ポケモンノベル

ポケモンノベル >> 小説を読む

dummy

残り24時間。

著編者 : ダンゴムシ

時を戻そう 後編

著 : ダンゴムシ

ご覧になるには、最新版の「Adobe Flash Player」が必要です。 また、JavaScriptを有効にしてください。

「で、どのくらい前に戻るんだ?」
光の中でセレビィが聞いてきた。
「、、、今年の7月30日の朝だ。できる?」
「まぁ、できるけど、、、なんでそんなに細かく指定してるんだ?」
「その日は、コガネの街で、各街の代表が集まって会議が行われていたんだ。なんの会議をしたのかは知らないけど、、、」
「、、、ってことは、」
「うん。その会議に突撃するつもりだ。」
僕とセレビィは驚嘆した。
あまりにも作戦が一か八か過ぎた。
セレビィが何か反論しようとしたが、それを遮って主が言った。
「でも、これ以外に俺は何も思いつかない。
ただ、隕石をどうにかするためには、まず偉い人が動かないと何も起こらないと思う。
俺たちだけで何とかしようとするんじゃない。未来を変えようとしてるのだから。」
セレビィは、何も言い返さなかった。主が言ったことは正しかった。
「、、、分かった。健闘を祈るぞ。、、、未来を変えてくれ。」
そして、セレビィは僕らを光の奥へと飛ばしていった。

光を抜けると、そこは元居た祠の前だった。でも、数分前より周りは少し暑く、森は普段通りの静けさだった。
時渡りは成功したのだった。ここは、約一か月半前のウバメの森だった。
森を抜けると、朝の陽ざしが僕たちを襲った。少し眠気があったが、夏の厳しい直射日光が眠気を取り除いてくれた。
そして、コガネシティに着いた。

とりあえず、僕たちは涼みがてらポケモンセンターに入って時計を確認した。時刻は8時半を少し過ぎたばかりだった。
会議がいつ始まっていつ終わったのか完全に記憶していない以上、早めに会議しているところに侵入しないと、せっかくセレビィに過去へ飛ばしてもらったのに、何もできずに終わってしまう。
早速、僕たちは会議が行われている高級ホテルに向かった。

目的地に着くと、やはり玄関は厳重な警備体制だった。とりあえず特攻をかけても、警察にお世話になるだけだった。正面突破はどう転がっても無理だと思った。
そうすると、主は空を見上げた。ホテルの屋上だった。いったい何階建てなのかさっぱり見当もつかないこのホテルの、高い高い屋上に人影は見えなかった。
「上から行こう。レッサー。」
主は、やる気満々だった。

1時間後、僕たちは主人の姉から借りたヨルノズクの背中に乗って、入り口の裏の壁を伝って上へと登って行っていた。ちょうど日の光の陰になっていたので、誰にもばれることなく、屋上まで辿り着いた。
屋上にはやはり誰もいなかった。だが、中へとつながる扉はもちろん閉まっていた。
でも、ヨルノズクの神通力でいとも簡単にカギは開き、中に入ることが出来た。やはり、エスパータイプの技ってのは便利なものだと思った。
ヨルノズクをモンスターボールに戻し、僕たちは誰にも気づかれないように、慎重に階段を下りていった。

次は、どこで会議が行われいるかだった。そこが分からないままうかつに降りる訳にはいかなかった。
ただ、それはすぐに分かった。エレベーターの前で5分ほど階の移り変わりを見ていたら、明らかに1階と16階で多く人の乗り降りが行われていた。
1階に会議室がある可能性ももちろんあったが、関係者が出入りしないといけないところが16階にあるホテルなんてあるのかと思った僕たちは、会議は16階で行われていると踏んだ。というか、1階まで誰にも見つからず下りられる気がしなかった。
なので、16階で会議が行われていると祈りながら、僕たちは非常用階段を下りて行った。

18階ほどまで来ると、人の声が聞こえるようになっていた。下をのぞくと、誰かがタバコをふかしていたのだろうか、少し煙たくなっていた。
意を決し、僕たちは16階へと続く扉の前まで下りた。慎重に扉を開けると、目の前の廊下には誰もいなかった。好機と思い、そのままフロアに入って、目の前の角まで進んだ。
その先を見ると、部屋が並んでいる廊下に出た。その一番奥に張り紙がしてある部屋があった。そこには大きく、「会議中」と書かれてあった。
あそこだ。僕たちは確信した。
そして、今廊下には誰もいなかった。
「行くぞ!」
主が言って、僕たちは走り出した。
あと会議室まで15メートル、、、10、、、5、、、
その時、目の前の扉が開いた。中から、小太りしたおじさんが出て来た。僕たちと目線があった。あ、やばい。
考えるより先に、猫だましが出た。ひるませたところを後ろの手のパンチで、元居た部屋に送り返した。そして、そのまま僕らは止まらず、会議室の扉を開いた。

「聞いてくれ!」
その場にいた全員が、突如現れた少年とエイパムに驚き、何も声が出なかった。
「俺は未来から来た者だ。いいか、よく聞いてくれ。
 今年の9月13日に、隕石がこの星に落ちて、皆滅びるんだ!」
そして、その少年が意味不明なことを言ったため、さらに現場の空気は滞っていた。
僕たちは、誰も何も反応しない様子を見て、おかしさを感じていた。
「、、、もう一度言うぞ。俺たちは9月13日に隕石を発見して、その翌日、この星は滅亡するんだ。分かった!?」
そう言うと、やっと状況を飲み込めた人たちが、
笑い出した。
「坊やいいかい?私たちは今大事な会議をしてるんだよ。子供がそんな冗談をつきに来ていいところじゃあないんだよ。」
そう言って、また笑い始めた。
「いや、これ見てよ!」
そう言って、携帯に撮っておいた、隕石の報道をするニュースの画面を見せた。
「これが決定的な証拠でしょ!俺が言ってることは本当だってば!」
「あらあら。結構子供にしては、凝った仕掛けだなぁ。とりあえず、ここは君が居ていい場所じゃないんだ。出て行ってほしい。」
と言うと、扉が開いて、警備員が3、4人入ってきて僕たちを拘束した。
「ちょっと待ってくれよ!まだ話が」
「はいはい。それは後で聞くから。」
と言って、僕たちを連れて行った。
結局、セレビィの言う通り、大人は融通の利かない奴らばっかだった。

