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残り24時間。

著編者 : ダンゴムシ

とあるロケット団の少年の話

著 : ダンゴムシ

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突然だが、皆はロケット団について疑問に思ったことはあるかい?
そう、どうやってあんなに人を集めているのかって。
答えを言おう。ポケモントレーナーを雇いまくってるからだ。

ポケモントレーナーとして、ジムリーダーを倒し、ポケモンリーグまで辿り着く者は、当然ながら一握りの人しかいない。途中で旅を諦める人の方がほとんどである。だが、自分の地元から離れたところで一文無しになってしまい、帰れなくなってしまったトレーナーが稀にいる。そんなトレーナーを雇っているのが、ロケット団なのだ。

俺の主人もそのうちの一人だった。旅を始めて数か月後、地元のシオンタウンから遠く離れた山のふもとで、あるロケット団員に勧誘されて、主人は黒ずくめの衣装に袖を通すことになったのだった。

因みに俺は、主人が3年前にロケット団に入ったときに、支給されたズバットがゴルバットに進化した者だ。ロケット団に入ったとき、手持ちにいたポケモンは没収されて、その後俺らが頑張って捕まえたポケモンたちは、みんなボスに献上しなければならなかったから、主人は俺しか持ってなかった。

そうやって不本意ながら、主人は三年間の間衣食住を悪の組織に頼り生きてきた。

さて、話を今日に戻そう。と言いつつも、いつも通りの起床に始まり、いつも通りの質素な朝食を食べ、今日もポケモンを捕まえるために出かける準備をしていた。その時、
「全団員に告ぐ!只今より緊急集会を行う!直ちに集会所に集合せよ!」
という連絡が入った。何事かと思いながら、主人は集会所へと足を運んだ。
集会所には大きなモニターがあり、その向こうでは現ロケット団のリーダー、アポロがあたふたと準備をしていた。
「何だろうな。」
「誰かなんかしたんかな?」
「だって緊急集会だなんて、いつ以来だ?」
と他の団員の会話を聞いていると、アポロの準備が整ったようで、「静粛に!」との声が響き渡った。
「ロケット団の皆さん、今日は皆さんにお伝えしなければならないことがあります。もう聞いた人もいるかもしれませんが、明日の午前7時ごろにこの星に隕石が落ちてきます。そして私たちは全員滅びます、、、。皆さん。今日一日の行動は、自由とします。自分の好きなように過ごしてください。通常業務がいい人はいつも通り、勤務にあたってもらっても構いません。それでは、良い一日を。」
そう言って映像は途切れた。その後、すぐに集会所は大混乱に陥っていた。

自分の部屋に戻った主人は、自分の引き出しの中から小さな携帯を取り出した。それはロケット団から支給されたものではなく、主人の両親が旅立つときに授けてくれたポケギアだった。主人はそのポケギアの電源を入れた。画面には、99件を超える受信履歴が表示された。全て主人の両親からのものだった。主人は、ポケギアの電源を落とし、椅子でうなだれてしまった。
「、、、僕は、どうすればいいんだろう。、、、3年前から、親の連絡を全て無視して、何も伝えないでこの組織に入った。悪いこともたくさんした。、、、そんな奴がどんな顔で親に顔見せるってんだよ、、、。」
主人は、この一日を使って親に会うかどうかをすごく悩んでいたのだった。
「ゴルバット、、、お前はどう思う?」
知ったこっちゃねぇ。お前が考えろよ。そう思った俺は目を閉じたまま返事をしなかった。
「、、、ちぇ。冷たいなぁお前は。、、、はぁ。」
主人は優柔不断な性格が出てしまった。俺らは、昼ご飯の時間になってもアジトから外に出れなかった。

お昼ご飯の時間になっていつもの食堂に行くと、そこには食堂のおばちゃんも含め誰もいなかった。アジトに残っているのは俺らだけだということを示唆していた。
「やっぱり皆、自分がしたいことをするために動いてんなぁ、、、そりゃそうか、だって今日しかないんだもんな。」
そう言った主人は外に出た。近くのスーパーで売り残されていたカップ麺を二人で食した後、俺の上に乗っかってコガネシティへと移動した。
まずは、ジョウト地方から脱出するためだった。

すぐにリニアモーターカーの駅に行って、ヤマブキシティ行の電車を待った。俺らは一時間も待たされたが、乗ってからはあっという間にヤマブキシティへと運んでくれたので、夕方になる前に、ヤマブキに到着した。
そこから、シオンタウンまではそこまで距離はなかった。俺の上に主人が乗りながら道案内したので、シオンタウンには日が暮れるまえに着くことができた。
俺は、この街に来るのは初めてだった。確かに主人が言った通り、街は厳かな雰囲気に包まれていた。日が暮れていくにつれ、得体のしれない恐怖に体包まれていくのを感じ、俺はボールの中に入ろうとした。が、主人が
「待ってくれよ。僕は今一人でいれるほど、気持ちが強く持てていないんだ。もうすぐ家に着くから、それまでそばにいてくれよ。」
そう、主人が言った。ほんと、ヘタレな野郎だ。と思いながら、主人の後ろをついて行った。

