みに、ルリはたじろぐ。
「そっ…そうだ! オレ、フィアを追いかけないと…」
「あ、ボクもシオンが!」
 コハクが急いで立ち上がり、竜に飛び乗った。
「一緒に探そ! 王子さまも乗って!」
「…わかった!」
 竜はコハクとルリを乗せ、飛び上がった。










 フィアは足を止めていた。
 じっと、うつむく。
 建物が邪魔して木は見えない。光も消えてしまった。それに、さっきフィアの頭上を光がまっすぐに通り抜け、上空へ消えた。
 その光が消えた空を見上げると、灰色。それを紫苑が包んでいる。
 紫苑は好きだけど、今は恐かった。紫苑がスウを消してしまったような気がして、恐かった。
 フィアはまたうつむき、両手で顔を覆った。そのまましばらく動かなかった。

「………あたしは弱くて泣き虫で恐がりで…」
 フィアは呟く。
「…誰かに頼ってばかりで…スウに迷惑ばっかりかけて…」
 トトがフィアを見上げている。
 フィアはゆっくり手を降ろした。目は少し赤い。
「スウに会いたい」
 フィアは歩き出す。
「この気持ちだけは…絶対に、迷わないから」
 胸に手を置き、フィアははっきりと言った。
 絶対に、絶対に、会うんだから!
 その時、何か声が聞こえた。その方向を振り返ると、ラピス城がそこにあった。いつの間にか町の中心近くまで来ていた。
「スウかもしれないっ…!」
 フィアはラピス城へと向かった。










 紫苑の光はもう消えていた。消えたというより、どこかへいってしまったと考えるほうが妥当だとコハクは思った。
「コハクコハク! いた! フィアがいたっ!!」
 ルリがコハクの背中をばしばしと叩く。
「たっ叩くなー! どこだよっ」
「あああ見えなくなった!」
「方角は!?」
「あっち!」
「指差してもわかんないよ!」
「ラピス城の向こう!」
 いつの間にか追い越してしまっていたようだ。竜は下降しながらラピス城を通り過ぎる。
「…止まれ!!」
「え!?」
 急にルリが叫んだ。
「なに? フィアって子を探すんでしょ?」
 ルリはラピス城の前の広場を見つめている。そこには何かを取り囲んで人だかりができていた。
 誰かの神獣が、それを攻撃する。
「あっ!」
 ルリは竜から飛び降りた。










「はあっ…はぁ…」
 広場に辿り着いた。息を切らして、フィアはラピス城の近くにできた人だかりに近づく。
「す、すみません、通してくださいっ…」
 フィアは身をよじりながら人ごみの中に入っていった。
「何故こんなところに…」
「恐ろしい!」
 罵倒する声。
「被害が出る前に殺ってしまえ!」
 誰かが叫んだ。フィアはドキリとした。
 誰かの神獣がそれに向けて技を放つ。
「やめてっ!!」
「やめろぉ!!」
 フィアが叫んだと同時に、ルリがそれの前に着地した。
 突然現れたルリに、神獣の攻撃が逸れる。
 フィアはやっと人ごみを抜けた。
「…ルリくん…?」
 ルリの向こうにいたのは





 一匹のフローゼルだった。








 スウじゃなかった。










 今にも降りだしそうな曇天だった。










     9 color. gray

⇒ 書き表示にする

2008.12.27  05:54:14    公開


■  コメント (7)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

ふぁああ!またきていただけるとはぴかりさま(と書いて神様と読むッ!!!

ちょ!一歩手前から切なさを理解していただけるとはぴかりさんの読解力は神の領域超えてますね!!?
かっかっこいい!
なんとうにゃぁ嬉しいです!!なんか新鮮っ・・・!><**

うわああんな不親切な名づけを褒めていただけるとはっっ!!!
仁が躍り狂い出します!!(やめ

ではでは・・私はストーカーしても絶対ばれるばかなので
この世の果てまでぴかり師匠についていくことを決めました((きえうせろ

ではよいお年をーーーっっ!!**><ノ

08.12.29  17:10  -    (1z0i3n1)

こんにちはぴかりですっ

フィアが切ねぇええええええ(ry
変わらない思いがめちゃくちゃかっこよくて切ないですもうほんと・・・
スウと会えるまでぴかりは仁さんをストーカーします!(といいつつ会ってもストーカーしそうだ

竜→めぐむって付けるコハクが可愛すぎです
私の鼻血を返して下さい(ちょま

ではでは!失礼します><**


08.12.29  14:16  -  ぴかり  (pika)

こんにちはドルフィノさん!
うわあああコハクが愛されてるっ・・・仁が嬉しいです!!にっこにこです!

