ポケモンノベル

ポケモンノベル >> 小説を読む

dummy

ひとりぼっちのグレイシア

著編者 : せせらぎ

第二話 孤独の島

著 : せせらぎ

ご覧になるには、最新版の「Adobe Flash Player」が必要です。 また、JavaScriptを有効にしてください。

ミントは森を歩いていった。
とても静かで、時折 風で葉っぱがこすれあう音がするだけだ。

大きな木の手前で立ち止まると上を見上げた。
食べ頃のオレンの実がたくさんついている。
そのひとつにねらいを定めてから、木のみきにむかって 後ろ足で地面をけってとびあがり
みきに前足をあてたあと すかさず後ろ足をつけて さらに高い枝に向かってとびだした。
宙返りをするように さかさになったまま 枝についていた実をくわえてもぎとり、
ゆっくり回転しながらおちてゆき、やわらかく地面に着地をきめた。
そして何事もなかったかのように オレンの実を食べはじめた。
少食のミントにとって、朝ごはんはオレンの実 ひとつで十分だった。
しかし、なんら急ぐ理由もないミントは それを食べきるのにだいぶ時間がかかった。
食べながら、このあと何をするかをかんがえていた。
そうはいっても、この島で出来ることなんてあんまりない。
山であるくか、浜ではしるか、海でおよぐか…
なんにせよ、夜までにはつかれきることをするつもりだ。
そうした方が あの夢を見ないですみやすくなるからだ。
ようやく食べ終わってから立ち上がると、
近くのくさむらに しなびたオレンの実が落ちているのが目にはいった。
多くの人は そんなものに興味を示すこともないだろう。
しかしミントにとっては、到底ほおっておくことができないことだった。
近づいてにおいをかぎ、それから少しかじってみた。
「うん、だいじょうぶだね。たべてあげようか。」
なにもミントが、いじきたない訳ではない。
ミントはその実をたべながら、数年前の事をおもいだしていた。



自分に、崖から落ちる勇気なんかがないことをさとったころだ。
いきなり死ぬのがこわいのであれば、餓死をするほかはない。
ミントは断食の二日目をむかえていた。
やっぱり おなかはすいて苦しいんだけど、
こころのいたみに比べれば我慢できるとおもっていた。
孤独は、とても とても 辛い。もう、やめたかった。
ミントは天国なんて信じてはいなかったけど、
地獄にいるよりは、どこにもいない方がマシだとおもっていた。

おなかがすくのは まだ我慢できていたのだけれど、
のどがかわいてしまったのは耐え難かった。
水だけなら…と、せせらぎ までちからなく 体をひきずるようにして歩いていった。

そうして やっとのおもいで、小川のそばによこたわった。
そして水を飲む。水が、こんなにおいしいとはおもってもみなかった。
まだ、生きているんだなぁ…と、感じた。

次第に日が高くなってきた。
体じゅうが熱を帯びたように熱く、さらにとても重くなってきた。
重さのあまり、つぶれてしまいそうだった。
それで吐き気がするほど気持ち悪いのに、吐けるものも なさそうだ。
ふいに、寝続けていられなくなり、たちあがった。
体は 地面にへばりつきそうなほど重たいのに、
よろめきながらも、歩かずにはいられなかった。

しばらく歩いたミントの目の前に、しなびたオレンの実が おちていた。
深くかんがえることもせずに、それを口にいれてみた。
ただただ おいしかった。
それなのに涙がとまらない。
「ああ、また、できなかった…ミントのよわむし、どうしてそんなに、よわいんだよぉ…」
それから僕は、死ぬことをあきらめた。



