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ひとりぼっちのグレイシア

著編者 : せせらぎ

第五話 恋敵

著 : せせらぎ

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例の、嵐が吹き荒れていた。
荒れ狂う海の上で、一艘の丸木舟が今にも転覆しそうになっている。
その上にいるブースターとリーフィアが、櫂(オール)をひとつずつ持っていて、
ふたりで息をあわせながら、舟の左右で必死にこぎつづけている。

しかし突然、舟は沈みこんだ。
ブースターも一瞬で海の中にのみこまれた。
もがいても、もがいても、一向に上がれない。

ああ、オレも、これまでか。
このまま死んで、海の藻屑になっちまうんだ。
あああ、だがバニラ、バニラにだけは生きのびてほしい。
そうだ、たすけなきゃ、いますぐオレがたすけなくちゃ!
こうなったら、こんじょうでどうにかしてやるぜ!

ブースターは肺いっぱいに海水を吸い込むと、死に物狂いで泡だらけの海をのぼりはじめた。

そして、ついに海面まで到達した。
口から水をはきだしつつ、あたりを見回した。
嵐のせいで視界はわるいが、近くには舟すら浮いていなかった。
つまり、バニラは海の中にいるということだ。
泡だらけの海の中の視界は最悪で、とうていさがしだせない。
かすかな希望も、消えうせたのだ。
ブースターは絶望して、とうとう力尽きた。

おわった…なにも、かも…

ブースターは海面からしずんでいった。
だが、すぐにものすごい力でわしづかみにされたような感じがした。
そして一気にひっぱりあげられていく。
海面からとびだしてもなお、あがりつづけていく。
意識が遠ざかっていくなかで、かろうじて上を見上げると、そこには大きなウォーグルがいた。
ブースターは声をだそうとしたが、それは頭の中でひびいただけだった。
「たのむ、オレをすててもいいから、バニラをさがしてくれ!
あいつがいない世界なんて、生きてたって意味がないんだ!」
そして、ブースターは、ヒートは、気を失った。


ヒートは、長い 長い 夢を見た。
おさなかった頃の、なにげない思い出。
バニラとすごしてきた、大切な時間。

しだいに、おさなかったバニラがそだってきた。
そして、ポケモンの形をした石の前でなきじゃくるバニラの後ろ姿が見えた。
とてもかわいそうなのに、なにもしてやれない。

それから、森の中にいた。
青い宝石をつけているバニラといっしょに、木をけずっていた。

そして、果てしなく広がる海で、舟をこいでいた。
横には、バニラがいた。

最後に、嵐の中で突然 バニラが、消えた。

「ばにらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
全身をふるわしながら ヒートは飛び起きた。
次の瞬間、ヒートは落ちかけているのに気がついて とっさに何かにしがみついた。
なにやら大きな、鳥の巣のようなものの、はしっこからぶらさがっている。
下をみると、ここがそうとう高いのがわかり、ヒートはあわてて巣の中にもどった。
これが、自分をたすけてくれたウォーグルの巣だとは見当がついた。
だが、そのウォーグルはいない。 巣はからっぽだ。
まわりを見るに、林のすきまから海が見えた。
太陽は上の方にあるから、もう昼になっているらしい。
ひととおり様子がわかったところでヒートはつぶやいた。
「さて…っと…これからどうしよう…
バニラをさがしに行きたいんだが…」
そうはいったところで、ヒートにできることはなかった。
ヒートはひたすら待つしかなかった。


日はだいぶ傾いてきて、ヒートはむしょうにおなかがすいてきた。
「あいつめ…帰ってきたら焼き鳥にして食ってやる…」
もちろん本気で言っているわけではない。
だが、空腹で頭がぼやけているヒートは、変な事を考えつづけた。
「いや…食っちまったら、ここから降りられなくなっちまうな…」



