我楽多たちの物語
眠れる森の美女的な何か
著 : 森羅
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*注意事項*
・森羅の長編「生あるものの生きる世界」のキャラたちが出てきます。
・ぶっちゃけ、いわゆる「台本小説」と言われる類のもので、そのうえパロディものです。
・これぞまさに「我楽多」。自分さえ楽しければそれでいいと言う思考の下書かれております。
・何かよくわからないノリと勢いと黒歴史で書かれたものです。
・これらの注意事項を踏まえたうえでそれでもお許しくださる心優しい方はどうぞ。
*
昔々……という程昔でもなく数年前。それはそれはきれいなお姫様がいらっしゃったのですが、そのお姫様、不幸なことに悪い魔女に捕えられて、城の中で深い眠りに落ちてしまったのでございます。
何人もの勇敢な騎士たちがお姫様奪還を試みましたが、城下町には人気がなく、肝心の城は深い荊で覆われて誰も城の中に入ることすら叶わなかったと言うことです。
で。
ここにいるのはまたも姫奪還を誓った王子様。ぴかぴかの剣と勇気と履き違えた無謀をその手に眠れる姫君の元へと急ぎます。ただ噂には尾ひれ背びれがつくと言いますが、荊の城の眠り姫の話を聞いた、この王子様の単純なことと言ったらねーわ。
王子(アヤ)「荊の城はまだなのか!お姫様はあたしが救って見せる!」
お付きその1(スピカ)「はいはい、頑張ってね。……ドン・キホーテにならなきゃいいけど(ぼそっ)」
「なんか言った!?」
「いいえ、何にも(にっこり)」
お付きの者の笑顔に腑に落ちない様子の王子様。お付きその2(シリウス)、お付きその3(レグルス)を従えて、のどかな田園地帯を真っ直ぐには歩いていきます。ちなみにお付きその4(アルフェッカ)はモンスターボールなるものの中ですのでお気になさらず。
さて、そこですれ違ったのは赤とも黒とも形容しがたい髪色をした農民。さらにその農民、ものすごく影が薄いです。まぁ、ここまで言えば誰がこの役か、ご存知の方は一目瞭然ですね。そしてあまりの影の薄さに王子様ご一行、みごとに彼を見落としかけました。見落としたらお話にならないので、なんとか見落とさずに済みましたが。ああよかったですねえ。
城への道を聞こうと、農民を引き留める王子様。引き留められた農民はものすごく嫌そうな顔で立ち止まって振り返ります。ちなみに言いますが、『王子様』がいると言うことはもちろんこの寸劇に時代背景と言うものは存在するのでありまして、『農民』が『王子』にこんな態度を取っていいはずがありません。そのぞんざいな態度に当然王子様はお怒りです。
「農民のくせになにその反抗的な態度」
農民(ユウト)「はあ。……あの、オレ、忙しいんで。貴族の娯楽に付き合ってる暇ないんだが」
「その態度が反抗的だと言ってるの!あたしは王子よ?喜んで従いなさい!」
「……」
盛大なため息など気も付かず、言ってやったといわんばかりに胸を張る王子様。そしてそれを見下ろす農民。まぁ、農民の方が王子様より背が高いから当然です。10センチほど農民の方が高いので、かなり見下ろされた感があるでしょうね、この王子様。それもこれも配役のせいですが、身長以外は何もミスった感じがありません。違和感が仕事サボってますね。
「なによ、文句あるの?」
「……別に、ございませんよ」
農民のセリフは明らかに棒読み。その上くるりと踵を返して王子に背を向けます。ちょっとぉお!?と慌てて引き留める王子。まだ何か、と実に面倒くさそうな農民。
「荊の城を探してるの。お姫様が眠ってるっていう」
そうです、王子様はそれが聞きたかったのですよ。別に農民と口論したかったわけじゃありません。海よりも心の広いこの王子は、農民の愚行を許してやることにしました。しばし考え、農民は口を開きます。
「……あぁ、あの姫様ね」
「知ってるの!?知ってるならば案内しなさい!」
「それが人にものを頼む態度かよ」
どーん、と立ちふさがる農民。ですから、この寸劇には時代背景があって本当は農民は逆らっちゃいけないはずなんですが、まぁ、この命知らずな農民は特殊なパターンと言うことで。
「だから、あんたみたいな農民g」
「反対方向。……随分、方向音痴の様ですね、王子様(にっこり)」
あぁ今、珍しいシーンが見れましたよ。農民、もといユウトの敬語にっこりなんて、きっともう二度とお目に掛かれないのではないでしょうか!そして反対にぐっ、と言葉に詰まるのは王子様。お付きその1もけたけたと笑っています。フォローしてやれよ、と思いますが真逆の方向に歩いていた王子様に非がないと言い切れません。お付きその2、その3もこれはさすがにフォローしきれないらしく苦笑い。真っ赤に顔を染めていく王子様。ぷっくりとふくれっ面をして、頬を膨らませて、可愛らしいですが……餓鬼ですねー。
