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残り24時間。

著編者 : ダンゴムシ

ラッキーセブン

著 : ダンゴムシ

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ちーちゃんが起きたのは、お昼すぎだった。
ちーちゃんの周りには、ちーちゃんが起きるまでずっとそばで待っていたお父さんとお母さんと私がいた。そして、今日の朝、全世界を混乱させたニュースをちーちゃんに伝えた。

ちーちゃんは生まれつき肺に思い病気を患っていた。だから、肺が悪くなったら入院をし、落ち着いてきたら退院する、の繰り返しの人生だった。
私はちーちゃんが小学校に入るときに、いつもそばにいてあげられるポケモンとしてちーちゃんの元に連れてこられた。それから今3年の時が経ったけど、もう今回の入院が何回目の入院か私には分からなかった。私はちーちゃんの学校のお友達より、病院の看護師さんのお姉さんたちの方が面識があるくらい、病院にいる時間は長かった。

肺が悪いということ、それは運動全般を禁止されているということだった。ちーちゃんにとっては、スポーツなんて想像の中でしかできなかった。一日中ベッドから出れない日も多かったちーちゃんは、病院の外の公園で遊んでる子たちを病室の窓からよく覗いていた。そして、そのたびに
「ちーも、一回でいいからやってみたいなぁ。」
と、呟いていた。私はただ寄り添うことしかできなかった。

でも今日は違った。お父さんもお母さんも、外に出て遊んできてもいいよ、と言った。
今日一日、自由に遊んでいいんだよ、と言った。
ちーちゃんはとっても嬉しそうだった。
でも、無理はしないでね、とお母さんが言いきる前に、ちーちゃんは病室から飛び出し、公園に向かった。軽快な足取りだった。
ヒメちゃん。悪いけど、ちーのこと見守ってね、とお母さんが言うのを聞いてから、私はちーちゃんの後を追った。

病院の友達を誘って、公園に行った。それから、ちーちゃんたちはたくさん遊んだ。おにごっこ、缶蹴り、大縄跳び、ドッヂボール、、、
ちーちゃんにとって、夢にまで見た至福の一時だった。
でも、ちーちゃんの病弱な体が徐々に悲鳴を上げてきて、1時間ほど遊ぶと明らかに疲れているのが端から見ていても分かった。友達のみんなもそれに気づいてくれたので、長めの休憩を取ってくれた。

みんなで木陰で座っていると、一人の女の子がちーちゃんにタオルを貸してくれた。ありがとうと言って、ちーちゃんは湧き水のように出てくる汗を拭いていた。
その時だった。
ちーちゃんはタオルの模様を見て、黙り込んでしまった。私が近づくと、
「ヒメちゃん。私どうしてもしないといけないことを思い出したの。、、、行かなきゃ。」
そう言った後、ちーちゃんは立ち上がってみんなに、ちょっと用事を思い出したの、と言って公園の外へ歩き出していった。


ちーちゃんは自分の住んでいた街の方へと歩き出した。病院は街から少し離れた場所にあり、ちーちゃんの体力を考えると、たどり着けるかどうかすら怪しいところだった。
それでなくても、今さっきたくさん遊んでいたから、ちーちゃんの体力は相当減っていた。
でも、ちーちゃんは足を止めなかった。次第に歩くスピードは遅くなって、ヒメグマである私の歩幅ほどで歩くものだから、私は心配になってちーちゃんに鳴きかけた。そしたら、
「ちーは大丈夫。絶対に、行かないといけないの。」
そう言って、また足を前に出した。
ちーちゃんは、街に何しに行くんだろう。私には分からなかった。

そうやって、私たちはゆっくりゆっくり進んで、ついにちーちゃんが住む街へたどり着いた。空はもう赤く染まりかけていた。街に入ると、ちーちゃんはちーちゃんの家の方向と真逆の方向に歩いて行った。私はちーちゃんの行く先がいよいよ分からなくなっていた。
そこからまたかなり歩いた。
太陽は水平線の彼方へと消えていったのに、空はまだ赤かった。あいつの仕業なのか、と燃え上がっている隕石を見上げながら歩いていたら、急に止まったちーちゃんにぶつかりそうになった。
ちーちゃんは一軒の家の前で立ち止まっていた。
ちーちゃんは、一回深呼吸してからインターフォンを鳴らした。