その頃、ワゾーは海の上を飛んでいた。
ミントがバニラに言った言葉が聞こえたようで、こう質問してきた。
「んん、おまえさんらはヒートっちゅうやつをさがしているのか?」
「うん、ブースターだそうだけど、見なかった?」
ワゾーは意外そうな顔をして答えた。
「見たも何も、昨日あらしの中からひろって、今はおいらの巣にねかしているところだぜ。」
それを聞いたバニラが、はじめてワゾーに話しかけた。
「ええ、本当!? あの後にヒートを助けてくれたの!?」
「おう。 何かが嵐の中に向かってったもんだから、助けに行ったのよ。
そいつだけ浮かんでんのが見えたんで、つかまえたんだぜ。」
「で、で、具合はどうなの?」
「あー、あの後はすぐに気絶しちまって、今朝もまだ起きてなかったんで、おいてきた。
とにかく、じきに巣につくからな。 ほおら、陸が見えてきたぜ。」
ワゾーのいったとおり、陸地が見え出していて、ぐんぐん迫ってきた。
そして、そこにあった林の中に飛び込んでいった。
ワゾーは慣れた飛びっぷりで、木々の間をすりぬけていった。
すると、大きな巣がついた木が現れた。
ワゾーはその巣の中に飛び込んだ。
バニラはすぐに、ワゾーの上から巣の中を見回したが、ヒートの姿は無かった。
「ねえワゾー、ヒートはどうしたの!?」
「すみっこでころがっていたんだがなぁぁあああっちいいい!!」
ワゾーの下から炎があふれてきて、ワゾーは思わず跳び上がった。
おかげでミントとバニラは吹っ飛びそうになった。
その間に、ワゾーの下にいたヒートは巣のすみっこに避難した。
「おいおまえ! いきなりオレの上にのっかんなよ!」
「てめぇこそ、いきなりおいらにオーバーヒートだすなよな!」
だが、ヒートは一瞬でワゾーの存在をわすれたかのように、その上を凝視していた。
「…バニラ!?」
バニラはワゾーの上から滑り降りて、いきなりヒートに抱きついた。
ミントはそれを見て、なんだかくやしく感じた。
「ヒート、ヒート、よかった、生きてたんだね!」
「バ、バニラ、あいたかったぜ。よく生きてたなぁ。」
「あのあとにね、ミントくんがたすけてくれたんだ。ほら、上にいるグレイシア。」
ヒートは驚いたようにミントを見上げた。 そして目が合った。
「あ、あいつが、例の…」
「そう、マグマの宝石だって持ってるのよ。
魔の海域の中にある島にずーっといたんだって。」
「あの宝石さえあれば、レックウザが呼べるな。世界を救えるかもしれないのか。」
「うん。 カイオーガはもう起こしてきたんだ。
ミントが、あたしの代わりに行ってくれなかったら、あたしきっと死んでたよ。」
「そうか…二度もたすけてもらったのか…」
「それに、このウォーグルのワゾーさんがヒートをたすけてくれたのも、
ミントに対するつぐないをしたかったからなんだって。」
ヒートはぎょっとしてワゾーを見つめた。

こいつがあの、ワルゾーと呼ばれているやつだったのか。
思っていたよりは悪い奴ではなさそうだ。

ヒートにじっと見つめられたワゾーは、ふと思いついたようにこういった。
「そうだ、おめぇ、はら減ってるだろ。 木の実をとってくるぜ。
どうせそろそろ、ゆうめしの時間だしな。」
ミントが巣にとび降りると、ワゾーはすぐに飛んで行き、林の中に消えた。
ミントがふとヒートを見ると、また目があってしまったので、
とりあえず挨拶をすることにした。
「ヒートくん、はじめまして。」
「あ、ああ… おまえ、ミントっていうんだよな…」
それからミントは、いままでのことを話したりして、ときを過ごした。


