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「……ハハっ…なーに言ってんだ？そんな不吉な冗談辞めろよー。笑えねーぞ？」
「……」

俺は苦笑しながらそうフランに言った。フランは俯いて黙りこむ。
俺は続けて言った。

「だからあいつ等の勘違いだって『違うってば！！』」

突然フランが今まで聞いた事の無い大声を上げた。
俺は驚いてビクッと反応する。ゆっくり、フランの方を見た。
フランは俯いたまま怒った口調で言う。

「僕は哀れ人なんだ！！ハブネークの…哀れな化け物なんだ！！僕の両親だって哀れ人だから殺されたんだ！！君達狩り人に！！証拠だってある！見てみなよ！？」

フランはそう言って大きく口を開けて俺の方を向いた。
俺はまさか…と思いながらも恐る恐る口の中を見てみる。
歯には八重歯…いや、牙があった。しかも、赤い。血で染めれらたような…そんな赤色。
俺が茫然としているとフランは顔をまた戻して続ける。

「僕は、誰とも接さない様に過ごそうと決めた！！絡まれたとしても腐れ縁にならない様に！！僕は誰とも関わりを持たずに過ごしてきた！！当然誰も優しくしないし、関わりを持とうとしなかった！！そのおかげで僕は静かに過ごせてきた！！だけど！！」

フランは俺の方をバッ！と見て怒鳴った。

「だけど！！君がそれを崩したんだ！！壊したんだ！！君が関わろうとして来たから！！君が…！！」

フランは突然目に涙をためて声を震わせて叫んだ。

「君が…！優しく…！僕と関わりを持とうとして来たから…！！僕はそれに答えずにはいられなかった…！！」


『全部！！全部！！君のせいなんだよ！！』


フランはそう言い残して立ち上がり、洞窟から出て行ってしまった。
俺は静かにその後ろ姿を見つめるだけだった。
暫く呆然として…

「…仕方ねぇだろーが…俺はな……優しくて…！友好的で…！人気者のセルアなんだからな…！」

と、少しばかり声を震わせて呟いた。
泣いている訳ではない。ただ…悔しかった。
フランの気持ちを…気づけずに…守れなかった自分が…
すると、声がした。

「何だか気まずい空気だねぇ」
「……」

顔を上げてみてみると、左手に和傘を持っている美夜の姿があった。
俺は静かに低い声で尋ねる。

「…お前は…知ってたのか？あいつの事…」
「…知ってたよ？情報屋だしねぇ。狩り人の君が仲のいいフラン君が哀れ人って知ってどんな反応するか見てたけど…結構ワクワクするねぇ♪」

バン！

俺はとっさに懐から銃を取り出し、放った。
怒りで手が震えていたせいか、銃弾は美夜の胸部でなく、左肩に当たった。美夜の左肩から血がドボドボと浴衣をつたって落ちていく。
俺はキッと睨み、懐から更にナイフを取り出して美夜に向かった。
美夜は刀を抜いてナイフからの攻撃をカバーする。俺はナイフを動かしながら怒鳴った。

「何で！！何で言わなかったんだ！！お前が言っていれば…あの時森で…お前が俺に教えていれば！！」
「…コンナ悲劇なんて起こらなかったのに？」

美夜は微笑みながら口に出す。そして、フッと笑って相変わらず刀で防御しながら言った。

「ボクハネ…誰の味方でもないんだ。自分の味方。ボクは観客なんだ。人間達の出来事を『観賞』しているんだよ。人間という…映画をね？ボクはただ、すこーしだけみんなの手助けをしているだけ……それに、君はボクのせいだと言ったよね？…だけどね、運命なんだよ。これも。運命はボク等人間には逃れる事のできないモノなんだ」
「何が…」

『何が運命だ！！』

俺はそう怒鳴り散らしてナイフを大きく振り落とす。美夜はかわすが、白い肌の右側の頬に掠って傷ができ、そこから血が出てくる。

「そんなの、言い訳じゃねぇか！！そう言ってお前は逃げてるだけじゃねぇか！！」
「…逃げてるだけねぇ……君だって同類だよ？君だってフラン君の日常に変化を齎した。…それに彼は戸惑っていたはずだしねぇ…君も彼の辛さの原因となっているのさ」

美夜はそう言ってサーナイトを繰り出し、テレポートで去って行った。
…原因…

「……そんな事言ったって…どうすりゃいいんだよ…」

俺はそのまま岩壁に凭れ掛かって、座り込んだ。左足を伸ばし、右足を体育座りにして、膝の上に肘を乗せる。
俺は俯いて茫然としていた。
今日は基地にはとても帰れそうにない。気分も乗らないし…気まずい。
ただただその洞窟には雨が激しく降り注ぐ音が響いていた。


………フラン…お前は何を望んでいるんだ……？