しばらくしてその家のドアから、一人の女の子が出てきた。
「ちーちゃんどうしたの?こんな時に、、、大丈夫!?」
多分、ちーちゃんの小学校の友達であろうその女の子は、疲労困憊のちーちゃんを見るやいなや駆け寄って、抱きかかえてくれた。
「ちーちゃん今入院中でしょ!?病院から歩いてきたの!?ちーちゃんの体力でそれは無謀なことでしょ!、、、なんで、ここに来たの?」
一瞬の沈黙の後、ちーちゃんは口を開いた。

「、、、ごめんね。」
「、、、ん?」
「ふうかちゃんのタオルを泥んこにしちゃってごめんなさい!」
「、、、えっ?」
女の子は困惑してるようだった。

「ほら、私がふうかちゃんから借りたタオルを泥だまりに落としちゃって、次の日に私が入院しちゃったから、ずっとごめんねが言えなかったから、、、。」
「、、、そんなことのために、ここまで来たの?」
「だって、ふうかちゃんはいつも私のペースに合わせてくれて、私が出来ないことがあれば一緒に手伝ってくれて、、、私にとってふうかちゃんは大切な友達だったの。
だから、ケンカしたまま終わりたくなかったの。絶対に仲直りしたかったの!」

「ちーちゃん。そんなに気にしないで良かったのに。」
「えっ?」
「だって私、そのこと忘れていたもん。」
「え、ええぇぇえっ!」
「いやだってさぁ、その日は確かに怒ってたかもしれないよ。私のお気に入りのタオルだったもん。、、、でもね、そんな些細なことをねちねち言うほど私の心は狭くないよ。
「あらら、、、」
「それよりも、私はちーちゃんがそんな小さい事をずっと覚えていて、今日ここに来てくれたことがとっても嬉しいよ。」
「ふうかちゃん、、、」
「ありがとう。大切な友達って言ってくれて。私もちーちゃんが大好きだよっ!」

ちーちゃんは泣き出してしまった。それをふうかちゃんはよしよしと言って、ちーちゃんが泣き止むまで頭をなで続けていた。

その後、目的を果たせたちーちゃんは、長距離歩いた疲れと泣き疲れによって、その場で倒れてしまった。やはり、体力の限界だったのだ。
ふうかちゃんは冷静に救急車を呼び、倒れてから30分後にはいつもの病室に戻っていた。帰ると、私たちはお父さんとお母さんにこっぴどく怒られそうになったが、ふうかちゃんがフォローしてくれたおかげで何とかなった。
ちーちゃんは、ベッドに入るとすぐに寝てしまった。とても幸せそうだった。

まったく、私の最後の一日はちーちゃんに振り回されて大変な一日になった。
でも、大変ってことが、ミラクルを生むのかもしれない。そう思えるような一日になった。

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2020.5.6  13:42:43    公開
2020.5.20  23:06:42    修正


■  コメント (4)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

KOHAKUさん
コメントありがとうございます!
いつも暗い雰囲気のお話が多いので、ちょっとでも軽くしたいがために、ちーちゃんという荒業に出てしまいました、、、技量不足です、、、。
結局人は心ですものね。
私もピュアな心をもってもう一度中学生辺りからやり直したいです、、、(笑)
次回も頑張ります!

20.5.6  22:31  -  ダンゴムシ  (tailback)

なんだかいつもと雰囲気が違ってて、とても楽しく読めました!
ちーちゃんは身体は弱いかもしれませんが、人を思う気持ち、心は本当に綺麗で強いですね(´;ω;`)
私がもっとピュアならちーちゃんみたいな友達がいたのかな笑
次回も楽しみにしてます!

20.5.6  20:12  -  KOHAKU  (sian331x)

LOVE★FAILYさん
コメントありがとうございます!
ちーちゃんのような優しい心の持ち主が、大事なところで幸運であってほしいと私は思います。
その私の思いもこの物語には組み込まれています。
友達のために無茶なことできるような人になれたらいいなぁと思います。
次回も頑張ります!

20.5.6  18:34  -  ダンゴムシ  (tailback)

隕石が迫り来って残り時間があと1日と限られている中、ヒメグマの飼い主であるちーちゃんは、自分の病気を患っていながらも、友達のふうかちゃんにタオルの件で謝りたい気持ちでいっぱいで堪らなかったのかもしれませんね。
友達の為に無茶な事をしたちーちゃんはとても優しいですね……
次回も楽しみにしています!

20.5.6  14:28  -  LOVE★FAIRY  (FAIRY)

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