「よければお連れいたしましょうか、王子様?」
「……」
「あぁ、余計なことはするなとおっしゃっているわけですね。それは申し訳ございません。ではこれで」
「ちょっ、あ……ぅ」
「まだ何か?」
「……つ、連れて行って下さい……」
「人にものを頼むときは、いつもそういう態度でいろってんだ。農民舐めんな」
あらあら、さっきまでの立場が逆転してしまいましたね。おかしなことです。配役的にはこれ以上なくぴったりだったはずなんですがねえ……。さてはて、王子様、農民を仲間にしてあっという間に眠り姫の眠る城へと到着しました。と言っても城下町ですが。
「まるでゴーストタウンじゃない!」
「荊で覆われた城、呪われた姫、城下がにぎわっている方がおかしいだろう。それくらいは考えてくれ」
そう言いながら、慣れた様子でまっすぐに道を進んでいく、農民。もうすでに敬語なんて吹き飛んでいますね。綺麗に石畳は舗装され、しかしその手入れを怠った年月分、風化し、脆くなっていっておりました。人気のない城下町はすたれきっており、城の門の前では太い荊が蔓延っています。王子様はそれを見て、顔をしかめました。案内の終わった農民は欠伸をかみしめています。
「……確かに、これはみんなここで引き返すわね……。とりあえずこの荊をどうにかしないと」
すらりと王子様が腰から抜いたのは銀色に光る剣。ていやあ!と勢いよく突き立て見る王子様ですが、まるで鋼のように固くて、使い物になりません。何度か試しては見たのですが、どうにも歯が立ちません。農民はまたふわあと、気の抜けた欠伸。わしわしと頭を掻いて、涙目で王子様に話しかけます。お前らは馬鹿じゃないか、と。
「……シリウスが空飛べるだろ、飛び越えればいいんじゃないのか?意固地に正面突破する必要がどこにあるんだ?」
「……」
まぁまぁ、王子様のお顔がまるで茹で蛸ですね。それを見て楽しそうに笑うお付きその1(スピカ)。お付きその2(シリウス)は申し訳なさそうな顔をした後、ギロリンと農民を睨み付けます。その視線をものの見事にスルーして、農民もモンスターボールを一つ取り出しました。
「まぁ、そりゃどうしても正面突破したいなら」
ボールから出てくるのは朱色のわんこ。いえ、わんこと言うには少し大きすぎるかもしれません。そしてそのわんこはにっこり笑った後、
「燃やすのが正しいだろ」
紅蓮の炎で荊を燃やしてしまいました。まぁ素敵。道は開けました。良かったですね、王子様。
ですが、どうにもこの王子様納得がいかないようで、農民に詰め寄ります。
「ちょっと、なんか間違ってない?どうして農民がウインディ使うのよ。伝説ポケモン使うのよ、てかこれ、絶対何かおかしいでしょ!?」
「それはオレに言われてもぐえええ」
農民の服を掴んで説明しなさいと言わんばかりにぐるんぐるんと振り回す王子様。脳みそ揺れて苦しい農民。これが格差社会と言うものですね……え?違う?まぁまぁ不憫はいつでも不憫なのです。
やっと解放してもらった農民はけほけほとせき込みながら、さっさと行けよと言わんばかりの目で王子様を睨み付けます。残念ながら王子様は気が付いておりませんが。
さあここからが本番です。姫を眠らせたと言う悪い魔女もこの城には潜んでいるはずなのですから。王子様はお付き4匹、農民1人をお供にいざ城の中に踏み込んでいきます。……なんだか桃太郎のお話になってきたような気がするのはきっと気のせいでしょう。
「で、なんであんたが先行するわけ?」
「いや、だって道知ってるし」
ここでも先を行くのは農民です。複雑な城の中、全くためらうことなく歩いていく農民。通常の感覚と勘の持ち主でしたら、この異常さは気がついても良いのでしょうが、残念ながらこの王子様、通常以上の感覚と勘を持っている代わりに、どうも理論的に物事を考えることがとてもとても苦手でした。
「で、到着」
「早くない?」
いやだって、あなたたち二人が歩いているシーン続けても楽しくもなんともないでしょう。これは一応お姫様と王子様のお話なんですよ?もうすでに3000文字行ってますけど。
というわけで、姫の眠っているはずの部屋の前に到着です。ごくりと生唾を呑み込んで、王子様は扉を引きました。
姫(ケイヤ)「遅―い!遅すぎるよ!!ぼくの登場も、王子様の到着も遅すぎると思わない!?」
あらら、お姫様、自力で起きてましたね。むぅ、と可愛くむくれるお姫様(髪の長さは補正済み)は扉を開けたまま茫然とする王子様とその後ろで心底どうでもいいと言いたげな顔をしている農民を見ながら腰に手を当ててそう言いました。傍には9本の尾を持った狐が控えておりました。
「いや、あの、……ごめんなさい、姫」
しどろもどろ謝る王子。すたすたとその横をすり抜けていく農民。それに向かって笑う姫君。
「ゆーと、今日、遅い」
「悪かった、方向音痴に捕まってたもんで」
