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残り24時間。

著編者 : ダンゴムシ

幸せの形 前編

著 : ダンゴムシ

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朝7時。主人が慌てて僕を起こしに来た。その足音で僕も目が覚めた。
「リンドウ!大変なことになったぞ、ニュースを見ろ!」
リンドウは主人が僕につけてくれた名前。正義とか誠実とかのハナコトバとやららしいが僕は非常に気に入っているので、意味なんてどうだっていい。
とりあえず、主人の言う通りテレビのニュース画面を見ると、
「「緊急事態!隕石接近中!衝突まで残り24時間!」」
と書かれていた。ニュースキャスターも自分が言っていることを信じたくないのだろうか、それとも何十回も言いすぎて気がおかしくなっているのだろうか、非常に覇気のない声で、この緊急事態を繰り返し伝えていた。

僕は元警察犬として一線で活躍したウインディであり、主人は僕のことを20年前から育ててくれた、元一流の警察官だった。去年主人が定年退職するのにあたって、僕も警察犬としての仕事を引退し、老いぼれ同士で残りの余生をまったり過ごしていた。

「リンドウ、俺は後悔して一生を終えるなんてまっぴらごめんだとよく言っていたな。お前は何か思い残すことはあるか?」
と主人が言った。
わが主よ。そんなこと言う人のポケモンである僕に、そんなものあるわけないじゃないか。僕も主人とともに数多の体験を通して、充実した毎日を送っていた者だ。僕は主人に対し、首を横に振ろうとした。
その時、視界の片隅に主人の家族との集合写真が見えた。思い出した。
そうだ、俺にも家族が居たんだった。

俺は、珍しく野生出身の警察犬だった。もともと、思春期真っ盛りのころに違うトレーナーに捕まえられたのち、知らない町にて捨てられ、警察に保護された過去がある。その警察官が今の主人であり、警察犬として一から育ててくれた恩人である。
つまり何が言いたいかというと、俺には元々いた草むらに、家族とたくさんの友達と一緒に暮らしていた。
出来るならこの世が終わる前に、一度みんなに会っておきたい。
そう思った僕は、主人に対し首を振った。もちろん縦方向に。

主人も手伝ってくれたおかげでかなり早く準備ができた。警察犬になって、ジョウトのマップは全部暗記した。だから、自然公園のすぐ右にある僕の生まれ故郷への行き方もわかっていた。
「いってらっしゃい」と主人が言うのを聞いて、僕も雄たけびを上げた。もう二度と会えないと考えると、急に涙がこみ上げてきたが、そんな姿を主人には見られたくなかったので、主人に振り向くことはなかった。

それから4時間が経過した。ウインディである僕がノンストップで走りづけても、なかなか故郷である36番道路は見えてこなかった。エンジュシティを過ぎたので、もうすぐだとは思うのだが、このまま見つからなかったらどうしようかという思いも現れ始めた。
その後、とりあえずおなかが空いてきたので、主人が作ってくれたおにぎりを頬張ることにした。首に巻かれたバンダナからおにぎりを取り出そうとしたとき、草むらから一匹の子供のガーディがおにぎりの匂いにつられて飛び出してきた。
「、、、おじさん、そのおにぎり、、、くれな、、、い、、?、、、」
と、今にも倒れそうな声で言うものだから、持っていたおにぎりを全部上げてしまった。
「ありがとうおじさん、、、それでは、、、
 いっっっっただあっっっきまああぁぁぁあすっ!!!!!!!」
と、そいつは生まれ変わったのかと思うくらい生き生きとした様子でおにぎりを食べ始めた。
おい。こいつ、はめやがったのか。
ふざけんなよ!って言おうと思った時にはそいつは全部平らげてしまっていた。そんで僕が怒っているのを察したそいつは、たぷんたぷんのお腹で僕から逃げようとした。
が、全盛期は過ぎたとはいえ、充分に体力も瞬発力も有り余っていた僕は、あっけなくそいつを捕まえてしまった。

「いやぁ、おじさんごめんって。年の割にめっちゃ体動くじゃん。」
一言余計なんだよ。

「そんでおじさんどこから来たの?ここらへんじゃ見かけない顔だけど。何で来たの?」
そういえばここに来た目的は僕の家族や友達に会うためだった。そしてこいつはガーディじゃないか。こいつ、何か知っているかもしれない。
「お前、ここら辺で暮らしてるのか?」
「うん、いくつかの家族で集落みたいなのを作って暮らしてるんだ。」

間違いない。昔の僕と同じだ。

「お前が僕をその集落まで案内してくれたら、今さっきおにぎりを食ったことは水に流してやろう。」
「えー、こんな怪しいおじさんを集落に入れるなんて、あとで怒られそうでヤダなあ。」

このクソガキがぁ。一発シメてやるか、とか思っていたら、草むらから僕と同じくらいの年のガーディが現れた。

「ワーグス、こんなところで何してんだ!」
「父さん、助けてくれい!」
おい。やりやがったな。
「ちょっと、あなたどこの誰かは存じませんが、息子に手を出すのなら私が許しませんよ!」
「いやいや、誤解です!こいつが私のおにぎ、、、」

驚きで言葉が出なかった。僕は、そのくそガキのお父さんらしきガーディの右目の上に、小さく十字に入った傷を見つけた。そんなガーディ僕は一体しか知らない。

あれは僕の弟だ。

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2020.4.25  14:59:27    公開
2020.5.17  21:37:20    修正


■  コメント (6)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

未來さん
コメントありがとうございます!
リンドウとおじさんの関係の深さもすごいものですよね。
普通は自分のポケモンのことを信じて、送り出すなんてできないと思うので、そこは20年という付き合いの長さがすべてを物語っている、、、はずです(笑)
さて、弟と出会ってどうなっていくのか、、、
次回も楽しみにしてください!

20.5.3  23:40  -  ダンゴムシ  (tailback)

2度と会えないのに、お互いを尊重して送り出すなんて…
リンドウおじさん?と主人は信頼関係があらわれてますね(ToT)
そして、まさかの弟との再会(≧∀≦)
会えてよかった\(//∇//)\家族はみんな元気なのかなぁ?
けど会えても残り1日…
この先どうなるんでしょうか?
後編が気になります!!
後編も楽しみにしてます!

20.5.3  21:30  -  未來  (pushi)

KOHAKUさん
コメントありがとうございます!
ウィンディ良いですよね!自分の過去と闘いながら、頑張ってる姿は、、、
あれ、目から差してもない眼薬g(ry
次回からも頑張ります!

20.4.29  21:27  -  ダンゴムシ  (tailback)

リンドウくん…!
ジョウトのマップ丸暗記なんて凄すぎます…!
あの可愛いもふもふのウィンディが一生懸命頑張ってると思うと目から汗が…(´;ω;`)
幸せの形っていうタイトルも気になります…!

20.4.29  20:41  -  KOHAKU  (sian331x)

LOVE★FAIRYさん
コメントありがとうございます!
リンドウと主人がどうなるか、、、
僕にもわかりません(笑)
次回も頑張ります!

20.4.26  13:51  -  ダンゴムシ  (tailback)

初めまして、LOVE★FAIRYです!
隕石による緊急事態の影響により、残り24時間と非常に限られている時間の中、リンドウと主人はこれからどう生き延びていくのだろうか、次回も楽しみにしています!

20.4.25  19:24  -  LOVE★FAIRY  (FAIRY)

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