そのうちに、ワゾーが木の実を沢山もってかえってきた。
目の前にころがった木の実のやまを見て、ヒートが歓声をあげた。
「ひゃっほお! ようやくメシにありつけたぜ!」
言い終わらないうちに 近くにあった赤っぽい実をつかんで、さっそくほおばり始めた。
バニラも続いてヒメリの実をとって食べだした。
「朝に ミントにとってもらったオボンの実をたべたっきりだから、もうペコペコだよ。」
ヒートとバニラが食べているなか、ミントはただ木の実をみているだけだった。
ミントが食べるのを待っていたワゾーが、不思議そうにきいてきた。
「おまえさんは食わねえのか? 具合でもわりぃのか?」
「あのね… 心配なんだ… パパと、ママに、会うのが…」
「それのどこが心配なんだ?」
「あれから十年も経っちゃって、僕はずいぶん変わっちゃったから…」
「それでも、見たらわかると思うぜ。 その宝石をとっててもな。」
「うん…どうだろう… それに、性格もだいぶかわってると思うから、
わかってくれたところで、うまくつきあえるかどうか…」
じっと聞いていたバニラが、ミントのそばに寄ってきてこう言った。
「だいじょうぶだよ。 ミントはとってもやさしいから、だれとでもうまくやれるよ。」
そしてバニラはミントの背中をさすってくれた。
「ほら、元気をだしてたべなきゃ。 ミントだっておなかすいてるでしょ。」
ミントはふと、ヒートが自分をにらみつけていることに気がついて、
あわてて木の実をひろって口にいれた。
それでバニラがミントから離れると、ヒートはようやく、視線を木の実に戻した。


あたりがすっかり暗くなってきた頃に、やっと木の実のやまはなくなった。
ワゾーがあくびをしてからこう言う。
「そいじゃあ寝るとすっか。
ここにみんなで寝るのは狭いけど、まあ、なんとかなるだろ。」
それにヒートが異議を申し立てた。
「夜中にまたつぶされたんじゃかなわないぜ。
オレは下で寝る。 ミントもそうした方がいいぞ。」
ミントは すこしぐらい乗っかられたっていいからみんなと一緒に寝たかったのだが、
せっかくヒートがそういってくれているのだから、ことわるのはわるいと思った。
「うん… わかったよ。 僕も下で寝るよ。」
バニラは不満そうだったが、一緒にいくことにした。
「ミントもヒートも下で寝るんなら、あたしも行く…」
ワゾーは、申しわけなさそうにこういってくれた。
「だったら、おいらだけ下でねるよ。」
ヒートはすぐにきっぱりと断った。
「いいんだ、それじゃあワゾーを追い出しているようだしな。
それじゃあさっそく下ろしてくれよ。」
ワゾーはしかたなく三人を乗せて下に連れて行ってくれた。
そして じゃあな と言って巣に飛んで帰った。
下も、枝さえどければ、落ち葉のおかげで十分にやわらかかった。
三人はじきに横になって、ねむりこんだ。
ミントは昨日寝ずの看病をしていたから、あっという間に眠った。



「おい、起きろ。」
ミントは眠い目をこすりながら起き上がった。
あたりはまだ暗い。
木々のすきまから差し込む星あかりで、ヒートの姿がぼんやりと見えた。
「話がある。 ついてこい。」
そういって、ヒートは歩き出した。
ミントもしかたなくついていった。
しばらく林の中を、黙って進み続けた。


海辺の、ひらけた砂浜にでた。
そこでヒートは立ち止まり、振り向いてミントと向かい合った。
「ミント、おまえは、バニラをどう思ってる。」
ミントは、やはりその事か と思ったが、よくわからないふりをして答えた。
「どうっていわれても…」
「嫌いなのか。」
「そんなことないよ、好きだよ。」
「だろうな。 だが、オレからバニラをとろうったって、そうはさせないからな。」
「とるだなんて… バニラがどっちを好きになるかなんて、バニラしだいでしょ。」
「バニラは…おまえを、えらぶだろうな…」
「な…なんでそう思うのさ。」
「バニラを見ていてわかったんだ。 オレはしょせん、親友にすぎない…
だが、おまえを見ている時のバニラは、それ以上の親しみを感じさせられた。」
「そんな… 気のせいだよ…」
「いや、オレはずっと、ずっとバニラを見続けてきた。
オレだから、わかることだ。
バニラは、おまえが好きなのさ。」
しばしの沈黙。