ふぁあいろいろ気にしてくださってるっ
じんが調子に乗って舞い上がってる!!(

ルリはまー前話でコハクのこと語ってるわけですが
この二人は本編完結したあととかにまた番外編で書こうかなーとか・・・とか・・・思ってたりですっ(

!!!いつまでも!?うおおお><**嬉嬉嬉嬉っっ
待ちくたびれさせないよう更新頑張りますね!!

08.12.28  16:46  -    (1z0i3n1)

こんにちは西条流月さん!
ふわああこちらこそ私の要望に答えるようにコメントしてくださり(
ありがとうございます!!

さてさてどうなるかはここではいえないので気にしといてください!!(
というかこれから更新するんですけどねw

ふむぅコハクとルリの出会いは完結したら番外編とかでやるとかやらないとか(いつだ
サブキャラなんでそこは・・・ごめんなさいなのですっ><;

先が気にっ・・・ふにゃああその言葉があるだけでいには喜びの頂点をぶちやぶっております!!
頑張りますありがとうございますっ!!><**

08.12.28  16:30  -    (1z0i3n1)

相変わらずですなぁコハクさん!!(何が
泣き出しそうなコハクも可愛らし(強制退場処分)

ルリがコハクを知ってる理由とか人混み連中の正体とか、気 に な る !
しかしいつまでも僕は更新を待ち続けますよ!!


ではまた!

08.12.28  01:19  -  不明(削除済)  (Mariner)

自分の要望に応えるように更新してくれてありがとうございます
フローゼルとルイはどうなるのか?
スウと会えるのか?
スウに起きた異変とはなんなのか?
凄く気になりますね
コハクとルリの出会いも少し気になっていたりしたり
?マークが多いのは気にしないでください
先が気になりますね
それでは更新頑張ってください

08.12.27  09:34  -  不明(削除済)  (rutuki)

こはくめっちゃタメww

おはようございますみなさんのコメントあんど小説が元気の源じんです(なにそのまえおき
なんでこんなたのしい企画もりだくさんの時期にスランプしちゃってたんだろうと終始地団太を踏み続けてたばかです←

さてさてえええばかの話は世界一無駄な時間ですね(

ぶっちゃけ最初はこの話はつくるつもりなくて
9話でグレンピア編完結かーびみょーだなー
とか思ってたんですが・・書いてたら前話がむっちゃ長くなってこれはやばいときゅーきょgray←究極レイ みたい(なにがだしねばいい

でもほんとは・・もっとフィア×ルリ×コハクをからませたかった・・><
ものすごくばかなことをやらせたかった←
いや、そういうわけではないんですけど、もっとこう・・壁から団子さん兄弟みたいに顔出してなんか覗いてるみたいなっ・・・(なにそのシチュ
なのにコハクとフィアはまだ出会ってもないという><))

あとダイパプラチナわかんないくせに無理に新しいポケモンいれようとしてるいに(

ふぃああとにかく次話でグレンピア編終わりです!今年の書き収めです!
フィアとスウは・・・会えるかもしれないかもしれない・・・(ちらつかせうぜえ
ではっお楽しみに!!><**

08.12.27  06:17  -    (1z0i3n1)

 
パスワード:

コメントの投稿

コメントは投稿後もご自分での削除が可能ですが、この設定は変更になる可能性がありますので、予めご了承下さい。

※ 「プレイ!ポケモンポイント!」のユーザーは、必ずログインをしてから投稿して下さい。

名前(HN)を 半角1文字以上16文字以下 で入力して下さい。

パスワードを 半角4文字以上8文字以下の半角英数字 で入力して下さい。

メッセージを 半角1文字以上1000文字以下 で入力して下さい。

作者または管理者が、不適切と判断したコメントは、予告なしに削除されることがあります。

上記の入力に間違いがなければ、確認画面へ移動します。


<< 前へ戻るもくじに戻る 次へ進む >>