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残り24時間。
やけに運のいい日
著 : ダンゴムシ
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ぼくが目をさますと、まだとなりでデルビルは寝ていた。先におきたほうがもう片方をおこすというルールが決まっていらい、はじめてこいつよりも早くおきた。やったーっ!と声をはり上げそうになるのを必死でおさえて、いつものうらみをはらす思いで、こんしんのたいあたりをデルビルにおみまいした。
「ちっくしょう、今日はまけたのか。まけるとこんなにくやしいし、いたいのか。」
「わかった?いつも君が思いっきりかみついてくるの、あれめちゃくちゃいたいんだよ!」
「あぁ、わりぃわりぃ。」
よし、これで明日からのかみつくが、かむくらいまでおちたと思う。あ、でも今日のでおこって、もしかしたら、かみくだくになってるかもしれないけど、、、
そんなことを考えながら、ぼくは空を見上げた。今日も、やねとやねのあいだのせまいすきまから見えたのは、きれいな青空だった。
昨日とってきた木の実を朝ごはんとして食べて、神さまにおいのりをしたあと、今日も二人でまちへととびだしていった。
ぼくらが住んでいるコガネシティとよばれるまちは、とっても大きなまちで、いろんなものがそろっているでぱーとっていうものがある。ぼくらはでぱーとに行くまでにウオーミングアップをして、向こうで人間と毎日死とうをくり広げていた。ある日はやさいをぬすんだり、ある日は魚をぬすんだり、なんとかしてその日の食べものをとっていた。
でも、今日はなにかおかしかった。いつもモップでぼくらをたおそうとしたやさいのおっちゃんは、ぼくらを見てもなにもしなかった。いつまでもぬすんだぼくらを追いかけてきた魚やのおっちゃんは、ぼくらを見つけるとなにか言っていたけど、特に追いかけても来なかったから、ぼくらはひょうしぬけしてしまった。
ぼくらはぬすんだ食べものをかついで、ぼくらの住みかに帰っていた。
「なぁ、コラッタ。」
「どうした?」
「今日のあいつらおかしかったな。おれらを追いかけてくることも、モップでたたいてくることもなかったんだぜ。」
「たしかにな。いつもだったらほかのデルビルにすら怒ってるあのおやじらが、そろいもそろってぼくらを見のがしたんだ。」
「そうだよなぁ。昨日なんてさぁ、、、、あ、やべ。」
ん?どうした、デルビル?とぼくが言う前に、前方からゴーリキーの奴が姿をあらわした。
あいつは、少し前からこのまちのいえを作りに来ている。いつもぼくらを見かけたらいみもなくぼくらをぼこぼこにする。タイプあいしょうがいいからって、ぼくらを仕事のストレスはっさんに使っているのだ。
ぼくらは一目さんに逃げ出そうとした。そのとき、
「お前ら待ってくれ!」
とゴーリキーが叫んだ。その声があまりにも大きかったので、ぼくらは反しゃ的に止まってしまった。ぼくらがおそるおそるふりかえったときには、奴はぼくらの目の前まで来ていた。
「もうかんべんです!やめてくださ」
「ビビるんじゃねぇよお前ら。今日はお前らに謝りに来たんだから。」
「へっ、ゆるしてくださ、、、ん?」
「だから、今まで色々とお前らに酷い思いをさせて来たことを謝ろうと思ってさ。今まで悪いことしてすまなかった!」
と言って、ぼくらの前でふかくあたまを下げた。
「そ、そ、そんなに、し、しなくても。ぼくらは、ぜんぜん、いいですよ。ね、デルビル。」
「そそそ、そうだよなぁ、コラッタ。ゴーリキーさん、も、もう俺ら、気にしてないですよ。」
「本当か?良かったぁ!それじゃあな。お前ら。」
と言って、ゴーリキーはいそいだようすで走り去っていった。
そのばにのこったのは、いまだに目の前で何がおこったかのかがりかいできていない、ぼくと、デルビルと、でぱーとからぬすんできた食べものたちだけだった。
「、、、なんだったんだろう?あのゴーリキーが、なぁ?」
「ほんとだよね。でも、1つだけ分かったことがあるぞ。」
「どうした。何が分かったんだ、コラッタ?」
「ぼくたちは、今日、すごく運がいいということだ。」
「やっぱりそうだよな!こんなにことが思いどおりに行く日なんてはじめてだぜ!」
そうデルビルが言ってくれた。その言葉にぼくのぎもんは、かく信に変わっていった。
「あのさデルビル、、、ラジオとう、行かない?」
「えっ!マジかよ!おれらあそこで何回つかまったと思う?お前が行きたいあのてんぼうだいどころか、2かいにすら行けたことないじゃないか!」
「わかってるよ。、、、でも、今日は、今日なら行ける気がするんだ。ちがう!?」
「、、、わかった。一回だけな。たしかに今日のおれらなら、行けるかもしれねぇな!」
ありがとうデルビル。その思いは口に出さないでおいた。はずかしかったからね。
お昼ごはんを食べてから、ぼくらはラジオとうに向かった。