ヒートが声を荒げてわめきだした。
「だからさあ! オレからバニラをとらないでくれよ!
あきらめて、どっかにいってくれよ!」
ミントは困ったような、恨むような目つきで、ヒートを見るだけだった。
「そうか… おとなしく、ひいてはくれないんだな…」
「僕だって、バニラが好きなんだから、ひけっこないよ!」
「じゃあ、しかたない。 バトルで決めよう。 どっちが、ひくか。」
「そ、それはよしてよ… もっと話し合おうよ…」
「話してすむことじゃないんだ! やらないんだったら、いますぐ消えろ!」
ミントは、それでもじっとしつづけた。

すると、ヒートが突然炎をまとってミントに向かって走ってきた。
ミントはなんとかよけきった。
「ちぃ、おまえけっこう速いな!」
ヒートはすぐにもどってきて、ミントの近くにくると、あたり一面に炎をまきちらした。
ミントがよけるのに、大きく空中に跳び上がった。
そしたらヒートが火炎放射をうってきて、それがミントにかすった。
「あつ!!!」
アクアの宝石があったらこんなにも痛くなかったのに、と思った。
そしてどさっと地面に落ちたところで、ヒートがまた炎をまとって走ってきた。
ミントは戦う覚悟を決めて、ヒートに冷凍ビームをはなった。
ヒートはよけようとしたが間に合わずに直撃し、すこし吹っ飛んだ。
だが、効果はいまひとつだ。
すぐに立ち上がって、また火炎放射をうってきた。
ミントはふぶきを起こして迎え撃った。
雪をはらんだ一陣の風が、火炎放射を包み込んで、さらにヒートに吹きつけた。
そして間をおかずにそこに冷凍ビームをうちこんだ。
…はたして当たったのか?
雪が舞い落ちると、氷付けになったヒートが見えた。
完全に氷に覆われているようで、ピクリとも動かない。
ミントは急に心配になってきて、ヒートのそばに駆け寄った。

すると突然、ヒートがすさまじい炎をまとって飛び出してきて、ミントに直撃した。
ブースターの特性、こんじょうがはたらいた上でのフレアドライブは、強烈の一言だった。
ミントは空中高く吹っ飛ばされていった。
「へ、ざまあみろってんだ!」
ミントは海に落ちた。
そして、浮かんでこなかった。
「ちぃ、やりすぎたか…」
そういってヒートは海に向かって歩いていった。
海の手前まで来ても、いまだに浮かんでこない。
「おい、マジかよ…」
そして海の中に一歩、足を踏み入れた途端、足元がこおりついた。
次の瞬間、目の前の海からミントが飛び出して、氷のつぶてをうちまくってきた。
足を固定されていたヒートはよけようもなく、体中にあたりまくった。
つづいて激しい氷の息吹をくらわされ、ヒートは足下の氷ごと砂浜に吹き飛ばされた。
痛みにうめいている間に、ミントが走ってきて上に乗りかかった。

ミントも相当無理をしているようで、すっかり息があがっていた。
「ヒート… これで… 満足か… 」
ヒートは答えずに目を閉じた。
そこでミントはヒートの上から降り、となりに座り込んだ。
しばらくはヒートをじっと見つめた。
そしたら、ヒートが震えているのに気がついた。
「ヒート、だいじょうぶか?」
ヒートの目から、だんだん涙があふれてきた。
ミントはヒートの背中をさすってあげようとしたが、ヒートはその手をはねのけた。
「やめろ! おまえなんか、だいっきらいだ!」
そう言ってミントと距離をとった。
「やっぱり、おまえは、オレから、バニラをとるんだ!
オレは、ずっと、ずっと、バニラのために、生きてきたのに!
ひどいよ、ひどいよ、命だってかけて、がんばってきたのに!」
そして、頭を砂にぶつけて、泣き出した。
ミントはただただ困惑して見ていた。

ヒートの気持ちは、痛いほどよくわかる。
ずっとバニラにつくしていたのに、とられてしまうだなんて。

ミントは罪悪感で吐きそうになった。
目の前でヒートは体を震わせながら泣き続けている。

僕は、こんなにも悪い事をしてしまったのだろうか。
これ以上は、耐えられないよ…

「ヒート… ごめん… 僕が… ひくから…」

ヒートは驚きで目を見開いてミントを見つめ返した。

「じゃあね… さようなら…」
ミントはそう言って、後ろを振りかえって歩いていった。

ヒートはぼんやりしながら、ミントの後ろ姿を見送った。
ミントも泣いているのか、涙が落ちたように見えた。
そしてミントが林の中に消えてもなお、ヒートはその方向をじっと見つめ続けた。