ミントはやっと、ふたつめの実を食べ終えた。
あれいらい、ミントは食べ物をとても大切にしてきている。
しなびていたって、それすらを食べられない人がいるかもしれない。
それなのに残したりでもしたら、なんだかとても申し訳がないのだ。
やっと ものおもいからさめると、なにか ちいさく鈍い音がきこえてきた。
はっ としたミントは、突然 早足であるきだした。
ぐんぐん山を登っていき、ついには山の頂上が見えた。
大きな岩があり、その上が この島で一番高いところだ。
ミントは身軽に岩の上までかけあがると、すぐに辺りをみまわした。
予想通り、ずっと遠くだが 嵐が起こっていた。
水平線の一部が ぼやけていてみえなくなっている。
それから ミントはずっと ずっと、その方向を見続けた。
嵐が来るかをみはっているわけではない。
あの嵐のなかで、いままさに 苦しんでいる人がいる気がしてならなかったのだ。
だったら せめて、見守っていてあげたい。
実は、誰かがいるであろうことには理由がある。
ここらへんは 魔の海域 とよばれているというのに、めったに嵐が起こらない。
なぜか。人が来た時だけ、それを狙うかのように嵐が起こっているとしか思えなかった。
みんなこわがって滅多にこないから、嵐も滅多に起こらない。
ところで、嵐が起こる度に見ているミントだから分かったことだが、
全方位で嵐が観測できたのだ。
つまり この島は、魔の海域 の、いわば台風の目のようなところにあるらしい。
だから これまで 海を渡って逃げようとも思わなかったのだ。
もう、今も目の前で暴れ狂っているあの嵐に巻き込まれたくはなかった。


嵐は長いこと降り続き、ついには夕暮れがせまってきた。
そして次第に、嵐はおさまっていった。
そのとき、ミントは 何かが 見えた気がした。
慌ててよく見ると、海に何かが浮いているようだった。
全身が、ぞっとするような感じがした。
あれがポケモンだとしたら、まだ生きているのだろうか。
暗くなったら もう見つけることはできないだろう。 永遠に。
「まってて! 今すぐ、助けに、いくから!!」

⇒ 書き表示にする

2015.7.2  23:47:57    公開
2015.7.24  02:27:29    修正


■  コメント (2)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

ゆーちゃん、コメントありがとう!
僕の経験って、教科書にのせられる
ほどのものなのでしょうか。
あらすじから察しはつくと思いますが、
流れてくるのはリーフィアちゃんです。
ミントに多大なる影響を与えます。
ちなみに、何気なく今回の文中には
せせらぎ、夕暮、という単語を入れました。
見つからなそうだ と
見つからなさそうだ の
違いを考えていたら訳が分からなく
なってしまったので、
別の言い回しに変更しておきました。
もっと語学力を磨きたいものです。

15.7.3  12:40  -  せせらぎ  (Seseragi)

自殺の方法で特に難しいのは、自ら餓死を選ぶことだと思います。徳を積んだ僧などは自ら仏となるため、修行の一環としてそのような死に方を選んだ、という話はよく聞きますが。
食料がないならともかく、食べられるものが周りに溢れているのにその欲を断ち切って餓死をするのはとても難しいことでしょう。ミントもそれに断念したからこそ、現在は命のありがたみや恵みがわかっている。なんだか、教科書にでもなりそうな話だなぁ。
そして、海の向こうに流されているのは…生き物?ポケモン?
この出会いが、ミントの人生を大きく変えるものになるような気がします。ミントのいる島の秘密も気になるところです。
ところで、最後の行から2行目、「見つからなそうだ」を「見つからなさそうだ」にしたほうが自然かも?余計なお節介ごめんね。執筆、お疲れ様でした。

15.7.3  10:57  -  夕暮本舗  (LoL417)

パスワード:

コメントの投稿

コメントは投稿後もご自分での削除が可能ですが、この設定は変更になる可能性がありますので、予めご了承下さい。

※ 「プレイ!ポケモンポイント!」のユーザーは、必ずログインをしてから投稿して下さい。

名前(HN)を 半角1文字以上16文字以下 で入力して下さい。

パスワードを 半角4文字以上8文字以下の半角英数字 で入力して下さい。

メッセージを 半角1文字以上1000文字以下 で入力して下さい。

作者または管理者が、不適切と判断したコメントは、予告なしに削除されることがあります。

上記の入力に間違いがなければ、確認画面へ移動します。


<< 前へ戻るもくじに戻る 次へ進む >>