僕たちは、エレベーターが今たくさん使われているので、階段で16階も下りる羽目になった。まぁ、ここに来るまでにもっと下りて来たのだが、、、。
僕たちは疲労困憊だった。精神がやられていたからだった。
大人とはあんなに非常なものなのだろうか。
子供の言うことを、こんなにも信じないものなのだろうか。
あの主が、下を向いていた。

そして、1階に着いた。すると、そこには一人の男性が立っていた。
「あぁ、君!ごめんだけどもう一回話を聞かせてほしい。僕には君が単にいたずらしに来ただけとはどうしても思えないんだ。」
「え、、、?」
「今年の9月13日に隕石が落ちてくるんだろ!?で、それを止めるために未来から来た。充分筋は通ってるはずなんだ。僕は君を信じる。君の代わりに、あの人たちを動かして見せる。そして、その隕石を何とかして見せる。任せてよ。」
そう言ってくれた。
主の目からは、溢れんばかりの涙がこぼれていた。
良かった。本当に。僕も、やっと心を落ち着かせることが出来た。
そんなやり取りを終えた後、僕たちは警備員に連れて行かされた。
あの男性に託そう。そう思って、彼を遠目で見ながら外へ出た。

外では、パトカーが3台ほど止まっていた。
どうやら、僕たちはかなりな警察沙汰を犯したらしい。今日中に開放されるかどうかすら怪しいもののように思えた。
「さぁ、入れ。」
と言われ、車内に入ろうとした。
体が浮いた。
と思った時には、僕たちはすごいスピードで空を飛んでいた。
後ろを振り返ると、ポカンとした顔で僕らの方を見ている人たちの顔が見えた。
ただ、その人たち以上に、僕たちも何が起こっていたのか分からなかった。
僕たちは、ウバメの森の方へ飛んで行っていた。

コガネを抜けるころ、僕たちの前に建物の裏から飛び出してきたのは、セレビィだった。
やはりだったが、ここまで僕たちを飛ばしたのはセレビィの仕業だった。
「キミ達やるじゃん。最後の最後にすべきことをやり切ってさ。見直したよ。」
主はそれを聞いてやっとほっとした表情をした。
そして、またウバメの森の祠の前まで戻って、セレビィが時渡りの準備を始めた。
「さぁ、元の世界に戻ろう。未来は変えられたのかどうかを確認しに行こう。」
僕たちもうなずいて、光の中に入っていった。

光を出た先は、今さっきいた世界より、、、暑かった。ウバメの森は、ポケモンが混乱していて騒がしく、時間的には夜も深くなっているはずなのに、空は赤かった。

隕石は、消えていなかった。


僕たちに世界を救うことは、できなかった。

⇒ 書き表示にする

2020.5.12  21:01:25    公開


■  コメント (4)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

KOHAKUさん
コメントありがとうございます!
今回、必ずしも偉い人は、有能な人だらけではないことと、集団心理に任されがちなことを少し皮肉った描写にしました。
でも、子供が社会を変えて来たケースは今まで何度もあります。
今回のように失敗することもありますが、子供の頃は、積極的に動いて行った方がいいのかもしれません。
次回も頑張ります!

20.5.13  13:16  -  ダンゴムシ  (tailback)

そんな…!(´;ω;`)
ポケモンの世界でもやはり大人の思考は堅物なのですね…
でも、そうじゃない人間もいる…
ただ、その人が頑張っても多勢に無勢で物事をひっくり返すのはやはり難しいのか…
このまま世界は救われないのでしょうか…?(´;ω;`)
どうか明るい未来がありますように…
次回もとても楽しみです!

20.5.13  12:24  -  KOHAKU  (sian331x)

LOVE★FAILYさん
コメントありがとうございます!
二人の努力も実らず、結局隕石の衝突は免れませんでした、、、。
二人の言うことを信じてくれた男性が、どのようにあの人たちに問いかけたのか、少し気になりますね。もしかしたら、スピンオフで短編をまた作るかもしれません。
次回も頑張ります!

20.5.12  23:34  -  ダンゴムシ  (tailback)

セレビィの力によって約一ヶ月半の過去へ遡ったレッサーと主は、苦労してまでも隕石が来るという事実を知らせる事ができれたものの、結局、残念な結果になっちゃいましたね……
次回も楽しみにしています!

20.5.12  23:29  -  LOVE★FAIRY  (FAIRY)

パスワード:

コメントの投稿

コメントは投稿後もご自分での削除が可能ですが、この設定は変更になる可能性がありますので、予めご了承下さい。

※ 「プレイ!ポケモンポイント!」のユーザーは、必ずログインをしてから投稿して下さい。

名前(HN)を 半角1文字以上16文字以下 で入力して下さい。

パスワードを 半角4文字以上8文字以下の半角英数字 で入力して下さい。

メッセージを 半角1文字以上1000文字以下 で入力して下さい。

作者または管理者が、不適切と判断したコメントは、予告なしに削除されることがあります。

上記の入力に間違いがなければ、確認画面へ移動します。


<< 前へ戻るもくじに戻る 次へ進む >>