ミントはワゾーの巣の下までもどってきた。
そしてバニラの寝顔を眺めた。
バニラとも、これでお別れだ。
いままで以上に、バニラがとてもかわいく見えた。

僕は本当に、去ったほうがいいのだろうか…
バニラは、僕の方が好きだって、ヒートがいっていたじゃないか…
なのに、僕が去ってしまってもいいのだろうか…
…だけど、もしもそうしなかったら…
ヒートはまた泣きまくるんだろうな…
しかも、僕をうそつきよばわりするかもしれない…
去るって言っておきながら、留まるのはうそつきだよね…
バニラだって、ヒートが悲しむのはいやだろうな…
ヒートはいままでもバニラをささえていたんだし、これからもそうするだろう。
じゃあ、 行くか。

ミントはようやくバニラから目を離して、ワゾーの巣を見上げた。

随分と高いところにつくったものだ。
途中で落ちたら、どうなってしまうやら。
それで、バニラに看病してもらえるんなら悪くないかもな…

意を決したミントは、地面を蹴って跳び上がった。
近くの木の幹について、また跳び上がる。
さらに高い、別の木の幹について、またまた跳び上がる。
そしてワゾーの巣の中に飛び込むことに成功した。
ワゾーは驚いて眠りから覚めた。
「お、おまえさん… まさか、ここまで跳び上がってきたのか? ぶったまげたぜ…」
「ねえ、ワゾー、僕、早くパパとママに会いたくってしかたがないんだ。
まだ朝になってないけどさ、いますぐ連れて行ってくれないかな?」
本当の理由ではないが、うそでもない。
バニラをなくしたミントは、また別のぬくもりを求めていたからだ。
ワゾーは憐れむような目でミントを見てから首を縦に振ってくれた。
「おまえさんの頼みだったらなんだってきいてやるぜ。
だが、あの二人はこのままにしておいてもいいのか?」
「ヒートとは話がついてるからだいじょうぶ。」
「そうか… じゃ、さっそく行こうぜ。」
「うん、ありがとう、ワゾー…」
ミントがとび乗ると、ワゾーはすぐに飛び立った。

じきに林の上に出た。
目指している方向の地平線のあたりが、うっすらと明るくなっている。
もうすぐ、夜明けだ。



ヒートはとぼとぼと、林の中を歩いていた。
せっかくミントがひいてくれたというのに、素直に喜べなかった。

ああ、ミント…
おまえだって…バニラが好きだっただろうに…
十年間、ひとりっきりで…
やっと出会えたポケモンと…
別れてしまうなんて…
今思えば、思うほど、おまえはいいやつだった…
もし、島に流れついたのが、バニラじゃなくて、オレだったとしても…
おまえはきっと、必死になってみてくれたんだろうな…
ああ、ミント… 許してくれ… オレが… わるかった…

林がだんだん明るくなってきた。
ヒートはワゾーの巣の下のところまで戻ってきた。
バニラはもう起きていて、ヒートをみるなり駆け寄ってきた。
「ヒート! もう、どうしてみんなでいなくなっちゃうの!?」
ヒートはしばらく、ぼんやりとバニラを見続けた。
「ねえ、ミントとワゾーはどうしたの?」
「行っちゃったんだよ…」
バニラがショックをうけたように立ちすくんだ。
「どうして… 行ったの?」
ヒートにはとても答えられなかった。
ヒートが黙っているのを見て、バニラが辛そうにこう言ってきた。
「あたしが… 足手まといだったのかな… だって… 
いままでずっと、あたしはミントに助けられてばっかり…
役になんか、たってあげられなかったんだもん… 
ミントはなんだって一人でできちゃうから、
あたしなんかにできる事なんてなかったんだもん…」
「それは、違う…
たとえ、力では支えられっぱなしだってさ…
ミントの心を支えていたのは、バニラ、きみなんだよ…」
バニラは驚いたようにヒートを見つめた。
「じゃあ、どうして、行っちゃったの?」
「…ミントは… とても優しいから…」
やさしいから、オレをあわれんで、行ったんだ…
だが、そんな事を言ったら、きっとバニラに嫌われてしまう…
「そっか… あたし達が巻き添えをうけないように、ひとりで行ったんだね…」
「なあ、バニラ… 
このままミントを放っておいたら、いけないと思うんだ。
ミントは、確かに力は強い。
オレ達の出番なんて、ないのかもしれない。
だけど、あいつの心は、とっても弱い。
心を支える柱がみんななくなった時、ミントの心は崩壊してしまう…」
バニラは深刻そうな面持ちで聞き続けている。
そこで、ヒートが結論を下した。
「ミントを、さがそう。」