ラジオとうには、うら口があった。だから、中に入ることはかんたんなのだが、人がたくさんいるから、ぶ外者のぼくらはすぐに見つかって外に放り出されるのがおちだった。
でも、今日はあまり人がいなかった。何人かと目が合ってしまったが、だれ一人ぼくらを追い出すものはおらず、ねんがんのてんぼうだいにあっけなくたどり着くことができた。
そこから見下ろすジョウト地方のけしきは圧かんだった。なんでそんなとこ行きたいんだよ、とぼくにずっと言っていたデルビルも、われを忘れてはしゃぎまわっていた。
「きれいだね。」
「あぁ、おれらはこのまちしか知らないけど、こんなに世界ってのは広いんだな。」
「、、、ぼくのおかあさんは今どこにいると思う?」
「、、、わかるかよ。おれはもうおやのことなんて考えたくもねぇんだけどな。」
「そうだったね、でももしかしたら今ごろ君を捨てたことを後かいしてるかもよ。」
「んなわけねぇだろ。それだったらさがしに来るだろ、自分が捨てたまちくらいは。」
「そりゃそうだったね。」
そう言って、もう一度ガラスごしに広がる世界を見た。このどこかにぼくを捨てたお母さんがいるかもしれない。そう思いながら、ただただ眺めていた。
住みかに戻ったのはちょうど夕ぐれ時だった。今日はなんかいつもより空が赤くなってから全ぜんくらくならないと思ったが、そんなに気にすることじゃないと思い、夜ごはんを食べたらもう寝るじゅんびをはじめた。
「それじゃおやすみ。」
「あぁ、おやすみ。」
と二人で言い、目を閉じた。
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「、、、おーい、お前らもう寝てるのか。マジかよ。」
だれかがそう言った。僕はおきてあたりを見わたした。が、よこでぐっすり寝ているデルビル以外、だれもいなかった。
「違うよ、上だよ、上。」
それを聞きぼくが上を見上げると、一匹のヤミカラスがぼくを見下ろしていた。
「夜は今からだっていうのにさ、子供だとしても早すぎる時間だろ。なんでそんなに早く寝るんだ?」
「え?だって、今日やりたいことはできたし、早くおきないとこいつにかみつかれるから。」
と言って、いまだおきないデルビルに指さした。
「へぇ、ほんとにやりたいこと全部日中にやれたのかい?」
「ぜんぶじゃないけど、、、あせらなくたっていいじゃない。明日もあるんだよ。」
と言うと、ヤミカラスはおどろきをかくせていないようすだった。
「、、、お前、明日何がおこるか知ってるか?」
「え、そんなの分かるの?占いしなの?」
「、、、、、、いや、なんでもないんだ。」
「えぇ。分かるんだったらおしえてよ。」
と言うと、ヤミカラスはしばらくだまっていたが、
「少年よ、世の中には知らないでおいた方がいいこともあるんだぜ。」
と言って、まだ赤くそまった空へととんで行ってしまった。
なんだったのだろう。そして、明日何がおこるのだろう。すごく気になったが、となりで寝ているデルビルに、明日の朝かみつかれる方がよっぽどいやだったから、とくに考えず再びねむりについた。
2020.4.30 15:18:30 公開
2020.5.19 22:38:11 修正
■ コメント (4)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
20.5.1 15:49 - ダンゴムシ (tailback) |
文章にひらがなが多く使われているところで一層、コラッタ達がまだ無垢で純粋な子供達なんだなと思えますし、この子たちの世界も終末に繋がってしまうのかと思うと切なすぎて泣けます(T-T) ラストでどこか不穏な雰囲気を残しつつ、明日はまたいつもの日常が始まるものだと思っている彼ら… 世界の結末を知っている私達から見ればなんて儚い… やはり奥が深いです…! 20.5.1 14:06 - KOHAKU (sian331x) |
LOVE★FAILYさん コメントありがとうございます! 二人以外で登場した者たちは、もちろん全員明日の朝に起こることを知っています。 もし誰かが彼らに教えていれば、、、どうなっていたでしょうかね。 次回も頑張ります! 20.4.30 21:16 - ダンゴムシ (tailback) |
コガネ周辺であれこれ悪さをする野生のコラッタとデルビルの2匹は明日の朝には隕石が起こる事を知らずにコガネ中を色々楽しんでおりますね…… ヤミカラスが言った言葉の意味がどうも妙に思った2匹は、結局何も考えないまま眠っちゃいましたか。 まぁ、知らない方が幸せだって事もありますしね…… 次回はどんな話になるのか、楽しみにしています! 20.4.30 19:42 - LOVE★FAIRY (FAIRY) |
コメントありがとうございます!
純粋な子たちだからこそ生まれる悲壮感というのは、やはり心に来るものがありますね、、、
自分の今までの作品と比べると、少し深い作品になったと思います。あ、でも今までのがあんまりだから、何とも言えないような、、、
次回も頑張ります!