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ポケモン不思議のダンジョン 革命隊

第16話 新制度構築を目指して…… 後半

著 : ハルナツ・シュートウ

イラスト : ハルナツ・シュートウ

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「……それにしても、奴から凄い覇気を感じるぜ。ハァ……向かい合っているだけで圧倒されちまいそうな覇気を……」

 連続で食らったシャドーボールの傷が響いているのか、ガブリアスは息を荒くしてそう言った。

「でもデオキシスはさっきの私達の集中攻撃を受けている。ダメージはまったく無いじゃない」

 マリルリはそう口にすると、デオキシスのすぐ目の前まで走る。しかし、マリルリが接近しているというのにデオキシスはまったく動く様子を見せない。

「ハハッ怖気ついちゃったってわけ? じゃあさっさと決着つけさせてもらうからねぇ」

 まったく動きを見せないデオキシスを嘲笑したマリルリは体をバネにして宙に飛んだ。そしてその勢いでマリルリは、デオキシスの体に渾身のアクアテールを打ち込む。

「何がフォルムの融合よ。大したこと無い――」

 攻撃を諸に食らわせたマリルリはニヤニヤと笑みを浮かべながら喋っていると、突然デオキシスの腕の鞭がマリルリを襲った。突然のことでマリルリはガードを怠り、デオキシスの攻撃を許してしまう。鞭で地面に叩きつけられたマリルリは反動でデオキシスから数メートルの所まで弾き飛ばされる。これで攻撃が終わったと思った次の瞬間、デオキシスは一瞬にしてその場から姿を消した。すると部屋の中には空気を切り裂くような音が響き渡る。

「……ッ!! まずい、誰かマリルリを助けてやれッ」

 危険を察したデオキシスはブラン達に焦りの篭もった声で叫んだ。しかし既に遅し……。空気を切り裂く程の速度で移動しているデオキシスは、腕の鞭を荒く振り回しマリルリを叩き付ける。攻撃が止むとデオキシスは片腕を鞭状から元に戻し、マリルリの頬を殴り止めを刺した。勢いで部屋の壁に叩きつけられたマリルリは、壁にめり込む。そして意識を失い、そのまま地面へと落ちていった。

「そ、そんな……くっそぉーデオキシスゥーッ!!」

 デオキシスの圧倒的な力を見せ付けられ焦ったのか、サブレは怒りに身を任せデオキシスに特攻を試みた。

「待てお前、そんなんじゃ――」
「くっそぉー、許さないぞォーッ!!」

 サブレを静止させようと叫ぶガブリアスだが、その言葉はサブレの声によって遮られてしまった。デオキシスに接近したサブレはくちばしに力を込め、ドリルくちばしを繰り出した。

「どうだデオキ……ッ!!」

 攻撃を終え体勢を立て直したサブレは自身有り気に喋りだすが、微動だにしないデオキシスを見てサブレの口はすぐに閉ざされた。それもそのハズだ。三つのフォルムを取り込んだデオキシスの前ではサブレの攻撃など掠り傷をつけるに等しかったのだから。

「グァデ、グァリュガ(さて、やるか)」

 デオキシスはもう片腕も鞭状から元に戻すと、両腕でサブレに殴りかかった。サブレとデオキシスの距離は近くとても逃げられる状態ではなかった。どうしようもなくサブレは思わずその場に蹲る。

 しかしその土壇場でユクシーがサブレの下へと駆けつけ、すかさずリフレクターを展開した。その結果、デオキシスの攻撃はリフレクターによって遮られた。

「助かったよ、ユクシー伯爵。ありがと――」

 サブレがお礼を言おうとしたその時、リフレクターの表面に亀裂が走った。

「しまった、誤算です。サブレさん、逃げてください」

 ユクシーは慌ててサブレに非難するよう呼びかけた。しかし、その時には既にデオキシスの拳がリフレクターを突き破っていたのだ。そしてそのままリフレクターは破壊され、その時に生じた爆風で二匹はブラン達のいる所まで吹き飛ばされた。