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2015.7.16  03:53:40    公開
2015.7.23  23:12:40    修正


■  コメント (9)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

ランス様、初めまして。
お母さん以外のゲストの方のコメントは
初めてなので、とっても嬉しいです!

さて、ミントは優しすぎて損をしがちです。
だけど、それがヒートに伝わったからこそ、
ヒートはミントを放っておけなくなりました。
たとえそれがバニラを取られる事になっても。

ヒートははじめ、勝てると思って
戦いを挑んだのでしょう。
まさか相性の有利なミントに、負けて
しまうなんて、思ってもいなかったのです。
だから、二重のショックで泣いてしまった。

コメントありがとうございました!
失礼します。

15.8.2  00:45  -  せせらぎ  (Seseragi)

初めまして。ランスといいます。
ミント君優しいですね。ヒート君の方が子供っぽい気がします。自分からバトルをしようといったのに、負けたらなくなんて…

15.7.22  21:09  -  ランス  (ゲスト)

ココロちゃん、
ようこそお運びくださいました!
一気に読んでくれてありがとう!

僕は小説を書くのは初めてのド素人です!
なぜこんなに褒めらているのか、
自分でも摩訶不思議でございます。
さらに、いままでは、
「初めてにしては良くできている」って
感じに言われていただけだったけれど、
なんと、小説をかいて何年か経っていたと
してもとても上手いだなんて、初めてです!
ちなみに僕は、「ライトノベル作法研究所」
っていうサイトで少し勉強しているだけです。
いかに読者のココロをつかむのか、
かなり参考になっています。
実際にココロちゃんをつかめたみたいだし!

全然上から言われていると感じないし、
そうであっても気にならないから、
これからも良かったらコメントしてください!

なんとなく昔かいた小説(?)を思い出しました。
「ケーキの木」(概略)
ある日、お店で謎の種を買いました。
植えてみたらあら不思議、
ケーキの実がついたのです。
それを片っ端から売りさばいて、
大金持ちになりました。
ところが、冬になり、
木は寒さで弱っていきます。
そこで、暖かい国へと引っ越しました。
ケーキの木はまた元気になりました。
そして、前にもましてたくさんの
ケーキを実らせました。
それを売ってますます金持ちになって
主人公(誰だっけ…)は嬉しいし、
安いケーキを食べられるお客さんも
嬉しいし、暖かいところにこれた
ケーキの木も嬉しいです。
おわり

あははは、変な話だね。
ようするに、みんなハッピーに
終わらせるのが僕のやり方なんだ。
だけど、それを引き立てるために、
途中は徹底的にいじめるので、
次回あたり、ピークがきます。
ふふふ、なんかおそろしいね。
ではでは、
またのお越しをお待ちしております。

15.7.19  04:03  -  せせらぎ  (Seseragi)

やっとせーくんの小説にありつけたよ…とココロです。
ここまで一気に読ませてもらったよ。
せーくんは小説を書き始めて何年か経っているのかな?それとも初心者?どっちにしてもとても小説を書くのがうまいね…!
私としては三匹で仲良く過ごしてほしいのだけれど、やっぱりそれぞれの立場上、上手くいかないんだね…
ヒートの気持ちも、ミントの気持ちもどっちも強くて、二匹の気持ちがひしひしと伝わってきました。これもせーくんの腕前だからわかることなんだね…私もこんな小説が書けるようになりたいな。
なんかすごく上からものをいう形になっちゃったけど、すごく続きガキになるね…無理しない範囲で、最新頑張ってね!