当たり前のように、当たり前ではない組み合わせで。お姫様は農民を見上げます。シュールな光景ですね、まったく。はい、ここでたぶん多くの人が理解してくださるでしょうが、この農民、頻繁に出入りしてたんです。主に、姫様の胃袋的意味で。だから道にも詳しかったですし、迷わず来れたってわけです。荊の話は問題ないでしょう。だって、トロピウスこと緑羽がいますものね。
さてはて、納得がいかないのは王子様。
「ちょ、ちょっと待って!?なんか納得いかない!!あからさまに可笑しいでしょこの結末は!!てか、魔女は!?」
「いるじゃん」
「いるじゃないか」
「まさかあんた(農民)ってオチ!?」
ねーよ、と一言切り捨てる農民。姫は笑って、王子に魔女を紹介します。
「魔女はね、この子」
魔女(燐)「はじめまして、わたしが魔女だそうです」
「…………もう、なんか、突っ込みどころが……」
めまいを催した王子様に、状況にため息を吐く農民、姫はにこにこ笑っています。
つまりつまり、解釈すると、こうなるわけです。お姫様は魔女に捕まりましたが、眠ってなどおらずむしろ魔女と仲良くきゃふきゃふ暮らしていた。でもまあそれでも、起きている限りお腹は空くものです。仕方がないので、自分の友人の農民にご飯をせびっていたわけですね。姫のうわさを聞いた騎士たちは、みんなこの王子様と同じように馬鹿正直……いえ愛すべき正直者だったのでしょう。皆さん荊の前で悔し涙を飲んでおりました。ひねくれ農民とはわけが違う純粋さについ頭を撫でたくなります。そして、そのひねくれ農民はその横をするりと通り抜けて、せっせと可愛い友人のためにご飯を運んでいたというわけです、まぁなんて良いお話なのでしょう(棒読み)。
「で、じゃあなんで、てかどこに、あたしがでてくる要素があったのよ……」
「いや、ほら今からでも遅くないから、国に連れて帰ってくれていいよ?」
がっくりと項垂れる王子様にお姫様は優しくその肩に手を置きます。農民は場違いに欠伸をかみしめ、魔女は姫と離れるのが嫌なのでべったりと姫にしがみ付いておりました。ちなみに、要はこの魔女さん、姫に惚れてます。とてもとてもわかりやすいですが。まぁ、性別的な意味合いは放っておきましょう。問題ないことはご存知の方はお分かりのはずです。
「姫……」
うるる、と姫の優しさに涙をこらえる王子様。そんな王子様に姫は優しく笑います。
「大丈夫、みんなで暮らせばいいと思うんだ」
「「「え゛」」」
姫の提案に三者三様の声が上がります。農民は厄介事からやっと引き離されると思ったのに、と悔しそうに。魔女はいやいやそれならこのまま二人でいましょう、と言わんばかりに。そして王子様は、
「どーしてそうなるのおぉ!!」
今までの苦労が水の泡となり、姫にはなんだか見当はずれのでも微妙に当たっているような気もしなくもない提案をされ、頭を抱えてしまいましたとさ。まぁ、結局皆さんこのお姫様の言いなりなんですが。つまり、このお話は決して王子様がお姫様を救うなんてお話ではなく、お姫様最強ですねってお話なわけです。こうして皆さん幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。
…………。
「……って全然めでたしめでたしじゃない中途半端に終わる夢見たんだけど」
「オレの知ったことか」
「ぼく、王子様の方がよかったなあ……」
***
はい、申し訳ございませんでした(スライディング土下座
ここまで読んでくださった方は勇者です。英雄です。いや本当に。
本当に本当にすみません。これ、ちょっと生ある(長編)にね、載せる予定がなかったわけではないのですがさすがにこれは載せられねえと自制心が仕事しまして。「我楽多」の方で自己満足で載せせて頂きました……(小さくなる声
本当に本当にお目汚し失礼いたしましたっ!(生ある自体はギャグ小説じゃないんですよ……一応……。
2012.11.30 04:04:00 公開
■ コメント (2)
※ 色の付いたコメントは、作者自身によるものです。
12.11.30 21:59 - 森羅 (tokeisou) |
ちゃッス!千助ッス!! 電車で読んでたのが間違いだったんですかね。笑いが止まりません。必死に抑えてはいますけどもw 生あるのキャラが出てきた時のこのテンションの上がり方w ユウトはどこまでもユウトですね!! 長々と失礼しました 12.11.30 08:30 - 不明(削除済) (1031fish) |
わざわざ電車の中で読んでくださったのですか……(羞恥心的意味合いで死亡)笑ってくださったなら何よりですが……(魂の抜けた目
生あるが完結する前に書いていたものなのですがテンション上がってくださったなら良かったです♪(何やってるんだ
ユウトはユウトですからね!(ドヤッ
それではコメント有難うございましたm(__)m