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ひとりぼっちのグレイシア

著編者 : せせらぎ

第八話 陸と海

著 : せせらぎ

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ミント、バニラ、ヒートは深々と生い茂った森の中を歩いていた。
目指すはグラードンの住まう巨大火山だ。
その一帯は常に燦々とひざしが照りつけている為、草木も生えていないそうだ。

ミントは歩きながらぼんやりと物思いにふけっていた。

いまやなきミュウツーが言い残した言葉__
「奴は、全てのポケモンを凌駕している… レックウザでさえ、一対一だと勝ち目は薄い」
この事をヒートとバニラに伝えられずにいる事に、やりようの無い不安を感じる。
しかし伝えたところで、いたずらに希望を削いでしまうだけなのではないのか。

唐突に視界が開け、ミントはハッと我にかえった。
地平線の向こうまで続く広大な荒野__
そこから漂う熱気に思わずゴクリと身構えてしまう。
そしてこの荒野の中央に位置していると思われる大きな大きな火山。
遂に僕は来たのか、この胸の宝石を使うべきところへ。

ミントは振り向いてヒートとバニラにこう語った。
「ヒート、バニラ、いままで一緒に来てくれてありがとう。
だけど、ここからはまた危ない冒険になる。
グラードンを目覚めさせたら、命の保証は、なくなるから。
僕の__両親は、この宝石を持ってここに来ようとした。
今度は、僕がこれを持っていく。 これは、僕の役目なんだ。
だから君たちをその巻き添えにはしたくない。
ここからは僕一人で、グラードンを起こしに行く」

ヒートはふふっと笑うとあっさりと答えた。
「そんなお前が、俺は好きだ。 だから一緒に行くぜっ」
バニラも続けて「もうミントを、ひとりにさせないから」と。

ミントは込み上げる感謝の気持ちで胸が熱くなった。
「わかった、ありがとう、うっ、行こうか…!」

そして僕等は地獄の様な灼熱の荒野へと踏み出した。
__ただしそう感じているのは僕だけだったが。
ヒートは普段よりも活発化してテンポよく歩くし、
バニラに至っては特性により倍の速さになっている。

ようやく火山のふもとまで来た時には意識が朦朧としていて、
頭が半分くらい融けてしまったんじゃないかと思ったぐらいだ。

僕がグッタリしているのに気が付いた元気な二人は休もうかと提案してくれた。
ちょうど日陰になっているくぼみがあったのでそこへ入って休んだ。

しばらく経ってようやく意識がハッキリしてきた時、
近くをうろついていたヒートがブワッと炎を吐いた。
驚いてそちらを見ると、なんとくぼみの奥に穴があるではないか。
そしてそれは炎が止まった途端、また闇に消えた。
「ミント!バニラ!もしかすっとグラードンの所へはここから行けるかもしれないぜ!」

こうして僕らはその穴の中へ入っていった。
先頭でポッポッと火の粉を散らしながら進むヒートの後をついて行くと、
やがて周りの岩が遠ざかっていき、広い空間へと変貌した。

その時、まばゆい光が首にかけている宝石から発し、
僕らは目の前にそびえ立つ灰色に固まったグラードンを見た。
しかしそれも一瞬の事で、グラードンはみるみる赤くなっていく。
「みんな! 戻るよ!」と叫ぶと同時にグラードンの雄叫びが広間にとどろく。

僕らは全速力で穴へと駆けて行ったが、突然グラードンが起こした地震によって
バニラがバランスを崩し、転んで岩に身を打ちつけた。
僕とヒートが反射的に振り向いたその瞬間__
グラードンが辺り一面に飛ばした火炎の塊の一つがバニラめがけて飛んでいる事を察した。
アクアの宝石を身につけているとはいえ、あんなのをまともに受けたらお終いだ。

ミントは振り向きざまに地面を蹴って宙を飛んだ。
「受け止める」

轟音と共に迫り来る火炎の塊__

が、次の瞬間、視界に別の炎の塊が混じる。

ヒートの「フレアドライブ」だった。

そして鈍い音がとどろき、炎が飛び散る。

ヒートはミントの側をかすめて飛んでいった。

ミントは着地するや否やヒートの元へ駆け寄った。

全身黒焦げで地面に倒れているヒートの姿__
「ヒート…!」返事が来ないのを怖れながらも思わず声を掛けてみる。
バニラも息を切らせながらやって来た。「ヒート、大丈夫!?」

続く地震によって空洞は崩壊しかけていた。
上から大小様々な岩石が落ちては砕け散る。
一刻も早く、ここから出なければいけない。

ミントは意を決してヒートを背中に担いだ。
「バニラ!行くよ!」「……うん!」

ヒートを背負った僕と、怪我をしたバニラの移動速度は芳しくはなかったが、
次々と落ちてくる岩を避けながら、出せる限りの力を振り絞って走り続けた。

グラードンから離れるにつれて闇は深まっていき、記憶と勘だけで穴を進む。

後ろから聞こえる崩壊の音はいよいよ激しさの頂点に達し、
突風によって僕らは半ば飛ばされる様に出口へと向かった。

そして遂に、光が見えた。
(ここからまた再開する)
外に出てふと後ろを振り向いたところ、目の前に広がっていた光景に思わず息を呑んだ。
来た時は脅すかの様にそびえ立っていた火山は八割型なくなっており、代わりに炎で真っ赤に輝くゲンシカイキ・グラードンがいた。

グラードンはゆっくりと地平線の彼方を向くと、低く しかし心臓を押さえつける程の重い唸り声を発した。
その方角に目をやってみると不思議な感覚を覚えた。
どうも荒野の色が途中から変わってるように見えたのだ。

「ミント、あれ、水だよね…?」
バニラの言葉でやっと状況が吞み込めた。
なんと、海がそこまで迫って来ていたのだ。

グラードンはそちらへズシズシと歩みだした。

その時、はるか彼方の地平線、否、水平線が眩いばかりに青く光り輝き出した。

その青さには見覚えがあった。
「あれは…」

バニラも震え声で呟く。
「まさか…」

そして3つめの声。
「…カイオーガ、か…」

「ヒート!」
「よかった、生きてたんだ!」

「あぁ、俺は大丈夫だから、行くんだ、奴らの元へ、チャンスは、一度きりだぜ」

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2017.6.24  01:18:39    公開
2021.4.4  15:50:31    修正


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