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トレーナーとして…

著編者 : まさる

3. 狂った幸せ

著 : まさる

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ポケモンセンターの前。
そこでゴウは、トレーナーの少女の言葉の意味が分からず、
しばらく呆然としていた。

「ふ、不愉快って?」

「…」





ようこそ。ポケモンの世界へ。
君は男の子?女の子?
君の名前は?




少女は、自然豊かな田舎の小さな町で育った。
少女の机の引き出しの隅には、大人気のゲーム機、ゲームボーイが…
中には、ポケットモンスターのソフトが入っている。
そして、少女は縁側に腰を掛け、野生のマンキーと話していた。
もちろん、ポケモンと人間が話せるわけがない。
マンキーに何を言っても、返事は返ってこない。
しかし、少女にとっては、それは話しているということだった。

「私、貴方との約束を果たせないかも…」

『キ?』

「ほら、私がポケモントレーナーになったら、
最初に貴方をゲットするって言ったでしょ?
それが出来ないかもって…」

『キ?!』

「私、ポケモントレーナーのことをよく知らなかったから、
皆がやってるゲームをやってみたのよ。
面白かったわ…
バトルでの頭脳戦も…
ストーリーも…
でも…
貴方が居なかった…」

『キ?』

「私が選んだのはゼニガメ。
結構強かったよ。
すぐにカメールに進化して…
でも…」

少女とマンキーは見つめ合う。

「話せない。
あの子は、いつも背中を見せていて、
あの子の目…
口…
眉毛の動き…
顔の向き…
そんな表情が見えない…いや、ない…」

『…』

「あれは、本物のポケモントレーナーじゃない。
ポケモンは、生きているもの…
貴方も生きているでしょ?
私と何も変わらない…
でね、ゲームじゃ本物のバトルが出来なかったから、
頭の中だけど、貴方と一緒にバトルしてみた。
正直、どうすれば良いのか分からなかった。
どうしたいのか分からなかった…」

『キ?』

「ゲームだとね。
ポケモンに指示を出して戦わせる。
現実でも、トレーナーは指示を出すことしか出来ないけど、
それでも、
トレーナーとして…
ポケモンに出来ることはあるわ…」

『…』

「ごめん。
頭が混乱するようなややこしい話しちゃって…
私にもよくわからない…
でも………
………
…貴方は、バトルをしてみたい?
私がポケモンだったらしたくないわ。
だから、させたくない。
貴方はやりたい?」

『キ?』





「何でバトルをするのかなって思った。
トレーナーも…
ポケモンも…」

「…」

「ゴウは、何でバトルをするの?」

「た、楽しいから…かな?
ポケモンと一つになれる。
一緒に成長するのが楽しいんだ…」

「私もそう思う。」

「え?」

「おかしいよね。
ポケモンが技を使うのは、自分の身を守るため。
バトルするためじゃない。
だけど、トレーナーはバトルをさせて、
それが楽しくて…
あんな激しい戦い人間がやっているのを想像したら、
すぐに酷い戦いだって分かる。
でも、人間じゃなくてポケモンだから大丈夫って皆思ってる。
ポケモン達も、自分は大丈夫って思ってる。
それを当たり前にしたのは、私達人間だと思う…」

「…」

「この当たり前は、変えられないと思う。
私にとっても当たり前だもん。
だから、せめて、
ポケモンのことをちゃんと見て、
ポケモンに自分がやってあげられることを全て出来るトレーナーでいようと思った。
それが今の私。
目的も無く旅に出た新人トレーナー…」

「お前も…」

「そう。
私は、とりあえず旅を楽しむことにしてるわ。
ゴウは、何が楽しい?」

「分からないな…
旅に出たばっかりだし…」

「そうだよね…」

気づくと、二人は知らぬ間に歩きだしていて、
気づくとそこはポケモンジムだった。

「そういえば、何で俺達はジムに来たんだっけ?」

「なんとなく来ちゃったね…」

「いい加減な理由だな…」

「それでも、楽しいわ…」

この世界は、正しくない。
しかし、ほとんどの生き物達は楽しんでいる。
彼らはその内、
今まで話したことをすっかり忘れて、
ただ旅を続ける…

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2017.11.16  19:05:19    公開


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