15.7.18  22:16  -  不明(削除済)  (kokoro)

うおおおおおおおおぉ、
雨ちゃんが来てくれたぁ!

そんなに上手いですか!?
無我夢中で書いているんだけど、
今ミントの目線なのか、ヒートの目線なのか、
それとも客観的に見ているのか、
自分でもよく分かりません…

小説半ばにして、ようやくバトルが
できました。 これからは色んな敵と
戦いまくらせるつもりです。
ミントの技は、冷凍ビーム、ふぶき、
氷のいぶき、氷のつぶて に決まりました。
実際はこんなんじゃバランス悪いね。
だけど、あくび とか うそなき などは
なんだか使いにくくって落とした次第です。

さて、次回は大物が出てきます。
乞うご期待!

15.7.18  14:20  -  せせらぎ  (Seseragi)

うおおおおおおお≡┏( ^o^)┛

雨鷹が来ました〜

やっぱりせー君の小説は上手いわ……
こんなの僕には書けないよww

ヒートかっこいいね! 水が苦手な筈なのに海に落ちてもバニラを探すなんてww

そしてミントとヒートのバニラ争奪戦……バトル描写も上手くて想像力がすごい働いたよww 恋する男子は素晴らしい!(何言ってんだこいつ)

ミント………バニラを諦めたのかな?そしてミントを追いかけることを決意するヒートとバニラ…続きが楽しみな展開だねw

では更新お疲れ様〜

15.7.18  08:24  -  不明(削除済)  (Kyuukon)

ゆーちゃん、早速きてくれたね!
初めて恋の話を書いたもので、出来ばえは
どうかなって心配していたけど、
ゆーちゃんが燃えたっていうんなら、
よく出来たんだろうなって安心します。
だって、恋などはゆーちゃんの
得意とするところなんだよね。

さてと、次回は両親との再会です。
近頃は毎晩パソコンで続きを書いていまして、
キーボードを見ないで打てるようになりました。
まさか僕に出来るようになるなんて意外です。
小説を書くきっかけになった、
ゆーちゃんにいつも感謝してます。

今回の表紙絵はじっくり時間をかけて描きました。
絵の勉強なんてさっぱりしていないけれど、
ネットの可愛い絵をたくさん見て参考にしました。
ミントは十二色色鉛筆の限界で色がしっくり
こなかったけど、笑顔を気に入ってもらえて
よかったです。 バニラはあと1、2割くらい
大きくしたほうがよかったなって思ってます。

15.7.16  19:22  -  せせらぎ  (Seseragi)

それから!前の表紙絵もやわらかいタッチで素敵だなと思ったけど、新しい表紙絵もすごくいいと思ったよ。ミントの笑顔がかわいい!ポケモン描くの上手ですごいなあ。私もそれくらいうまくなりたいです。
ではでは。

15.7.16  15:14  -  夕暮本舗  (LoL417)

前回はミントがヒートを探すことを決意し、今回はヒートがミントを探す。。かぁ。。
ヒートのやったこと(長年の片思い、尽力を盾にミントに身を引かせたこと)は決して正しいことではないけれど、気持ちはわかるし同情しちゃうな。長い間ずっと想い続けて、けれどそれゆえバニラからは親友にしか見られなくて。そして突然現れたミントにおいしいところ持ってかれると思ったら、まあそういう奪い合いになっちゃうのも無理がないかな、と思います。絵本のようなタッチと思いきや、そういう愛憎劇が出てきて思わず燃えてしまいましたwww
もし、流れ着いたのがバニラじゃなくてヒートだったら。そういうパラレル的な展開も考えると楽しいなあ。けどミントはバニラでもヒートでも、親切にしたんだろうな。だってとっても優しいポケモンだから。
ではでは、なんか感想なんだか妄想なんだかわからないものになってしまいましたが、、無事ミントと再会できるといいなあ。ミントとヒートもちゃんと仲直りできるといいな、、

15.7.16  15:11  -  夕暮本舗  (LoL417)

 
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