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「はぁ…村からたいぶ離れたわね。」
「ああ。少し休むか。」

セレンはこくっと頷くと、俺の前に腰をおろす。
すると、セレンが口を開いた。

「なぁギル、これから…どうすんの？」
「…」

今、俺とセレンは村を出て走り続けていた。あそこにいると狙われると考え、今はこの事件の全貌を知るために隣町を目指している。

もしかしたら、別の場所でも同じようなことが起こっているかもしれない、と。

「とりあえず、今回の事件のことを調べよう。犯人を突き止めるんだ。」
「うん」
「こんなクソみたいなことしたヤツ…俺は絶対許さねぇ。」

…とは言ったものの、何か宛があるワケでもなく、手がかりが見つかったワケでもない。

「まだ先は遠いな。」

だけど、必ずこの事件を終わらせてみせる。

絶望の連鎖を、断ち切ってみせるー


「ねぇギル…何か…聴こえない？」
「え？」

セレンはそう言った。よく耳を澄ます
。



『…ハァ…ハァ…』

誰かの、声。
何かに追われてるような、切羽詰まった声が。

その声は徐々に大きくなり、こちらに近づいてくる。

「これ…声だ…」
「私もそう思う。」

するとその瞬間、ガサガサっと茂みが動いたかと思うと、ポケモンが出てきた。そのポケモンは間もなくバタっと倒れた。

種類はビビヨンだ。


「わっ！ちょ……もしかしてこのポケモンが声の主なのかもね。」

「ああ。でも、意識を失ってるみたいだな…。どうする？」

「どうするも何も、助けるに決まってんでしょ！なんか、怪我してるっぽいし。それで、話を聞こう。」

「おう！よし。セレン！俺はオレンのみとオボンのみを採ってくる！お前はそのビビヨンを頼む！」






「…ま、こんなもんか。」

ある程度オレンのみを採り、オボンのみも見つけることが出来た。

いくつものきのみを手に、俺は来た道を引き返した。



*「アイツは…」






「おーいセレン！採って来たぞ！」
「ああ、おかえり。採って来たの、貸して。後は私がするから。」

俺は言われた通りセレンにきのみを渡した。セレンはきのみを潰し、慣れた手つきで薬を作る。

「そういうの…出来たんだな」
「お前ブッ飛ばすぞコラ」

これぐらい出来るっつーの、と言いセレンはまた作業を始める。




「よし…こんなもんかな。」


セレンは完成した薬をそのビビヨンに飲ませた。

「大丈夫かな。ちゃんと調合したけど…。」




「…うぅっ……」

すると、そのポケモンが目を覚ました。

「！起きたみてーだな」
「あの…キミ…大丈夫か？」

セレンが話しかけた。


「生存者…いたんだ……！……あっ…ええっと、ありがとうございます…。なんかご迷惑を…」

「ああ！気にしないで。当然のことをしたまでだし。私はセレン、よ。」

「そうそう。気楽にいこうぜ。あ、俺はギルな！」


「セレンちゃんに、ギル君…。」

そのヒビヨンはぼそっと繰り返した。

「…素敵な名前ね。私はヴァイオレット。」

「あ、おうっ」

「早速なんだけど…ヴァイオレットはどうして、あんな苦しそうだったの…？」

「ああ……。それは……私の住んでいた町のみんなが殺されたからよ。私も殺されると思ったから、逃げてきたの。それが、一週間前。」


「「み、一週間前！？」」

「ギル、それって…」
「ああ…。」

一週間前ーそれは俺達の村で事件が起きた日と、同じ日。



「もしかして…ギル君とセレンちゃんも…？」

「ああ…。みんな殺されちまったんだ。それでどうしたやいいかわからなくて…。」

するとヴァイオレットが言った。

「私はこの一週間…町から逃げ出して、この事件のことを調べていたの。あくまで仮説や推測に過ぎないけど…それでもよければ、話すわ。」

「本当かっ！？」
「ヴァイオレット、お願いっ！」



「ええ。私の推測なんだけど、まず…犯人は恐らく二人以上。」

「何でなんだ？」

「明らかに一人じゃあ無理があることが多すぎる。まぁ…一人かもだけどね。それと、重要なことなんだけど…犯人は恐らく………




“エスパータイプ”」