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「昨日は凄い雨だったわね。」
「そうだね。」
「…というか、気にしてなかったでしょ。夜侍雫（ヤジダ）。」
「別にいいと思うよ？暗雌（アンメ）。」

僕とブラッキーの暗雌はそう会話しながら雨上がりのリョウセンタウンを歩く。
此処はトキア地方。
…イッシュから遠く離れた地方。
僕と暗雌はただ静かに歩く。

「ねぇ…受け付け店って知ってる？」
「え？何それ？」
「えー！知らないの！？」
「知らないし。」

そんな小さな会話が僕の耳に入ってきた。
僕は気にせず歩く。
…だが、そういう話というものは思わず耳に入ってしまうものだ。

「そのお店、神出鬼没で…どんな相談にも乗ってくれるんだって。」
「神出鬼没？それって運がよくないと駄目じゃん。」
「そのお店…悩み事がある人の近くに現れるんだって。その時、絶対霧が現れるんだって。」
「へぇ〜。」
「で…その悩み事を解決するために色々としてるんだって。」

受け付け店ねぇ…
俺は耳に入る噂を軽く見た。

「奇妙な噂ね。」
「あぁ。僕も同感。というか、興味なし。」

暗雌の言葉に僕は付け加えた。
暗雌はフッと笑う。
…そんな店…有ったら世の中都合が良過ぎる…
僕は馬鹿馬鹿しく思った。
僕と暗雌はそのまま次の街への森へと入って言った。
…やはり、森は落ち着く。

「…？あら…」
「ん？暗雌、どうした？」

暗雌の声に僕はふと気付く。
暗雌の目線の先にはネイティオ。
…ネイティオ？森に居ないはずだが…
そう思っているとネイティオは何処かへと飛び去ってしまった。

「…まぁ…良いか。行こう。」

僕がそういうと暗雌は頷いた。
僕と暗雌は森の中を歩く。
ふとある事に気付いた。

「…霧か…？」

気づくと霧が覆っていた。
僕と暗雌はとにかく進んでみる。
すると―

「…？あれは…？」

僕と暗雌の視界に入ったのは古びた屋敷。
古びているが、丈夫そうだ。そんなに汚くない。むしろ整えられている。

「…変な所に来たね…」
「そうね…」

僕が言うと暗雌も同じようだ。
…戻るか…
僕と暗雌はそう思い、戻ろうとしたその時だった。

「ヤミィー！」
「！？」

ヤミカラスが突然飛んできた。
ヤバい！？
と思ったその時。ヤミカラスは僕の掛けていた眼鏡を取って行った。
眼鏡を取れるってある意味すごい！？…って。

「そんなこと思ってる場合じゃない。眼鏡取り返さないと…」
「…中に入って行ったわね。」

僕がそういうと暗雌は少し前に出て言った。
僕は屋敷に目をやる。
ヤミカラスは扉の隙間から入って行った。
…行くか…
僕等は１つため息をつき、中へと入って行った。
…中は意外と綺麗で、電気もついてある。
暗雌は何となくヤミカラスの向かった方向が分かるようだった。
僕は暗雌の後をついて行く。
たどり着いたのはある１つの部屋。
他の扉とは違って紫色をしている。それを彩る様に金色の模様が描かれている。

「お客さんかい？入っても構わないよぉ？」

扉の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
大雨の中で聞こえた声か…
僕と暗雌は顔を見合わせた。
…眼鏡返してもらわないとな…
僕は扉を開けた。

「いらっしゃい。受け付け店へ…」

そこには紫色のローブを着た占い師のような男が居た。
その隣には俺の眼鏡を持ったヤミカラスが飛んでいた―