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物語の先〜探し物〜
第十五希望 それは見逃す事無く
著 : 窮爽
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ルイと紅兎がフキヨセシティに着く前日の事だった―
〜縟派編〜
「!」
…まただ。
刑務所の牢屋の中。僕はまた未来の事であろう夢を見て起き上った。
大雨の中、紅兎と彪が向き合っていて、彪が『スリープ!』と呼ぶ所でいつも終わってしまう。
…僕には…
「……僕には関係ない」
そう呟いてベットにバタッと寝転ぶ。実に殺風景な風景だ。本当に何もない。
「いつ見ても暇そうよね〜」
「……貴方もですよね?」
向かいの牢屋から聞こえてくる気楽な声。その声は『そうそう♪』と答える。
「………藾さんは明日釈放ですよね」
「そうそう♪」
その声…藾さんは笑顔で嬉しそうに同じように答えた。
この間、藾さんから声を掛けてきて親しくなったのだ。
…彪に似てるけど。
「ホント…御盆までに間に合ってよかったと思う♪」
「……御盆?……お墓参りですか?」
僕が尋ねると藾さんはまた『そうそう♪』と答えた。
…笑顔だった。気楽な笑顔…だけど、どこか寂しげだった。
「家族のね!御盆、実は行くの初めてなのよね〜♪というか、お墓参り自体♪だから、行ってない分、きちんとしないとね☆」
「………そうなんですか」
ウィンクして言う藾さんに僕は呟いた。
「…貴方、迷ってるでしょ?」
「……え?」
突如藾さんに指摘され、僕は首をかしげた。…迷っている?
「友達、助けに行くか行かないか♪そうでしょ?」
「……友達なんていませんよ」
僕は眼を逸らせていた。…あいつは友達じゃない。
…むしろ、元々僕には友達なんてものは居ない。…こんな化け物の僕に…
「それさぁ、貴方が遠ざけてるだけじゃなーい?」
「……は?」
「だって、自分の事下げてばっかじゃない。挙句の果てには『僕に友達なんて居る訳ない』なーんて決めつけて、自分の世界に閉じこもってさ?」
「なっ…」
自分の考えていた事をそのまま藾さんは口に出したので『何で?』って聞こうとしたが、驚きで声が出なかった。
「あ、ちなみに私は心読めるからね?ご了承願う!」
藾さんはハニカミ笑顔で言った。…心を読める?
「貴方の考えだとさ、私まで化け物って事になるわよ?私だけじゃなくて、世界中の不思議な力を持った人たちも。…そうじゃなくて、同じ命って思えば良いじゃない♪」
「……同じ…命?」
藾さんは「うんうん♪」と頷いた。
「だって、生きてる事に変わりはないもの☆自分の世界に閉じこもってないで、外に出てみれば?きっと、同じ仲間が出迎えてくれるって!私、そういう人たちこの目で見て来たもの?その時は邪魔されてウザったいって思ってたけどね☆」
藾さんは笑いながら言った。…仲間?
「現に居たじゃない♪貴方が思い浮かべた人!」
「………」
…多分…だけど…
…お調子者で五月蝿くて…でも元気で…人付き合いがうまくて…よく笑って…仲間思いで…
……こんな僕に手を…差し伸べてくれた……奴。
「迷ってる暇があるならレッツラゴー!私だって自分にお墓参り行く資格なんてあるのか!って思って迷ったけど、迷ってる暇があるなら行かなくちゃ!って思ったんだから!」
「………で、でも…」
「大ジョーブ!ジュンサーさんは話をすれば分かってくれる人だから☆」
藾さんはピースサインを僕に向けてしながら言った。
「さ!私からも言ってあげるから!…明日になるかもだけど」
「……いえ。それだけでも助かります」
僕はフッと微笑み、呟くように言った。
「…私が言っても良いの変わらないけど…大切なモノって本……っ当に!気づかないから!後々になって気づいてからじゃ遅いから!」
「………はい」
藾さんの必死な講義に僕は頷いた。
…翌日―
「………分かったわ。…だけど、念の為に1人警官を連れて行ってもらうから!その警察と一緒に君は帰って来る事!」
「分かった分かった♪」
何とか粘り強く説得し、ジュンサーさんはOKしてくれた。
警察と僕が一緒に帰って来ることを条件に。
そして、僕と変わらない年ぐらいの白銀のキュウコンを連れた警察がやってきた。
「おひさ♪」
「お前の何処を見ても反省してる要素が見られないんだけどなぁ…」
「冷たいわね?夏厭だっけ?」
藾さんと夏厭と呼ばれた警察は以前会った事のあるかのように話していた。
「さて!場所は?」
「………雨がよく降っていたので……フキヨセシティらへんかと…」
藾さんに尋ねられ、僕は曖昧に答えた。…フキヨセ付近は雨がよく降っているし…
「Ok!ネイティオ、フキヨセシティにテレポート♪」
「分かった」
藾はネイティオを出しながら指示した。
ネイティオは頷くと、意識を集中させ、テレポートを繰り出した。
あたりは一変する。
見ると空から大雨が降っていた―
2011.7.19 15:10:07 公開
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