「ユクシー、お前焦っていただろう? リフレクターは対象者が二対以上いると効果が薄れるというのに」
「……そうでした。すいませんサブレさん。私が誤算をしたばっかりに……」

 起き上がったユクシーは、申し訳なさそうな表情で深く頭を下げる。

「いいよ、結果的に直撃は免れたんだから」

 ユクシーの返事を聞き、サブレは満足そうに頷く。

「……取り込み中で悪いが、一つ提案がある。聞いてくれないか」

 そんな時、ブランが一つの案があるとサブレ達に話しかけた。

「提案? 何だ、言ってみろ」
「奴を倒すにはやはり皆で連携攻撃をするしかないと思うんだ。だから作戦を立てるためにみんなの持ち技を教えて欲しい」

 ブランはそう言うとみんなの技を聞いて回った。

「……私も、手を貸そうか?」

 その時突然背後から声が……。一同が振り返るとそこには満身創痍のマリルリが立っていた。

「マリルリさん、意識が戻りましたか。体のほうは大丈夫なんですか?」

 そういってユクシーは心配そうにマリルリに駆け寄った。

「何を言っているの。私もレジスタンスだよ……。最後まで戦わせてもらうからね」
「……わかった。それじゃあマリルリの持ち技を教えてくれ。すぐに連携攻撃の作戦を立てたい」

 マリルリの強い意思に心を打たれたブランは、マリルリも作戦に含める。そして皆から教えてもらった持ち技を使って連携攻撃を練り始めた。するとデオキシスは、黙っているブラン達を見て攻撃を仕掛けようと動きを見せ始めた。

「しょうがねェ、ここは俺が食い止める。さっさといい案を考えろよ」
「すまないな、ガブリアス」

 ガブリアスはそう言うと、無防備なブラン達を守るために一匹デオキシスに向かっていく。ガブリアスとデオキシスの攻防戦の中、連携攻撃の案は意外にも早く考案された。

「ガブリアス、作戦を実行する。戻ってきてくれ」

 ガブリアスはブランの声を聞き、デオキシスとの戦闘を中断してブランの元へと駆けつけた。

「ガブリアス、お前はこの作戦で重要なポジションだ。頑張ってくれ」
「重要な……? 俺は奴との戦闘でかなり体力を消耗しちまった。ハァ……もう殆ど戦える力はないぞ……」

 ガブリアスには余程大きなダメージが蓄積されているのか、息を荒くしてその場に膝をついた。

「それなら大丈夫。お前は大きい一撃をデオキシスに放ってくれればいい。もしもの為にガードも備えてあるから安心してほしい」

 ブランの言葉を聞き、ガブリアスは安心げに頷く。そしてブランの口から作戦内容が語られ始めた…… 一方デオキシスは全く戦おうとしないブラン達に苛立ちを感じていた。

「ギザマリャ!! ララガリュギガリャイナラ、ワダシガシャッサトゴロジデヤル(貴様ら!! 戦う気がないなら、私がさっさと殺してやる)」

 デオキシスは両腕を数本の鞭状に変化させると、ブンブンと振り回し辺りに散乱しているシリンダーを破壊してブラン達を威嚇する。そしてその腕の鞭を振り回したままブラン達へと襲い掛かった。

「今だマリルリ!!」
「了解っ! 冷凍ビーム!!」

 ブランの合図を聞きマリルリは、襲い来るデオキシスの顔面に冷凍ビームを発射。デオキシスの顔の表面は冷凍ビームによって凍結された。デオキシスは思わず足を止め、顔の表面の氷を割り始めた。

「次は私ですね。念力っ」

 顔の氷を割ろうと悪戦苦闘しているデオキシスに対し動き出したのはユクシー。念力でデオキシスの足を狙いバランスを崩させる事に成功。デオキシスは今にも転倒しそうな状況だ。

「俺の最後の一撃、ギガインパクトを喰らわせてやるぜェ」

 そしてその転倒寸前のデオキシスにはガブリアスがギガインパクトを。体の痛みをこらえながら全身をバネにしてデオキシスへと飛んでいく。しかしデオキシスは、バランスを崩しながらも攻撃をされじとシャドーボールを放つ。今のガブリアスはギガインパクトの発動中で回避はできない。ここまでか……

