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まだ、紡げない。

著編者 : 結月

【NO.2】 SIDE:ミラ

著 : 結月

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「はぁ…」

またため息をついてしまった。
今日で何回目とか、もう数えたくもない。
結果から言うと、今日も何もなかった。まぁ特に期待もしてなかったけどね。

今は授業と授業の間の小休憩。次の大教室へ向かう足取りが重い。
今日最後の授業は学年の合同授業だ。
あぁもう、また一日が終わっちゃう!!
わたしは頭を抱えて、めり込む勢いで机に突っ伏した。

すると

「どうしたの?頭でも痛いの?」

突然、近くから心配そうな声が飛んできた。

「!?」

わたしはガバッと跳ね起き、驚いてそちらに視線を向ける。
教室で声をかけられるなんてことは40日間前、つまり初めの日以来だったから、一瞬幻聴かなと思ったけれど、どうやら違うみたいだ。
わたしの視線は、隣の席の誠実そうな彼の視線とちゃんと交わっていた。
わたしが咄嗟に目を反らすと、今度は彼がおどおどし始める。

「ご、ごめん!驚かしちゃったかな?」

彼のことはもちろん知っている。というかこの学校で、彼のことを知らない人が果たしているだろうか。
名前は「キース」。漆黒の毛並みに隆々とした四肢、立派な白いたてがみと穏やかなサファイアブルーの瞳がとても印象的だ。学業優秀で才色兼備の新入生、おまけに性格もいいということから全生徒の好感度をかっさらっている。
事実、今こうしている間にもなにか人が寄ってきそうな「良い人ですよオーラ」をわたしはビンビンに感じちゃっている。

「え、あぁ、いゃーアハハ!いや事態は最悪かなぁなんて…あぁ体は全然大丈夫なんですけどね」

両手をぶんぶんバカみたいに振り、アハハと乾いた笑い声を出すわたし。
…絶対変に思われた。死にたい。

どんな反応をしているだろうか。
笑顔は貼り付けたまま、目を薄っすらと開け、彼の様子を伺うと、彼は

「そうなの?大丈夫?」

笑顔のまま相変わらずこちらと視線を交えようとしていた。
それに驚き、わたしは視線を机へ流す。正面から目を合わせ続けられることに、相変わらず慣れていない。

…彼はもう40日も経っているのに、わたしの噂を聞いたことがないのだろうか。

「…その瞳」

彼が心なしか、熱のこもった調子でそう言う。
その単語に、わたしはぴくりと反応してしまった。次の言葉は大体予想がついていた。

「話を聞いたんだ。ちょっと興味があるんだけど、こっちを向いてくれないかな?」

ほら、やっぱり。

わたしは気付かれないように小さくため息をついた。
そして、

「あなたも…酔ってみたいわけ?」

今度は彼の視線を正面からしっかり受け止めながら、わたしはそう答えた。


ーーーーー
登場人物

ミラ【嫌われ者のチコリータ】
キース【人気者のシママ】

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2019.7.10  02:20:13    公開
2019.9.25  02:36:30    修正


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