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ひとりぼっちのグレイシア

著編者 : せせらぎ

第一話 別れの大嵐

著 : せせらぎ

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「やだ! やだやだやだ! もうこの夢は見たくない!!」
夜のように暗くなってしまった空。
この世の終焉を告げているかのような激しい嵐。
時折 光が落ちて雷鳴がとどろいた。

下にあるはずの海面すら見えないというのに、
そこに ひとかたまりのポケモンたちが飛んでいた。
いや、半ば飛ばされていた。
ウォーグルに乗っていたブラッキーが 嵐の音にかき消されないように叫んだ。
「おい、ワゾー! お前、この海を飛ぶのは初めてか!?」
ワゾーと呼ばれたウォーグルが叫び返す。
「そうだけどよ! それが何か!?」
ブラッキーの隣にいたエーフィが テレパシーであたりに話しかける。
『確かここらへんには、魔の海域 と呼ばれている所があるはずです。
 知っている人なら、必ず避けます。』
それをきいたウォーグルの顔はひきつり、飛び方がぎこちなくなった。
そしてますます風に飛ばされていく。
ブラッキーとエーフィの間にいたイーブイがおびえだした。
雨にぐっしょり濡れたイーブイは 振り落とされないように必死にしがみついていた。
そして 赤い宝石を首からさげたエーフィを見上げると震えながらこう言った。
「こわいよぉ ママ…」
エーフィは 半ばやさしく、半ばきびしい顔を向けてテレパシーをだした。
『ミント、これから、なにがあっても、生き抜くのよ。』
いつもは大丈夫、と言ってくれたエーフィの言葉に
イーブイはいよいよ泣き出してしまった。
嵐の中で泣いても、音も 涙も 伝わらなかったが。

「嫌だあああああ!!」
一匹のグレイシアが眠りから覚めて飛び起きた。
あの嵐に 濡れたままであるかにように、冷や汗でぐっしょりと濡れている。
その胸には、エーフィがつけていた赤い宝石 がかかっている。
しばらく呼吸をととのえてから、グレイシアは話し出した。
「ミント、おちつくんだ、あれは十年もまえのことだから…。」
それに答えるかのように続けた。
「わかってるよ…そのぐらい…。」
そして、おぼつかないあしどりで 小さなほらあなから外に出ていった。

すぐ近くにある きりたった崖のふちまで歩いてから そこに腰をおろした。
見下ろすとはるか下の方に岩場があって、落ちたら死ぬのは明白だ。
ミントがヘマをして落ちることはなかったが、内心うっかり落ちたらいいと思っていた。
だからこんなことをつぶやいたのだろう。
「ああ、僕にあと一歩だけこの景色に向かって歩き出せる勇気があればいいのに…
 僕は、僕はおくびょうだからそんな事できっこないのはわかってるけど…」
こんなこわい崖だけど、景色は素晴らしかった。
青々とした森があって、その先に 海が果てしなく広がっている。
ここから周りを一望することはできないが、
ミントはこれが無人島であることをとっくに知っている。
十年前からずっと住んでいれば隅々までみつくしてしまうものだ。
あれいらい、ミントは誰ともあったことがない。
水ポケモンも 虫ポケモンも 鳥ポケモンでさえも会ったためしがない。
ミントはただただ孤独な十年をおくってきたのであった。
ふいにミントは声を震わせながらこういった。
「誰かにあいたいよ、誰かと話したいよ、誰かに抱きしめられたいよ…
 もう、ひとりぼっちはいやだよう…」
そして一人 静かに泣き出した。
ミントは、涙もろかった。
誰かに慰められることもなく、泣き続けた。
落ち着くまでないてしまうと、ミントは目をとじてあの後の事をおもいだそうとした。
しかし、記憶はとんでいて、次にいたのはこの島の浜の上だった。
いつかパパのブラッキーが教えてくれたことだが、
人は気絶すると数分前の記憶までなくなってしまうという。
まだ脳に記憶が定着していないからだそうだ。
だからあのあとで、気絶するほどの事があったのだと思う。
それから島についていたわけなのだが、空はすっかり晴れ渡っていたので
体温も十分あったのに、なぜか体がうまくうごかせなかった。
あれは麻痺をした時の感覚だった。
つまり、おそらくみんな 雷にうたれてしまったのだろう。
ポケモンは雷にうたれたぐらいで死にはしないが、
幼かったミントと、電気抜群のウォーグルは気絶するだろう。
ウォーグルが気絶すればみんな海へと落ちてしまう。
そして荒れ狂った海に落ちた後は、気絶していなくても
もう何も出来ることはなかったはずだ。
それにしても、おさなかったミントがなぜ生き延びたのか。
いつの間にママの宝石をミントがつけていたのか。
あと、どうして海を渡ったたりしていたのか。
なんでここら辺は 魔の海域 であるのか。
ミントにはわからないことが沢山あるが、教えてくれる人はいない。
それでもどうしても気になることがあった。
「パパは、ママは、あれから、どうしたの…
 会いたいよ、また昔みたいに、くらしたいよ…」
ミントは口の中にしょっぱいものを感じながら、
立ち上がってふりむき、崖をあとにした。