「ハーイ、ここでアタシが登場ってわけね。守るっ」

 だが後方で控えていたエムリットがシャドーボールがガブリアスに当たる瞬間『守る』を発動。ガブリアスへのシャドーボールは『守る』によって無事防ぐことに成功した。

「うわーおう、これがエムリットたんの守るか。なんだか治癒効果もありそ――」
「なんでもいいから早くしなさいよっ!!」

 攻撃最中だというのに油断を見せるガブリアスにエムリットは一喝! ガブリアスは言われるままに攻撃に集中し、デオキシスの懐に飛び込んだ。

「くたばれェェい!!」

 ガブリアスの腕はデオキシスの顔面にめり込み、そのまま押し倒した。バランスを完全に崩し遂に転倒してしまったデオキシス。

「……よし! あとは頼んだお前達!!」

 攻撃を終えたガブリアスは後方で控えているブランとサブレに合図をするかのように叫んだ。

「了解。いこうブラン」
「おう、サブレ!」

 二匹は互いに名前を呼び合うと、助走をつけデオキシスの真上へと飛んだ。デオキシスは転倒した直後で完全な無防備状態だ。

「……今なら最高の技が出せる。エナジー……」
「いくよっ! ハイドロ……」

 二匹はそう言うと、二方向から『エナジーボール』、『ハイドロポンプ』を繰り出す。そしてその繰り出された二つの攻撃はデオキシスの丁度真上で衝突した。

「……キャノン!!」

 二匹がそう叫んだ次の瞬間、衝突した二つの技は共鳴するかのように混ざり合い巨大なエネルギーの塊となった。光り輝くその巨大なエネルギーは速度をつけデオキシスへと降り注いでいった。

「ゾンナ、ソヌナバガナッ!(そんな、そんなバカなッ!)」

 デオキシスは攻撃を喰らう瞬間、悔しそうにそう発した。そして巨大なエネルギーがデオキシスに直撃した時、部屋中を揺るがす振動とデオキシスの断末魔のような叫び声が痛々しく響き渡った。それと同時にデオキシスの辺りに黒煙が舞い上がっていく。

「……ハァ、ついにやったねブラン」

 地面に着地したブランとサブレは、力が抜けたかのようにその場に倒れこんだ。ユクシー達はそれを見て心配し駆け寄ってくる。

「ブランさん。サブレさん。だいじょ――」

 駆け寄ってきたユクシーが優しく二匹に声をかけようとした瞬間、デオキシスの周辺で上がっていた黒煙が何か巨大な力で振り払われた。

「えっ、まさかデオキシス!?」

 ユクシーが思わず振り向きそう言う。ブラン達もそれを聞きデオキシスの方向を向いた。

「マダ、バダオワガンド……(まだ、まだ終わらんよ)」

 そこに立っていたのは紛れも無くデオキシスであった。

「くぅ、私達は先ほどの連携攻撃で全力を注いでいたというのに。も、もう私達に勝機はありませんよ……」

 立ち上がってきたデオキシスを見てユクシーは、勝ちを諦めたかのように悲しげにそう呟く。残りの五匹もあまりの出来事に動くことが出来なかった。諦めを見せているそんなブラン達にデオキシスは止めを刺そうとゆっくりとブラン達に接近する。

