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【お題：ドンファン】


　オレはドンファン、女たらしさ。
　腰の曲がったババアからやっと首の据わったガキんちょまでオレに夢中、当然だ。
　毎日会いたいと泣きすがるやつもいりゃあ、ふらりと訪ねてふらりと去っていくやつもいる。どっちもかわいいもんさ。

　見ろよ、この、強く雄々しく美しいキバを。
　色味、長さ、曲がり具合、どれをとっても一級品。キズも曇りもねぇ、最高だ。
　そういえばこのキバを持って帰って飾りてぇなんて物騒なこと言った女もいたっけか。まぁ、オレの死んだ暁にはそれも悪くないかもな。きっと末代まで語られる伝説になるぜ。
　しかし残念なのは、この立派なキバも、まるで使いどころがないってことさ。
　なにぶん、戦いを挑んでくるやつもいねぇし、飯は探さなくても女どもがこぞって持ってくるんだ。
　おおっと、つまり、キバが暇を持て余してるのもキバが立派なせいってことだな、こりゃ傑作だ。

　オレをたくましさ一辺倒の男だとみくびってもらっちゃ困るぜ。いつの世も女は、強い男の弱い姿に惚れるのさ。
　どうよ、ゴマゾウ時代に身に付けた「あまえる」「じゃれつく」「とびはねる」！　「メロメロ」なんか必要ないぜ。

　どーれ、今日も今日とてオレを求める女どもの声に、応えてやりますか……

　＊＊＊

「さぁて、本日は話題の雑貨屋さんに来ております。……そしてこちらが、女性に人気のマスコット、ドンファンくんですね〜。……ええっ、ご飯をあげることもできるんですか？　ではちょっと失礼して……わぁ、とてもいい食べっぷりですね。……」


（了）