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2015.7.1  19:05:32    公開
2015.7.24  02:04:43    修正


■  コメント (6)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

泡雪さん、はじめまして!
小説を書くのは初めてですが、今回の
アイデアはもう出来上がっております。
お名前は、空色のイーブイのコメントのところで
既に存じ上げておりました。
僕の小説を見に来てくれてありがとう!
前もって教えておいた初友達のゆーちゃんは
もちろん来てくれましたが、泡雪さんに
たまたま見つけてもらってとても嬉しいです!
泡雪さんも、孤独な経験をなされたのでしょうか。
僕は一時的だったけど
完全な孤独を味わった事があります。
なんども死のうとおもったりもしました。
だけど、いつかは友達が出来る事を夢見て、
こうして生き続けることにしたのです。
良かったら、泡雪さんともお友達になりたいです。
その場合はポケメール送ってほしいな。

感想もありがとう!
テーマは孤独…と温もりです。
温もりの方を描けるかが心配なのですが…。
10話程で完結しちゃいますけど
たのしみにしてくれてありがとうね!

15.7.3  00:15  -  せせらぎ  (Seseragi)

せせらぎ様、はじめまして。泡雪と申します。
タイトルに引かれてここまで読ませて頂きましたが、本当に小説をお書きになられるのは初めてでしょうか?それくらい、お上手だと思います。それに比べて私の初期の頃など酷いものでした。

それでは、感想を述べさせていただきますね。
えっと、テーマは「孤独」でしょうか?私も孤独がテーマの小説は書いたことがあります。ミントの母と父はどうなってしまったのか…。まだまだ序盤のため、謎が多いですがこれからも楽しみにしております。

更新お疲れ様でした。
それでは。

15.7.2  21:37  -  不明(削除済)  (yukine)

ゆうちゃん! コメントとっても嬉しいです!
僕に文才なんてあるんでしょうか!?
いままでそんな事、思ってもみませんでした。
ミントの気持ちをわかってくれてありがたいです。
半分くらい僕の気持ちなんですけどね。
孤独はなんとか表現できていると思いますが、
出会いやふれあいを えがけるかが心配です…。
具体的にどこをどう感じたのか教えてくれて
大変ありがたいです! さすがですね!
(ゆーちゃんのを初コメにしたかった…)

15.7.2  15:43  -  せせらぎ  (Seseragi)

せーくん、こんばんは。初小説、読ませていただきました。
この文才、初めてとは思えないです!(なんだか偉そうにごめんね)
10年という長い年月を、一人ぼっちで無人島で過ごすミントの孤独がひしひしと伝わってきます。特に自分で会話を続けるところ。。話し相手が欲しくてしょうがないんだろうなあ。最初から一人だったんじゃなくて、昔両親に愛された記憶があるからこそ辛いんだと思うと胸が締め付けられます。
今後、ミントはどんな出会いがあるのか、、期待してます!更新頑張ってね。

15.7.2  01:40  -  夕暮本舗  (LoL417)

ピカピカさん
っていうかお母さん、
いつのまにか記念すべき初コメ
をしてしまうなんて困るよー。
直接話せるんだからー。
しかも催促だけって…

15.7.2  00:26  -  せせらぎ  (Seseragi)

早く次読みたいです。
楽しみにしています。

15.7.2  00:12  -  ピカピカ  (ゲスト)

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