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残り24時間。

著編者 : ダンゴムシ

幸せの形 後編

著 : ダンゴムシ

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気が動転してる僕をよそに、弟は威嚇を続ける。向こうは僕が誰だか気づいていないようだ。
無理もない、だって僕がウインディになったことを弟は知らない。
それでなくても20年という長い年月が経った後だ。気づくほうがおかしいともいえるだろう。

「お父さん、いきなりで申し訳ないのですが、お名前を教えてもらってもいいでしょうか?」
「へ?、、、不審者に名乗る名などない!」
おーい、お前もか。

今、僕の頭の中は、弟の名前を死に物狂いで探し回っている。が、出てくるのは同期の警察犬の名前ばっかりだった。

「お父さん、無理を承知で申し訳ないのですが、あなたが暮らしている集落を見て回りたいのです。どうか連れていってくれませんか?」
「え?なんでだ!?出来る訳ないだろ!
ていうか、なんでうちの息子を拷問していたんだ!訳を説明しろ!」
クソガキがギクッとしたが、僕は構わず言い放った。
「あ、それはですね、、、」

説明開始から5分も経つ前に弟は、息子と一緒に僕の前で土下座をしていた。

「大変申し訳ございませんでした!そんなこと知らず、怒鳴りつけてしまって、、、」
「いやいいんですよ。最初に説明しなかった僕にも責はありますから。」
「確か、うちの集落を見て回りたいとおっしゃっていましたね、どうぞご見学ください。僕が責任をもって案内します。」
というわけで、家を出てから約5時間後、ようやく20年ぶりの帰郷を果たすことができた。

弟について行って道路の脇の森を抜けていくと、小さな洞穴みたいなのが見えてきた、その入り口付近に沢山のガーディの群れが見えてきた。懐かしい光景だった。
「さあ、僕らの集落はここです。特に何もありませんが、ゆっくりしていってください。」
「ありがとう。とりあえず君の家に行ってもいいですか?」
「わかりました。ではご案内しますよ。」
といい、また弟について行った。

弟の家は大きな樹の下の空洞だった。オレンのみでもてなされた僕に、クソガキが言った。
「そういえば、おじさんは名前あるの?」
「あぁ、リンドウっていう名前が、、、」

「違う。」
突然、家に一匹の老いぼれたガーディが入り込んできた。

「へ?あなたはだ」
「あなたの名前は、レックス、そうでしょう。」
レックス、、、?僕がリンドウという名前をもらう前の、名前?
「間違いない、あなたが進化してウインディになっても、私にはわかる。
だってあなたは、、、私の、、、息子だもの。」

頭に稲妻が走った。すべてを思い出した。僕はリンドウ。いや、その前に母からもらったレックスという名前があったことも。
「母さん、、、」
「え!?じゃあこのウインディは、、、」
「久しぶりだ、ジェイド。」
「なんだよ、、、それならもっと早く言ってくれればよかったじゃないか、、、。」
それが出来なかったから苦労したんですよ。

それから、ガーディの仲間たちと楽しい時を過ごした。
懐かしい同級生の家を周り、いろんな話をした。友達の一人がこの集落のリーダーやっているのもびっくりしたが、一番驚いたのは、僕らの中で一番冴えなかったやつが、集落1の美ガーディをゲットしたことだったが、僕以外にもトレーナーに捕まえられたり、病気で亡くなったりして、友達が僕の知ってる3割ほどしか残っていなかったことはやはり悲しかった。
集落で1番強いガーディとバトルもした。僕の17歳下のバリバリ現役との一戦バトルだったが、経験の差で何とか勝利できた。僕がもともとそんなに強くなかったことを知っている弟たちのあんぐりとした顔が、あまりにもおかしすぎて、笑い転げてしまった。

集落全体で晩餐を楽しみながら、僕の実体験を話している時だった。
「ねぇ、おじさんはどうしてこの集落に来たの?」
と、ワーグスが言った。その時、僕は気づいた。まだ、みんなに伝えていないことに。でも、考えた。それは言っていいものだろうか。今知って絶望するくらいなら、いっそ知らないままのほうがいいんじゃないか。そう思った。

「レックス、言ってみてくれ。」
そう言ったのは、リーダーだった。
「俺らはどんなことでも受け止める。できるなら言ってほしい。」
なんだこいつ。俺が言うことを知ってるのか?
「、、、わかった、、、みんな。落ち着いて聞いてほしい。
 僕は今日皆に伝えないといけないことがある。あの赤い星を見て。」
と言って、もう月の二分の一ほどの大きさで光る隕石を指さした。
「今この星にあの隕石が近づいてきていて、、、明日の朝衝突してこの星は消滅するんだ、、、」

