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哀れ人

著編者 : 窮爽

10人目 雨は構わず降り注いで

著 : 窮爽

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「とーちゃく!ギャロップ、悪かったな!ゆっくり休め!」

ハリュウタウンに辿り着き、俺はギャロップを急いでボールに戻す。
雨は激しさを増し、風も吹いて大雨に変わっていた。
俺はバッ!とフランの家目指して走りだす。
勿論街には誰も歩いているはずもなく、ただ雨の音が聞こえているだけだった。
体中に雨が打ち付けるのも気にせずに走りぬける。
そして、フランの家の前に辿り着いた。

ピンポンピンポンピンポン

「フラン!」

インターホンを連打してフランの名を叫ぶ。
もう今では疑うというより、恐怖だった。
もし、何か大変な目にあっていたら…
そう考えると背筋がゾクッとする。
俺はドアノブに手をかけた。すると、ガチャ…と扉が開いた。
開いてる!?

「入るぞ!」

俺はそう叫んで中に入る。俺の歩いた所が水でびっしょり濡れる。
玄関から土足のまま中へと入り、途中で見かける部屋を覗ていった。
オルゴールの部屋には居なくて、ただオルゴールや道具だけが置かれていた。
俺はリビングへと入る。
目に入ったのはスライド式の扉型のガラスが割れていて、そこから雨が激しく入り込んでがびっしょりと濡れていたリビングだった。
テーブルはひっくり返っていて、その上に乗っていたであろう料理が落ちていて皿も割れていた。
ゲッ!

「やべぇ!」

俺は急いで家から飛び出して走りだした。
何処だ!?何処へ行った!?
俺はくまなくフランを探す。時間が経てば経つほど俺の不安は大きくなっていった。俺の心臓の音が大きくなっていく。
すると、向こうの広場で人影が3つ見えてきた。
2つは俺は同僚の奴等。そして、1つは…
フランだった。
あの2人の専門している武器は槍と剣。…なら…
俺は一気にスピードを上げてフランへと向かう。
そして、ガッ!とフランの腕を掴んで走り出した。

「あ!おい!」
「セルア!」

そんな2人の声が背後から聞こえてくる。そんなの俺は知ったこっちゃない。
お前等の勘違いじゃねぇか。お前等が悪いんだ。お前等が何も悪くないフランを殺そうとしたからだ。
俺はただ無我夢中で走っていた。
そして、暫くして森の中へと入って言った。
小さい頃よく秘密基地にしてた洞窟…!
俺は洞窟を探して森の中を走った。そして、その探していた洞窟が見えてきた。
その中に吸い込まれていくように入っていく。
奥へと入り、暫く無言で立っていた。そして、掴んでいた腕をフッ…と離す。

「…大丈夫か?」
「……」

俺が振り返って小さな声で尋ねると、フランは小さくコクリと頷いた。
俺達二人の立っている場所に水が滴り落ちていく。
暫く無言だったが、俺が口を開く。

「……ちょっと座らねぇか?」
「……」

フランはコクリと頷く。
俺達は奥の方に並んで座った。
俺は足をのばして、フランは体育座りで座った。
俺は静かに謝る。

「お前、何もしてねぇのに…悪ぃな。俺の同僚が勘違いしちまって。何の勘違いかはしらねぇけど」
「……僕…」
「ん?」

フランが小さく声を出し、俺は首をかしげた。
フランは俺を悲しげな表情で見ながら言った。

「…ゴメン…僕…嘘…ついてたんだ…」
「…え?」

突然の言葉に俺はそう声を出した。
…嘘…?

「……僕……実は……」

                
                   『哀れ人…なんだ…』

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2011.9.4  22:50:31    公開
2011.9.4  23:02:08    修正


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