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短編企画「続」

著編者 : 不明(削除済) + 全てのライター

唄おうか。

著 : yuusuke

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 東に行こうと思った。

 この唄に、思いをのせて。

 ――――――――――
『なあ兄さん、どうしていきなりまた旅に出るとか言いはじめんだい?』
「気分、かな。っていうか当然だろ、俺は吟遊詩人だぞ。唄ってこその俺だよ」
 メガニウムがたずね、そのトレーナーらしき青年がそれに答える。
『何でもいーじゃん、オレは兄貴を乗せてまた走れるってだけで嬉しくてしょうがねえからな!』
『でもそれ、アタシ辛くないしょっぱなから?あんた達はともかく』
 子供のようにはしゃぐギャロップと、呆れた表情のラプラス。

 この彼は、自称・吟遊詩人。そして彼らがそのポケモン達。

 そして、ここはタンバ。ジョウトの西の外れにある街。海を眼前に臨む、潮風吹く街。
 潮風の音をを聞きたいとここに来て一ヶ月。早々に旅立とうとする辺り、彼もまた旅人なのだろう。

『でもいいじゃないまだゆっくりしても。なんで突然言い出したのよ?』
「まーいいだろ?気分だよ気分」
『気分で動かされるこっちの身にもなってほしいわ・・・・』
「ま、まあまあ!ってか早くしないと"間に合わなくなる"からさ!行こうぜ!」
『よっしゃー!早く行こうぜ!俺ウズウズしてきちゃったよ!』
『いいけどさ、まず兄さんはそのふらふらしたがる癖治してよね』
『ホントよねーまったく・・・・』

 唄いに行こうと思った。
 ただ、それだけだった。
 ・・・・本当に?

 ――――――――――
 そして彼らは、唄を、唄い続けた。

 40・41ばんすいどうで、ラプラスと共に海を唄った。
 アサギシティで、港町の盛況を唄った。
 エンジュシティで、雅な情景を唄った。

 そうしたら彼が、「森に行きたい」つまりはヒワダに行きたいと言い出した。
 彼らはやむなく、遠回りして自然の宝庫に向かっていった。

 しぜんこうえんで、むしポケモンの唄を唄った。
 スロンドームで、人とポケモンの絆と情熱を唄った。
 ギャロップと駆けずりまわりもしたので、足がボロボロになったのは言うまでもなかった。筋肉痛で 彼は涙目だった。
 コガネシティで、人々の喧騒を唄った。
 ヒワダシティで、のどかな町の薫りを唄った。
 ウバメのもりで、自然の神秘を唄った。
 メガニウムの騒がしい姿を、ここで見れた。どうやら生まれ故郷を思い出させたらしく、テンション高いこいつを久しく見た。
 キキョウシティで、古きよき町を唄った。
 そして、ワカバタウンで、始まりと終わりを唄った。

 そして、カントーを横断した。
 目的地に、着いたのだ。

 ――――――――――
『やっぱり、ここを目指してたわね』
『シオンタウンのことか?』
『違うよ。・・・・まあ合ってるけど、正確にはここ』
「ああ、ここ・・・・魂の眠る場所、"ポケモンタワー"。俺の親友が眠る場所さ」

 シオンタウン、ポケモンタワー。その一角の前に、彼らは立っている。

『じゃあ兄貴、今日ってつまり』
「ああ、"こいつ"の命日だ。・・・・懐かしいなぁ・・・・」
 と言いながら彼は墓石をさする。
 泣きそうな、懐かしむような、そんな哀しげな空気を纏いながら。

 そして、彼はおもむろにあるものを取り出した。
『・・・・?兄さん、それは?』
「テープレコーダーだよ。こいつが死んでからの唄、全部ここに入ってるぜ。お前らのもな」
『マジかよ!?』
『うわっ、ちょっと恥ずかしいわね、それ・・・・』
『確かに・・・・』
「いいだろ、お前らのことも教えてやりたいしさ!んじゃ、再生するぞ」

 そして、ボタンを押した。


 流れる旋律。溢れる命の鼓動。感じる自然たちの神秘。その場を包み込む、柔らかい心の律動。
 それは、ここに眠る者たちを優しく包む、鎮魂の歌となって響き渡った。

『すごいな・・・・我ながら・・・・』
『ええ、ほんとに・・・・』
『うん・・・・って兄さん?』

 何も言わない彼。

『・・・・兄さん?』
「え、ああ、ごめん。うん、スッキリしたし、出ようか。そろそろ迷惑になるからな」
 テープレコーダーをその墓石に置き、そう言いながら出ようとしたとき、



 ――ありがとう――



 そう聞こえた気がした。
 全員で振り向くが、もちろん誰もいない。
 この声が誰の者かも、もちろん分からない。

 しかし、そんなのはどうでもいい。
「うん、大丈夫、みんな満足してくれたみたいだし」
 彼はそう、微笑みながら言った。
 
 彼らの旅の唄は、届いた。
 さて、次はどこに行こうか。

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2013.3.19  23:59:32    公開
2013.3.20  08:16:34    修正


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