哀れ人
5人目 少年と共に歩む
ご覧になるには、最新版の「Adobe Flash Player」が必要です。 また、JavaScriptを有効にしてください。
「ったく、居ねぇじゃねぇか…」
俺はそんな悪態を呟きながら森の中で少年を探していた。
あの野郎…騙したな!?
俺は手に握り拳を作り、決意する。
「次会ったら仕留めて…」
と、呟いたその時だった。向こうの方を走りぬける姿が目に入った。
…まさか…
俺はハッとしてその影の後を追った。俺の方が足が速い様でその走っていた影にどんどん近付いて行った。
そして、ハッキリ見えた。その影はあの時の少年だった。
「おい!待てよ!」
俺がそう叫ぶも、少年は振り向かずに走って行く。
俺はもう少しスピードを上げて、少年の手首をつかんだ。
少年は恐る恐るこちらを振り向く。俺は呼吸が乱れながらも安心させるべく、声をかける。
「はぁ…はぁ…大ジョーブだ。俺は狩り人だが、お前に危害は加えねぇよ。ただ、俺がビビられてんなら誤解を解こうって思ったんだ」
「……」
「俺はセルア・カーター。…お前は?」
「……」
俺はフッと微笑んで名を名乗る。少年は俯いて黙ったままだった。
そこから暫く沈黙が続く。やっぱ無理かなぁ…
と、諦めかけてたその時だった。
「…フラン・キートン」
と、少年は小さく呟き、名乗った。
俺は暫く呆然としたままだったが、笑って
「いい名前じゃねぇか。宜しくな!」
と、言い、握手をしようとした。…が、その時気付いた。
俺はフランの手首を掴んだままだった。
俺は笑いながら謝る。
「あぁ!悪ぃ!痛かったか?」
「……」
フランは首を横に振る。『そうか』と俺は言うと、改めて右手を差し出した。
フランは俺の顔をうかがう様にこちらを見てきた。俺はコクリと頷く。
フランはゆっくりながらも俺の差し出した右手を自分の右手で握手した。
まだ、怯えてる様子だが、少しは誤解が解けたようだった。
俺は心の中で『ウッシャ!』とガッツポーズを取る。
「あ、送って行ってやるよ。お前の住んでる町、何処だ?」
「………ハリュウタウン」
フランはそう呟く。俺は『任せとけ!』と胸を張り、フランと共に森を出て、ギャロップに乗り、ハリュウタウンへと向かった。
ハリュウタウンは一番人口密度の高い町で、所謂大都会だ。
フランに家の場所を聞き、レンガの家の前まで送って行った。
「んじゃ、またな!」
「……」
俺が手を振るとフランは小さく手を振った。俺はそのまま帰ろうとした。
その時。
「……ありがとう」
と、フランの小さな声が聞こえた。
俺は振り返り、『どーいたしまして!』と笑顔で言い、そのまま基地へと帰って行った。
俺は今日、浴衣野郎の事なんて忘れてしまうぐらいに、とても清々しい気分だった。
2011.8.31 13:59:29 公開
■ コメント (0)
コメントは、まだありません。
コメントの投稿
現在、コメントは受け付けていません。