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残り24時間。
あかるいよるに
著 : ダンゴムシ
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きょうは、いつもより早い時間にマスターに起こされました。
きょうも一日がんばろうか、と意気込んでいると、マスターは
きょう一日はお前の好きなように過ごしなさい。
そう言って、わたしを海へと返してしまいました。
わたしのマスターは漁師。しかも、海に出るのは決まってよるでした。
よるの方がいっぱい釣れるんだよ。と、むかし教えてもらいました。
だから、おまえの力が必要なんだ。と言ってくれました。
わたしはチョンチー。触角が光ります。
マスターは、わたしを海に先に出して泳がせます。
マスターはその後ろを、マスターの船で追いかけます。
すると、わたしのもとに小魚が集まります。
それをマスターがいっぱい取ります。
わたしは、ただよるの海をおさんぽしてるだけです。
でも、マスターはいつも漁が終わると、
よし!きょうもおつかれさん。お前はほんとにえらい子だ。
と言って、わたしの頭をなでなでしてくれました。
わたしはそれがとてもうれしかったのです。
でも、きょうのマスターは
あしたの朝には世界がほろんでしまうからと言って、
わたしを海に放しました。
わたしにとって、いったい何年ぶりなのかと思ってしまうほど、
昼の海は久しぶりでした。
いつもはマスターを支えている光る触覚も、
昼の間はただのじゃまな装飾物に成り下がってしまいました。
わたしは、小さいころ、大きなうずしおに巻き込まれました。
そして、気を取り戻したときには、私は知らないところへと流されていました。
右も左もわからないところで、
ひとりぼっちでどうしようかと思っていたところを
拾ってくれたのがマスターでした。
わたしにとってマスターは、ただの主人なだけじゃありません。
わたしの命の恩人なのでした。
いつしか、お空はオレンジ色に染まり、お日様も沈んでいきました。
それなのに、お空は一向に暗くなっていきませんでした。
いつまでも、オレンジ色のままでした。
結局、わたしは海に放されてから誰ともしゃべっていませんでした。
誰も知り合いがいなかったから。
ふるさとへの帰り方もわからなかったから。
ひとりで、ただただ泳いでいました。
マスターは今なにをしているんだろう。
きょうは漁には出ないのかな。
こんなにあかるいよるなのに。
そんなことを考えながら泳いでいると、いつの間にか沖の近くまで戻ってきていました。
いつものように泳いでいたからでしょうね。
あしたが来ないとみんな分かっているからか、
まちはいつも以上に光で溢れていました。
でも、あんまり光がないところで
マスターは1人で海をながめていました。
わたしが近づいていくと、マスターは気づいてくれました。
お前、戻ってきていたのか。
そう言って、海から私を拾ってくれました。
わたしが初めてマスターに出会った日のように、
やさしくすくい上げてくれました。
そして、ぎゅうっと抱きしめてくれました。
マスターの温もりを感じながら、
これこそがわたしの生きる意味だったのかも、
なんて思ってしまうような、
幸せな瞬間でした。
2020.5.5 12:02:06 公開
■ コメント (4)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
20.5.5 22:36 - ダンゴムシ (tailback) |
マスターに好きなように過ごしなさいと言われたからこそ、マスターの温もりこそが生きる意味、そして幸せなのだと改めて気がつくとは!! とてもロマンチックな展開なのにやっぱり切ない(´;ω;`) GWに映画一本見た気持ちになりました…! 素晴らしいです(´;ω;`) 次回も楽しみです! 20.5.5 21:29 - KOHAKU (sian331x) |
LOVE★FAILYさん コメントありがとうございます! チョンチーにとっては、いつも暗い海ばかり泳いでいたので、余計明るく感じたのでしょう。 マスターのように、自分の仕事の道具のようにポケモンを扱わない人が、最後報われるのですかね。 次回も頑張ります! 20.5.5 18:10 - ダンゴムシ (tailback) |
隕石が迫り来る影響は、海の世界に棲むポケモン達にももたらしますか。 そんなチョンチーは、命の恩人でもあり、漁師であるマスターの事がとても大好きなんですね…… 次回も楽しみにしています! 20.5.5 13:52 - LOVE★FAIRY (FAIRY) |
コメントありがとうございます!
マスターもチョンチーも、お互いを最後まで思える関係にあるって素晴らしいですよね!
映画一本にしては短すg(殴
本当に最高の誉め言葉ありがとうございます!
次回も頑張ります!