一瞬皆の体が固まった。と思うと次の瞬間大人のガーディはお互いを確認して、四方八方に散り散りになっていった。多分、ほかのポケモンたちに伝えに行ったのだろう。集落は今さっきまでのお祭りムードから、緊迫した雰囲気へと変わっていた。
でも約30分後には今さっきの活気が戻って晩餐は再開された。
キョトンとしてる僕にリーダーが近づいてきてこう言った。

「俺たちは、お前をはじめ沢山の仲間が捕まえられるのを見て、日ごろからいつこの身に災難が降りかかってもいいように一日一日を大切に生きていこうということをモットーにして生きるよう心掛けていたんだ。お前は昔から人のことを想う優しい奴だったから、どうせそんなことだろうと思ったよ。まぁ俺は知り合いの奴から話を聞いてただけなんだけどね。」
最後の一文が無ければ最高だったのに。そう言おうと思ったけど、子供たちが今さっきの話の続きをしてほしいとねだりに来たから、再び晩餐に戻ることにした。

夜も深くなりみんなが寝静まるころ、月がよく見える岩の上で母と二人で、月の横で赤く光る隕石を見ながら、二人で話していた。

「母さん。」
「なんだい?レックス。」
「この集落のみんなはすごいね。普通もう明日の朝起きたら世界が無くなっているって言われたら、正常な考え事なんてできないと思うけどね。」
「それは、外の世界を知っているあなたならではの考え方だよ。私たちはこの森の外に出て何かをしたことがほとんどない。狭〜い世界で生きてきたからこそ、そう思えるんだと思うよ。」

「、、、僕がもし、あの時トレーナーに捕まえられなかったら、もっと幸せな人生を送れてたと思う?」
「、、、そんなのわかんない、って答えたいけれどもそれじゃお前は満足しないだろう?」
もちろんだ。さすが母さん、もうかなりのご高齢のおばあちゃんガーディなはずなんだけども、やはり冴えわたってる。

「幸せってのは、いろんな形があると思うんだよ。四角い形とか、まあるい形とか。それで自分が“幸せ!”って思える形があなたの幸せになるんじゃないかな。だって、幸せはいつも自分の心が決めるのだから。あなたは多分外の世界で幸せな生活を送ってきたのだろう?だってあなたには幸せを感じる豊かな心があるのだから。」
と、母は言った。

よく聞けば、母は質問に答えてはいない。だが、僕の中にあったもやもやとした思いはハッキリと薄らいでいった。

僕の幸せの形を考えながら、皮肉にも隕石の炎の光で鮮やかな赤色に輝く夜空を見上げながら、夜が更けるのを待った。

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2020.4.26  21:26:36    公開
2020.5.18  12:30:00    修正


■  コメント (6)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

未來さん
コメントありがとうございます!
いえいえ、そんなことないですよ!わたしも、美ガーディと一緒に戯れて、あんなことや、こんなこt(殴
リンドウの母のような、鋭い勘を持った人も憧れますね。やっぱり、ガーディは最k(殴
次回も楽しみにしてください1

20.5.3  23:47  -  ダンゴムシ  (tailback)

ガーディちゃん達の集落って想像するだけでかわいいで
すね(≧∀≦)
そしてお母さんの鋭さ…母はすごぃ!!
そして、そして、美ガーディっていう表現がまたツボでしたwww可愛いんだろうなぁー♪
自分が幸せって感じる形ですか…何だろう…
イケメンに囲まれたい\(//∇//)\←おいっ
GWどこも行けず妄想癖が悪化しているような…
せっなくの綺麗なラストを汚してしまってすみません(ToT)
次回も楽しみにしてます!

20.5.3  21:41  -  未來  (pushi)

KOHAKUさん
コメントありがとうございます!
深い言葉を目指していたので、その言葉をいただけてとてもうれしいです!
湧き出てくる感情が複数あると、生き物ってどんな感じになってしまうのでしょうかね。
次回からも頑張ります!

20.4.29  21:32  -  ダンゴムシ  (tailback)

「幸せってのは、いろんな形があると思うんだよ。四角い形とか、まあるい形とか。それで自分が“幸せ!”って思える形があなたの幸せになるんじゃないかな」←このセリフが可愛くて、尚且つ深いです…!
寂しさの中にある幸せは切ないですね…

20.4.29  20:47  -  KOHAKU  (sian331x)

LOVE★FAIRYさん
コメントありがとうございます!
作者の私自身も、リンドウの質問の答えははっきり決めていません。どっちが正解だったのかを決めるのは、読者の皆さんの心で決めてもらえれば幸いだと思います。
次回も頑張ります!

20.4.27  13:02  -  ダンゴムシ  (tailback)

自分の故郷へ戻ってきたリンドウは、20年ぶりに家族と再会できれたものの、翌日の朝には隕石が接近するとなると、なかなか楽しめるムードにはなりませんよね……
そんな中、彼にとって幸せの形とはいったい何なのか、ますます気になりますね……
次回も楽しみにしています!

20.4.27  12:20  -  LOVE★FAIRY  (FAIRY)

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