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未設定4055

著編者 : まろ

ひらり、はらりと

著 : まろ

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――ひらり、はらりと。

淡い桃色のそれは舞い散る。
あたり一面が優しい桜色だった。

思わず、見とれてしまうほど……。




そして―――



気づくと、そこに彼がいた。



当たり前のように立っていて、当たり前のように優しい微笑みを投げかけてくれるその人は……なんとなく幼い気がした。




「桜、好き?」


聞き覚えのあるセリフ。

咄嗟に頷いてしまった。
昔のように。

「そっか。僕も好きなんだ、この桜」


――……。

微妙な沈黙。

――ふわり。

そんな空気のなか、風が運んだ桜の花弁が小春の頬を撫でる。


「……急に声をかけて、びっくりさせちゃったかな?」


小春は慌てて首を横に振る。
何故かわからないけど、声が出なかった。


「よかった。僕は拓斗っていうんだ。君の名前は?」

『私?私は小春だよ』
そう言いたい。
なのに、声が出ない。


「……、ぁぅ」


ようやく振り絞った一言は、か弱かった。
人と話すのは、やはり慣れない。


仕方がないので、いつも持っているぬいぐるみに書いてあった名前を見せた。



「小春、小春かぁ……。桜の前で小さい春に出会ったんだ、なんだか面白いね」

そうやって、微笑む彼の表情は、桜の花弁より柔らかくて……。






どうしようもなく、切ない気持ちになった。





もう……彼は来ない。


そう。

もう二日も病室にやってきてはいないのだ。


毎日、多い時は三度も現れる彼のことだ。



これは、異例中の異例だった。



だから、そう。
彼が来ることを待つのを諦めた。

いつものように……諦めたのだ。



そこで、ふと気付く。




……じゃあなぜ彼はここに居るのだろう。


ふとした疑問が、核心をついていた。



数秒の思案ののち、導き出した答えは……。








――むに。

目覚めると、そこにはメロディがいて。




桜色だった世界は、灰色に変わっていた。




むにむにした感覚は、小春より早く目覚めたブースター……メロディのものだった。
肉球のついた柔らかい手で小春の頬を撫でる。

まるでさっきの、夢のように柔らかく淡い花弁のように。



「夢……」



――そうか。
夢だったんだ。


今まで見ていたものは、全部。


そう、「全部」。


桜が見せた、夢。淡い幻想。


だからもう、望んじゃいけないんだ。
彼はもう、二度と来ない。



そんな思慮をしている小春をよそに、昨日とうってかわって元気なメロディ。


「ぶーっ!」

にこにこ顔でメロディは挨拶。

『おはよーっ!』

そんな風に言っているようだった。


少なくとも、メロディは傍にいてくれる。
それだけは、夢じゃないようだ。

そう思うと、少しだけ安心できた。




――だけど……。

と、懸念がひとつ。


この子はきっと……いつまでも私の傍にいてくれるんだろう。


だけど……だけど、『私』はいつまでこの子の傍にいてあげられるんだろう。



きっともうすぐ、桜の花弁のように散ってしまう。
淡くて儚い。


桜の場合、その後に『そして美しい』が付くのだろうが……。

小春の場合、ただ単純に『儚い』。それだけの存在だった。


「……ぶぅ?」

そんな小春に、『どうしたの?』とでも言うようにメロディは問いかけてきた。


「ううん、大丈夫。私は、大丈夫だから」
そう言って鬣を撫でる。

もふもふしたそれは、優しく……そして温かかった。

「大丈夫」
しきりに口にしたその言葉は、自分に言い聞かせているかのようで……だけど口にせずにはいられなかった。



そういえば……。

そう思い、窓枠に切り取られた桜を見る。


夢の中では満開だった桜。
しかし現実では少しずつ緑が混ざった葉桜に変わりつつあるようだ。

きっともうすぐ、全部緑に変わってしまうのだろう。



そして……もう。

「もう、あんなに綺麗な桃色は……二度と見られなくなるのかな」


思わず、口に出していた。


いつもは、変わりゆく桜の『絵』を見ても何も感じなかった。


しかし今日は夢を見たからなのかいつもより感慨深くなってしまう。
少女は、自分の変化に驚き、またもふもふを撫でた。




そんな時。





――ガチャリ。



不意に、ドアが開いた。






「……小春」




振り向くとそこには―――












――ひらり、はらりと。



また一枚、舞い散り消える。


舞い落ちた花弁はどこに行くのか。






それは誰にもわからない。

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2011.5.6  21:43:13    公開
2011.5.6  22:22:12    修正


■  コメント (5)

※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。

雷さん>
そうなんです!
もふもふだけでなく肉球とかのむにむにもなかなかいいと思うんですよね(`・ω・´)+

さぁ・・・誰でしょう?

開きかけたドアから現れるのは誰なのか。

それは誰にもわかりません(´・ω・`)(←考えてない

中学受験ですか・・・っ
大変だなぁ・・・;;;

柔軟な思考力とか大切ですよ><
受験、お互い頑張りましょうね!

11.5.7  11:20  -  まろ  (marumaro)

銀狐ルナさん>
お久しぶりです☆
うんうん、もふもふいいですよね(´艸`)v
本当にもふもふは正義(`・ω・´)+

手持ちブースターだらけにしたいです(((←


11.5.7  11:16  -  まろ  (marumaro)

もうメロディは男の子(拓斗君ですかね?)の分身でいいと思いまs(((

むにむに!(°∀°)/
なるほど、ぶーすたんの魅力はもふもふだけじゃなかったんですね!やっぱりぶーすたんは最高でs((((黙

最後の人、誰でしょーか。
どうしても想像が嫌な方向に・・・!

あ、なんで小6で受験生の私がコメ書いてるんだろ。

コメ失礼しました!

11.5.7  08:09  -  不明(削除済)  (rai2107)

まろさん!お久しぶりです。銀狐ルナです!
ブースターの鬣もふもふしてていいですよね〜!
もしもこの世にポケモンが現れたのなら、必ずブースターは入れたいですよね!主に癒し担当で。

11.5.7  06:53  -  不明(削除済)  (runa)

更新遅れてごめんなさい><;

前の話にはコメントが沢山来ていて驚きましたw
読んでくれただけで嬉しいのにコメントまでくれるなんて(*´ω`*)w

この場を借りて、お詫びとお礼を申し上げさせていただきます><
本当にありがとうございましたv

11.5.6  21:53  -  まろ  (marumaro)

 

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