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「エスパータイプ？なんでだ？」

ヴァイオレットの言った事を俺は繰り返した。

「今までのポケモン達の殺され方からして、とても他者が直接手を加えてるように見えないものがあるわ。例えば…」

ヴァイオレットが言うと、続けて口を開いたのはセレンだった。

「心臓麻痺」

「そう。心臓麻痺なんて、他の人がどうこう出来る殺し方じゃないでしょう？
あとは、自殺もあったかしらね。」

「じゃあ尚更なんでだよ？それでエスパータイプとは断定出来ないんじゃ…。」

すると断言するようにヴァイオレットは問いかけた。

「なら…強力なサイコパワー、即ち念力で相手の意思を自在に操れるとしたら？」

「外側から脳に命令を下す…ということ？」

「セレンちゃん、その通りよ。並のポケモンならまだしも…強力なサイコパワーを持つポケモンなら相手の意思を奪い、自在に操る事だって可能なハズよ。」

「…催眠術で、意思を奪う。そしてそこに命令を下す？」

「そうよ、ギル君。そうすれば、自然だと思わない？」

それもそうだ。犯人がエスパータイプなら、出来ない話ではない。
セレンの方を見ると、彼女もこくっと頷いた。


「まぁ、あくまでも仮設に過ぎないのだけどね。」

ヴァイオレットはふぅ、と一息ついた。

「いや、ヴァイオレットの言う説は充分に信憑性があるわ。そうでしょ？ギル」

「おう。今までその発想は無かったからな。意思を奪い脳に“心臓麻痺で死亡しろ”“自殺しろ”と命令を下す…。なら首を切り落とされたり八つ裂きにされてるのとかは、犯人が直接手を掛けてるとみて間違いねぇな」

「なら、これからはエスパータイプには要注意よ」

セレンは素直に納得した。俺も納得してないことは無いが、一つ引っ掛かることがあった。




ならば何故俺達をサイコパワーで殺さない？


催眠術をかける者を一度見たことが無いと駄目なのか？いや、それなら街や村のポケモンを皆殺しなんて不可能だ。


取り合えず口には出さず、自分の中で閉まっておくことにして俺は目を覚まさせるようにぶんぶんと頭を振った。


「ギル君、セレンちゃんも…もしよければ次の街まで一緒にどう？私は被害の確認などもしたいの。もし無事の者がいるなら…。」

「ええ。私は構わない。ギル、どう？」

セレンは即答するとすぐさま俺に応えを求める。まぁ、拒否る理由も無いわけだけど。

「いいぜ。」

「決まりね。改めて宜しく、ギル君にセレンちゃん。」

俺達三人で次の街を目指すことにした。少しでも希望が見えたのだ。

俺達はそう目星を付け、また再び歩き出した。



それでも、いつ殺されるかはわからない。気を引き締めて行かないとー






「あっれぇ？ヴァイオレットじゃん？何やってんのぉ？」

ふざけた甲高い声が前方から聞こえてきた。
ヴァイオレットの顔がキッと引き締まる。

そいつは子供の様にケタケタと笑いながらこちらへ近づいてきたのだ。

「貴方こそ何をしているの…。グロリア」

そこに来たのは一人のパンプジンだった。

「何をって？さぁー？何だと思うー？」

そいつはまた無邪気にケタケと笑うと俺とセレンを交互に見た。

「へぇー、貴方達おふたりさん、見ない顔だねぇ。名前は…聞かなくてもいいかなぁ」

グロリアと呼ばれたパンプジンは、元いた場所に踵を返したかと思うと、ピタリと止まる。

「貴方、いったい何がしたいの…」

ヴァイオレットが言いかけたその時だった。



「みぃ〜つけた★」

きゃはは、っとまたも子供の様に笑うとガサガサと草むらに隠れていたポケモン…バネブーを髪の毛のような腕で引っ張り出した。

そのバネブーは「ひっ」と小さく悲鳴をあげるとカタカタと震えだした。

「ヴァイオレット、貴方さっきあたしに何をしているか聞いたよねぇ？あたしはねー…」

そこまで言うと、グロリアはありえない行動に出た。

「てめぇ！！何しやがるんだ！！」

俺が叫んだ時には、グロリアはバネブーに手を掛け首を締め付けていた。

「あ…が…た、たす…」

バネブーは涙目でこちらに助けを求める。こいつは何馬鹿な事をしているんだ？
ヴァイオレットは驚いたような顔でグロリアを見ている。

俺はセレンの呼ぶ声を無視してグロリアに向かって行った。

が、彼女は消えるように俺をかわすとひたすら首を絞め続けた。


「あははははははははははははは！！」

グロリアはひとしきり笑うと彼女はバネブーを投げ捨てた。既にぐったりとしていた。手遅れだ。


「あたしはねぇ…こんなことをしてるの♪」

新しく買ったオモチャが面白くて仕方無い、そんな風に目を緩めてグロリアはこちらを振り返った。






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バネブーに首とかあるのというツッコミは待ってませよ((

取り合えずこれからもキチガイがいっぱい出る。そんなお話です。