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残り24時間。

著編者 : ダンゴムシ

True Bravery

著 : ダンゴムシ

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家に帰ると、お母さんが、おかえり。どこ行ってたの?って言ったが、またシホちゃんは反応しなかった。でも、今度は意識して無視していたことが、私にははっきりと分かった。
シホちゃんはいつものように部屋に直行して、いつものように机の上でうなだれ始めた。でも、いつも以上に落ち込んでいるのは明らかだった。
私がシホちゃんの元へ向かうと、シホちゃんは私を抱きかかえて私の頭をなでながら、また泣きだしてしまった。
「モカ、、、。私、もっと早く自分の気持ちに気づければよかったのにね、、、。そうだよね。ユウキも昔みたいに、転んだり、へこたれたり、泣いたりしてるばっかじゃないもんね。もう、ユウキも男らしくなったもんね、、、。そりゃ、もたもたしてたら、他の子に奪われるのも当然のことだもん。なんでそんな簡単なことに気づけなかったんだろう、、、。」
そんなに自分を責めないで。そう思って、シホちゃんに鳴きかけても、
「モカもごめんね。こんな私のことで振り回してしまって、、、。」
と、シホちゃんは自暴自棄するのを止めなかった。
「これが失恋かぁ、、、、、、えへへ、こんなにも悲しい事なんだね、、、。」
そうなんだ。これが、思春期というものなのか。
恋というものは、こんなにも人を狂わすものなのか。

お昼ご飯もほとんど残して、シホちゃんは部屋に戻っていった。そのまま、ベットの上で突っ伏してしまった。お母さんは全てお見通しだったのか、シホちゃんの部屋に入ることは無かった。
「モカちゃん。今はシホの部屋には入らないであげて。それが、シホのためでもあるの。さ〜て私は、ご近所に最後の挨拶でもしてこようかな。夕方ごろに帰ってくるから、それでもまだ部屋から出てこれなかったら、その時は二人で突入しようね♪」
と、お母さんが言うから、私もシホちゃんの部屋には近寄らず、昼寝を始めた。

トゥルルルルルルルル、、、、トゥルルルルルルルル、、、、
私は、電話の音で目が覚めた。すぐに、シホちゃんを起こしに部屋の戸を何回も叩いた。
「、、、はいはい。、、、もうお母さんはどこ行ったのよ、、、。今出ま〜す。」
そう言って、シホちゃんは受話器を取った。
「はい、もしもし、、、え?ユウキ?なんで電話、、、?、、、え?今から公園に来てほしい?、、、まあいいけど、、、分かった。それじゃあね、、、」
そう言って、シホちゃんは受話器を置いた。そして私を見て、言った。
「、、、ねぇモカ。私は、、、私は、どうすればいいの、、、。」
そんなの決まってるじゃない!行くんでしょ!彼に伝えるんでしょ!もやもやしたままおわっていいの!?
そういった、私の中で溢れあがった思いを込めて、真剣な目つきでシホちゃんを睨んだ。
「、、、やっぱり行くべきだよね。このまま終わって言い訳ないもんね。、、、よし、行こう。」
シホちゃんは、泣きまくって目が赤く腫れていたし、髪もぼさぼさだった。
でも、そんなの気にしてなかった。少しでも早く公園に向かおうと体が勝手に動いていた。

公園に着くと、彼はもう待っていた。シホちゃんと私に気づいた彼は、ヤッホーって声をかけてくれた。シホちゃんは、頭の中でこんがらがっている思いを抑えて、いつものように返事をした。

「急にどうしたの?」
「そりゃさ、最後の日なんだから、最後にシホの顔が見たくなってな。」
「、、、そうね。そりゃそうか。」
「あははは。そりゃそうなんだよ。」

二人はいつも通り話し始めた。

「、、、ここの公園、懐かしいよね。」
「あぁ、そうだな。ここで何百回遊んだかって話だもんな。」
「うん。よくあんたは鉄棒に頭ぶつけて泣いたり、ジャングルジムに登れなくて泣いたり、何もないところで転んで泣いたりしてたよね。」
「おいおい、昔の記憶を掘り起こし過ぎだよ〜。」
「いやいや、そんなに昔のことでもないから言ってるんでしょ。」
「え〜、そんなもんか、、、やっぱ弱虫だなぁ俺は。」
「そんあこたぁ、もっと昔から知ってま〜すよ。」
「あははは。シホにはやっぱりかなわないなぁ。」

そう言って、二人は笑った。もう私が生まれてから数千回と見た光景だった。

「、、、シホ」
「な〜に?」
「僕、ずっと前から、知りたかったことがあってさ。」
「うん。」
「いつも恥ずかしくて聞けなかったけどさ、こんな機会だから聞こうと思う。」
「だからな〜にって?」

「、、、シホは好きな人っているの?」
「えっ!?」

不意打ちだった。私もびっくりした。

「それは、、、そのね、、、」
シホちゃんの顔は赤くなっていった。
「、、、いるよ。」
「そりゃそっか。もう15だもんな。当たり前か。」
「ユウキは?」
「僕もいるよ。」
「へぇ、そうだったんだ、、、。」