 だがその途中デオキシスの動きが止まった。そして、その途端にデオキシスの体は突然ボロボロに崩れて地面に転がる。まるで風化していくかのように……

「……ッ! ソ、ゾンナ。ゴンナドコロデジヌナンデ……ワッワダシノリソウギョウガァァ!!(そ、そんな。こんなこんな所で死ぬなんて……わっ私の理想郷がァァ)」

 デオキシスは最後にそう言い捨てると、体が跡形も無く粉々に崩れていった。

「や、奴が粉々に……」
「無理もないだろう。あんな無茶な変形をしたんだ。体が持つハズがなかろうよ」

 デオキシスの成れの姿を見て目が点になっているサブレにガブリアスはそう答えた。

「……とりあえずこれで終わったんだ。皆の所に戻ろう」

 崩れ落ちたデオキシスを見て、ブランはもの悲しそうにそう呟く。

「そうね。こんな所に長居は無用だもんね。隊長サン達の様子を見に行きましょ」

 エムリット伯爵はブランの言葉に返事を返すと、うーんと背伸びをする。そして、六匹は早々とこのフロアを後にした。


 数分してブラン達はあのフロアに戻ってきた。隊長達も決着をつけた様だ。ブラン達は隊長にデオキシスを倒したこと。そして跡形も無く崩れ去ったことを報告した。それはを聞いた隊長は何も言わずフロアにいる皆に帰還命令を出した。そのときの隊長の顔は何故か物悲しそうな表情だった――

*

 無事帰還してきたレジスタンス達は、早速大陸中のポケモンにデオキシスの討伐の件を報告しにまわった。それを聞いたポケモン達は声を上げながら歓喜した。そして、デオキシスの討伐を祝して早速ミルヒライ城を利用して祝杯パーティを開いた。パーティ会場はポケモン達の歓喜の声で賑わっている。

「ハッハハハ! さァさァ好きなだけ食えィ! そらあッ」

 デオキシスの討伐ですっかり上機嫌になった隊長は、ブラン達やマリルリの口に木の実を放り投げる。ブラン達はそれを華麗にキャッチする。

「隊長サン上機嫌ねー。もぐもぐ それはそうと、ああいう優しそうな人がアタシの執事になってほしいなあ もぐもぐ」

 エムリット伯爵は料理を食べながら子供のようにはしゃいでいる隊長を見ながらそう呟いた。すると突然背後から寒気のするような視線を感じた。

「……それはどういう意味でしょうか。エムリット様」

 すると聞きなれた恐ろしい声が……。エムリットは恐る恐る後ろを振り向いた。

「エムリット様。料理はおいしく召し上がっていますか?」

 そこには満面の笑みをしたサーナイトが大量のチーゴの実の入った袋を担ぎながら立っていた。

「サーナイトさん! こっこれは――」
「気にしなくていいんですよ。別に気にしていませんので。それよりエムリット様に木の実を持ってきてまいりましたよ」

 サーナイトはそう言うと担いでいた大量のチーゴの実の入った袋を床に下ろした。

「ちょ、ちょっと! それって苦いチーゴの実じゃないの! そんなの食べないわ――」

 恐怖に満ちた表情のエムリットはそう言おうとしたが、最後まで言うことが出来なかった。

「遠慮なさらずに。私が食べさせてあげますわ」

 エムリットはサーナイトの腕に包まれ身動きが取れなくなってしまった。そしてそのままチーゴの実をエムリットの口の中に入れていく。

「苦い! 苦いってサーナイトさぁん!!」

 余りの苦さにサーナイトの腕の中で暴れるエムリット。そんな光景を楽しそうに眺めるブランとサブレ。

「ハハハ。楽しそうだねぇエムリット伯爵」
「イヤ、どうみても楽しそうじゃないだろ」

 笑いながらそう言うサブレ。それに対しブランは静かに呆れ顔でそう突っ込んだ。そんな話を何回かして数十分程が経ち……

「……すまないサブレ。席を外させてもらうよ」

 ブランはサブレにそう言うとその場から離れた。

「そう。すぐに戻ってきてよ もぐもぐ」

 サブレは料理を食べながら後姿のブランにそう叫ぶ。部屋を出たブランは通路を歩き、何故か政府直下生物研究ラボへと通ずる地下階段の前まで歩いてきた。そしてそのままブランは地下に下がっていく……。
 誰もいなくなったラボ――ブランはそんなラボのとある一室に足を踏み入れた。

「来ましたね。ブランさん」

 するとその部屋にはユクシーとフーディンの姿があった。そしてなにやら怪しい機材が置かれている。

「人間に戻る覚悟は出来たようだな……」

 フーディンは怪しい機材を触りながらブランにそう問いかけた。

第16話 新制度構築を目指して…… 後半

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2008.2.25  21:24:33    公開
2008.3.15  22:29:56    修正


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