主人の言う通り、目的地にはすぐに着いた。ごく普通の一軒家だった。だが、主人はなかなかインターフォンが押せなかった。ほんと仕方のない野郎だ。じれったいことが嫌いな俺は、勝手にインターフォンのボタンを押した。
ピンポ〜ンという音が家中に鳴り響いて、すぐに主人のお母さんらしい人が出てきた。俺が主人に怒られようとしているところだった。

「、、、ジュン、、、?」
俺の足を掴んでいた手を離した主人は、そのままうつむいて、黙り込んだ。
「ジュン、よね、、、。」
「、、、、、、」
「、、、とりあえず、中に入りなさい。そこで、色々聞くわ。」
「、、、それはできない、、、。僕は、もうこの家の扉の向こうに足を踏み入れることはできない。それくらい酷いことを三年間してきたんだ、、、。」
「、、、、、、」

今度は、お母さんが黙ってしまっていた。

「これ見てよ!この胸にRのマークがあるシャツ。そうだよ!僕は音信不通にしてる間、ロケット団に入って活動してたんだよ!だから、二人だけじゃなくて、色々な人やポケモンたちに迷惑をかけ続けた3年間を過ごしてたんだよ!、、、そんな一家の恥みたいな息子をさ、家に入れるなんて、、、普通に考えたら、おかしいと思わない?」
「、、、、、、」
「、、、だからさ、今日はそんなバカな息子だったんだよってのを伝えに来ただけなんだ。、、、それじゃ、僕は行くよ。いままでありが」

「バカじゃないの!!!!!」

そう口に出したのは、お母さんだった。
「お前が3年間どんなことをしてたかなんて、二の次、三の次の話に決まってるでしょうが!私たちは、音信不通で行方不明だったお前が戻ってきてくれた。そのことだけで十分なのが分からないの!?」
「!」
「お前が間違えだと思うことを沢山していたとしても、こんなこととなっては、どうにもできないことでしょう?お前が全部の責任を負わなくていいの。バカな息子?そんなの昔から知ってるわよ!どんなにお前が酷くけなされようと、お前はうちの大切な一人息子なんだよ。そんなの、追い出すわけないでしょ!」

お母さんは泣きながら、主人に説教した。主人も堪え切れず、涙を流していた。

「人生に失敗は付き物なのよ、それにとらわれていちゃだめよ。お前が、失敗に気づけたのなら、また、一からやり直せばいいじゃないか。違う?」
「、、、母さん。」
「?」
「、、、ただいま。」
「、、、はい、おかえり!」
「、、、、、、か、母ああさああぁぁあああぁぁあんん!!!!!!!!」

主人は、貯めていた思いが破裂して、子供のように泣きじゃくった。
お母さんも、久しぶりにわが子を抱きしめることができた幸せを噛みしめながら、主人に負けない勢いで泣きまくった。

その後、俺と主人は家に入れさせてもらった。お母さんは俺のことももちろん受け入れてくれ、家にあるもので最大限もてなしてくれた。
さらにその後、お父さんらしき人が家に帰ってきた。一瞬、主人を見て硬直したが、すぐに主人に駆け寄り、抱きしめた。主人は少し嫌がっている様子だったが、お父さんはめちゃくちゃ嬉しそうな笑顔をしていた。
さらにそれから、俺らのために豪華な夕食をご馳走してくれた。主人にとっては、3年以上恋しがっていたお母さんの手料理。ものすごい勢いで平らげていった。それを見た俺と二人は、顔を合わせて笑ってしまった。
それからそれから、主人たちは色んな話をした。俺も入りたかったのだが、ゴルバットの言葉じゃ人間には伝わらないので、聞くばっかりだったが、主人が俺の自慢をいっぱい話してくれたから、まぁよしとすることにした。

その話は日付が変わっても続けられた。いつしか、主人は眠くなってしまったようで、両親と俺におやすみと言って、自分の部屋に入っていった。

その主人の顔は、これまで俺に見せたどの顔よりも、すがすがしい顔だった。

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2020.5.2  15:18:23    公開
2020.5.17  21:32:38    修正


■  コメント (4)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

KOHAKUさん
コメントありがとうございます!
オンライン帰省いいかもですね!親孝行は大切だという心構えは持ってるんですがね、、、(笑)
なかなか実践できていないので、私も頑張ってみようかなと思います!
次回も頑張ります!

20.5.2  23:00  -  ダンゴムシ  (tailback)

LOVE★FAILYさん
コメントありがとうございます!
今回は、息子への愛にあふれた親の姿を描いてみようと思いました。主人も勇気を振り絞って帰省できたことに、すごく意味があるのではないでしょうか。
次回も頑張ります!

20.5.2  22:57  -  ダンゴムシ  (tailback)

め、目から滝のような汗が…!
私も実家に帰りたくなりました(´;ω;`)
いま流行りのオンライン帰省でもしようかな…笑
親は大事にしようと改めて思わせてくれる素晴らしい作品でした!
次回も楽しみにしています!

20.5.2  20:52  -  KOHAKU  (sian331x)

行き場を失って悪の組織ロケット団の一員となってしまったゴルバットの主人、3年間音信不通になった事や、これまで自分が恥ずべき事をしてとても悔やんでいた事を両親に話すのは普通は躊躇いがちでしょうけれど、そんな彼の事にとても理解してくれる両親はとても優しいですね……
次回も楽しみにしています!

20.5.2  20:02  -  LOVE★FAIRY  (FAIRY)

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