シホちゃんと私は午前中のことを思い出していた。

「、、、ちなみに誰だったの?」
「、、、ユウキは?」
「、、、先に言ってよ〜。」
「なんでよ?」
「、、、いいじゃないか。僕のことな」

「なんでよ!付き合ってるなら付き合ってるで言ってくれればいいのに!」

ものすごい声だった。普段のシホちゃんからは想像もつかないくらいの大きな声だった。

「、、、?」
「いるなら言ってくれれば良かったのに!そうすれば、私もこんなに苦しい思いなんてせずに済んだのに!、、、今日の朝見たの。ユウキの家の前で楽しそうに喋ってる姿を、、、」
「あ、それはね、、、」
「もう!こんな日に一番知りたくなかったことだったのに、、、せめて、いっそ突き放すならそうして欲しかったのに、、、。ユウキは、、、ユウキは、、、。」
「落ち着いて!、、、分かった、僕の話を聞いて、シホ。」
「嫌だよ!どうせ分かってることを、、、どうしてもう一回聞かないといけ」

「分かってないのはシホの方だよ!」

「え、、、」
「いいから一回落ち着いて!、、、お願いだから、僕の話を聞いて。」

そう言って、辺りは静寂に包まれ、意を決したユウキ君が話し出した。

「、、、あのね。僕には、一年位前から急に意識してしまう人が出来たんだ。
その人は、いつも明るくて、素直で、いつもそばにいて。
よく僕のことをからかうけど、根はとっても優しくて。
笑った顔が魅力的な人なんだ。」
「、、、、、、」
「ずーっとこのままでもいい、だなんて考えてた。」
「、、、、、、」

シホちゃんは、ただまっすぐユウキ君を見つめていた。ユウキ君も、まっすぐシホちゃんの目を見つめ返して動かさなかった。

「だって、もし違ったらさ、今まで通りの関係でいられない。それは、僕にとっては、どんなことより怖いことだったんだ。」
「、、、、、、」
「その人はね、、、今、僕の目の前にいる。」
「!?」
「シホ、、、君のことだ。君のことが、ずっと好きだった。」
「、、、ほんとなの?」
「この場面で、嘘言ってもしょうがないじゃないか。」

そう言って、ユウキ君は白い歯を見せた。

「、、、じゃあ、朝の子は?」
「あれは、近所の後輩の子でね、たまに面倒見てたんだけど、その今までのお礼を言いに来てくれてね。」
「、、、それだけ?」
「あと最後に、好きですって気持ちも伝えに来たんだ。」
「、、、やっぱりそうじゃんか!」
「でも、断ったよ。僕には好きな人がいるからって。」
「え、、、」
「ごめんね、今まで黙ってて。、、、別にけなすんだったら、してくれてもい」
その瞬間、シホちゃんはユウキ君に抱きついていた。そして、こう言った。

「ほんとにバカだよ!もっと男らしくさ、早く言ってくれたら良かったのに!そしたらさ、タマムシのデパートとかさ、ヤマブキの遊園地とかさ、ハナダのゴールデンブリッジとかに一緒にデートも行けたじゃんか!他にもユウキとしたいことなんて、いくらでもあったのに!たくさんたくさん、甘酸っぱい恋を楽しめたのに!」
「、、、そんなこと言われてもなぁ。」
「ほんとに、全部ユウキが悪い!全部全部!、、、」

そう言って、シホちゃんはユウキ君の腕の中で、泣き出してしまった。

「ごめんってば。泣かないでよ。」
「だって、だって、、、」
「シホは、笑ってる顔が一番なんだからさ。泣いてたりしちゃだめだよ。」
「だって涙が止まらないもん!溢れ出てくるんだもん!」
「、、、もっと近づいていいよ。僕がその涙を拭くから。」
「、、、そんな感じのことを言いたかっただけでしょ。」
「あはは。ばれたか。」

そう言って二人は笑った。その後、二人は顔を見合わせて、くちづけをした。
二人とも幸せそうな顔をしていた。

気づけば、もうお日様は西の海へと沈み始めていた。シホちゃんの門限はもうとっくに過ぎていた。
でも、いつものように帰るよう声をかけなかった。

お母さんに怒られてもいい。
この幸せな二人をいつまでも見ていたかったから。

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2020.5.4  13:10:50    公開
2020.5.16  23:21:21    修正


■  コメント (4)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

KOHAKUさん
コメントありがとうございます!
昨日のフェイントは申し訳ありませんでした。私も、健気な恋は結ばれてほしいと思う身であるので、こういう結末にできて本当に良かったと思います!
KOHAKUさんに褒められるとは、、、ありがたき幸せです。毎日高クオリティの文章を書き続けれている貴方の方が、私の何倍も流石でございます。
次回も頑張ります!

20.5.4  22:39  -  ダンゴムシ  (tailback)

LOVE★FAILYさん
コメントありがとうございます!
二人にとって、後悔のない結末になってよかったですよね。
こんな甘酸っぱい恋をしたかったという私の私怨に近い思いも込めて、ハッピーエンドにしたいと思っていました。
(主にキスです、、、)
次回も頑張ります!

20.5.4  22:33  -  ダンゴムシ  (tailback)

いい結末でした(´;ω;`)
二人が結ばれて本当に良かった…!
でもこのまま終末に向かってしまうなんて…
なんて残酷なんだろう…
その中で、こんなに綺麗な終わり方が出来るなんてさすがとしか思えないです!
次回も楽しみにしてます!

20.5.4  21:29  -  KOHAKU  (sian331x)

電話の話において、幼馴染のユウキと一緒にいたのは近所の後輩の子でしたか。
偶然にこの事を目撃しただけでシホはとてもショックだったと思われる中、ユウキの話を聞いて何とか誤解が解けて良かったですね……
隕石が迫り来る前、公園でキスし合う形で終わるとは、これは2人にとってハッピーエンドかなと思います。
次回も楽しみにしています!

20.5.4  13:36  -  LOVE★FAIRY  (FAIRY)

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